第34話 冒険者ギルド
船を下りると潮の香りが鼻孔を
「さぁ、着いたぞ。冒険者の国カルセドニーだ!」
髭面は大きな声で、他の船員たちに指示を出している。
「まずは何処に行こうか…」
「おいおい、冒険者になるんだろが。それならギルドに入らねぇと」
俺の呟きを聞いたのだろう、髭面はため息交じりに声を掛ける。
「ギルド?」
「ギルドに登録してない冒険者は、犯罪者紛いばっかりだぞ!」
「なら、さっさと登録してくるか」
「ああ、それが良いだろう」
じゃあなっと声を残して、船乗りはその場を立ち去った。
港を出てカルセドニーを歩き回る。
冒険者の国というだけあって、多種多様な種族が住んでいる様だ。いったい獣人の種類は、どれだけの数が存在するのだろうか。
「基本は石造り…文明レベルはさほど変化していない様だな」
近くの住民にギルドの場所を聞いて、軽い足取りで向かう。
「ここか?」
周囲には同じ初心者装備を身に着けたプレイヤーが、至る所に見受けられる。時間から考えるに昼食で、いったんログアウトしていたプレイヤーではないかと思う。
建物の看板には、解りやすく冒険者ギルドと書かれている。
「すまない、登録を頼みたい」
中に入り受付の子に話しかける。
「はい。では、この魔道具の上に手を乗せてください」
そう言って差し出された魔道具は、石版にしか見えない。
言われた通り、手を乗せる。
「はい、登録完了しました。説明は必要ですか?」
「ああ、頼むよ。これに書いてある程度しか知らなくてね」
船の中でいつの間にか持っていた本を取り出す。
「まぁ、冒険王の手記ですね。二百年ほど前の本ですのに珍しいですね。これは気合を入れませんと」
いったいβから何年間の時間が経過しているのか教えて欲しい。
「ギルドで受注できるクエストですが、受注制限はありません。クエストランクが幾つであっても、依頼を請け負う事が出来ます」
「冒険者にランク等はない?」
「はい、ございません。どのクエストも自己責任となります。クエストのランクは、あくまでも危険度の目安だと忘れないでくださいね」
まとめると、冒険者にランクは無い。ただしクエストにはランクがあって数字が大きくなるほど危険なクエストとなる様だ。
所々リアルの名残りなのか、ランクが信用できない事態が起きそうである。何しろ目安と言っているくらいだ。
死者が増えそうだと言うと。
「自分の力量すら測れない無能者は、冒険者ギルドには不要ですので」
とのお言葉が返ってきた。
一応聞いてみたが、同時受注は出来ない様だった。
「なお、クエスト失敗は違約金が発生しますのでご注意ください」
「ああ、わかった」
「早速、クエストを受けて行かれますか?」
取りあえず期限のない常設クエストを受ける事にした。
ゴブリンの討伐 ランク1
報酬800コル ゴブリン5匹の討伐。
「さーて、どうするかな」
冒険者ギルドを後にし、夜までの行動を考える。
現実的に考えれば高校生なので、夜間のプレイは厳しい。
明日は休日なので問題はないが、これでは生産しか出来ない。生産は好きだから、それはそれで楽しいのだが。
「昼間の間に戦えるようにしないと」
その為には、種族レベルを上げてクラスチェンジするしかない。その為には戦闘をと堂々巡りである。結局の所、現状で戦えるようにしなくてはいけない。
後を付けている二人には悪いが、軽く外に出て戦闘をしてみよう。
「『ウインドカッター』」
「ギィ!?」
小さな悲鳴と共にゴブリンが倒れる。
「今ので3匹目っと」
俺は現在魔法をメインに戦っている。
妖精に貰った初心者装備の中に杖があったので、装備2に装備してみた。
装備1と2は、それぞれ装備を切り替えて使用できる様だ。剣と盾などは同時に展開可能な様だが。
ステータスは上昇したままなので、装備しないと損だな。
「『サモン』」
MPの消費は、どうやら任意で変更できる様だ。
少なければ威力は低いし、多ければ高い。
召喚系は1度呼び出せば、その間のMP消費はない。
「『ダークピッド』」
ついでに新しい魔法を登録して、MPの回復手段を確立した。
ダークピッドは名前で察せられる通り【闇魔法】だ。効果は真っ黒なスポイト状の物体を作り出し、対象に張り付かせてMPを吸出し
MPを大きく使うと大きなスポイトを作り出せる。
「回復量は…まぁまぁ?」
比較対象が無いので良くわからないが、自分の召喚したモンスターからも吸い出せるので使い勝手が良い。
「『ウインドカッター』」
またゴブリンが倒れる。
「うーん、結構ダメージ受けないな」
弓持ちには注意だが、油断しなければ大丈夫だろう。
「『サモン』」
意識して使ってはいるが、レベルの上昇は緩やかだ。
魔書術も出しっぱなしは基本である。
「『ダークピッド』からの『ウインドカッター』」
討伐目標の五匹目を倒して、ギルドに帰ろう。
「ねぇ、アリサ。やっぱりジンさんってあれだよね?」
「そうでしょうね。てっきりフレンドを断られると思っていたので、二手に分かれましたが二人ともフレンド登録して頂けるとは思っても見ませんでしたわ」
「なんだがボク、罪悪感が凄いよ」
「私もでしてよ。アリマさん」
「「ハァ」」
ジンの知らないところで、罪悪感に苦しむ二人。
「ネット情報なんて当てにならないもんだね…」
「人物像に関しては間違いないですね。テレビもですけど」
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