第31話 グロノス

「では、グリモワールの説明に移ります。あ、既に魔道書ですね」


 グロノスの事だろうな。


「ああ、進化したからな」


「一切の強化なく進化するとは、イレギュラーですが…まぁ、良いです。知っていることもあるかと思いますが一から説明していきます」


「ああ、頼む」


「では、起動してみてください。起動方法は、解りますか?」


「大丈夫だ。…『起動』」


 俺の言葉に応じて、見慣れた本が出現する。


「はい、結構です。このグリモワールはアラインまたはリンクスから身体、脳波といったデータを元に構成されています。両機には健康状態を確認する為の簡易スキャン機能があり、それを使用しています」


 ユーザーのデータを元に、グリモワールの能力等が決定する訳か。


「またゲーム内の種族、ステータスによっても変動します。βテスターの方は、省かれますがグリモワールを再構成することも可能です」


「俺はしない。何の為に大鎌を作ったのか分からないからな」


「分かりました。グリモワールには進化の他に、成長や強化で能力を追加、強化をすることが出来ます」


 グロノスはいつの間に条件を満たしたのか進化したが、他のグリモワールはそれらの積み重ねで進化するらしい。


「グリモワールの成長は階位によって確認できます。数字が少ないほど成長してるという事です」


「俺のグリモワールは成長していたのか?」


「成長にも幾つかパターンが存在しますよね。例えば子供が大きくなるだとか、精神的に成長したですとか。ジン様のグリモワールの場合は、戦闘経験で成長したのでしょう」


 驚異的な成長速度です。と付け加えると強化の説明を始めた。


「これから冒険を続けていく過程で、魔道書のページというアイテムを入手するかと思います。それがグリモワールの強化アイテムとなります」


 魔道書のページか、そう言われると何だか自分の魔道書が薄っぺらく見えるな。


「魔道書のページにも種類がありまして、各属性や技術系の物などスキルの様に幅広く存在します。魔道書のステータスにタイプの項目がありますね?」


「ああ」


「そのタイプが強化に使用できる魔道書のページの種類になります。記載は『魔道書のページ(火魔法)』といった風に表示されるので解りやすいでしょう」


 グロノスのタイプは『万能』。こんな属性や技術は無いだろう。


 気になるので聞いてみる事にしよう。


「万能は?」


「え……万能は全てのタイプを使用できます。万能タイプは、過去確認された中で三種類しか記録されていません。…もしかして?」


「ああ、万能だったな」


 グロノスのタイプを告げると、妖精の顔色が面白いほど変化した。


「えええぇぇぇ!?」


「そんなに驚く事なのか?」


 ゲームだしな。


「あれー、何で平静なのー?」


「どうせ強化限界とかあるんだろ?」


 それなら、どっち付かずになるだけな気がする。


「いいえ、強化の限界はありません。だから皆さんページを探すわけで…」


「それって、ボッチ仕様?」


 プレイヤーは全員グリモワールを所持している。バランス良くパーティを組むと、戦闘スタイルもバラける。普通はそれで、魔道書のページ強化アイテムが出ても被らないから揉めない。だが俺は全部の強化アイテムが使えるから、あるだけ欲しい。俺が遠慮したとしても、誰の強化にも使わない強化アイテムは売りに出され、売れた金はパーティーの収入である。


 つまり俺がパーティーにいると、入手できる金が大きく減る可能性が高い。そんな相手とは、できれば組みたくないものだ。


 完全にボッチ仕様である。


「ははは…元々が夜特化ですから…その、今更かと」


「ム」


 そうなんだが、何だかなぁ。


「えーっと後は…あ、ポイントの獲得方法説明してないや」


「それ、忘れたらダメな奴だろ…」


「種族ポイントは種族、職業レベルがアップした時に獲得できます。会得ポイントは、種族、職業によって変動します」


 そろそろ、チュートリアルの終わりが近いのだろう。


 今のうちに質問を済ませよう。


「他のポイント入手手段は?」


「種族ポイントに関してはありません。種族と職業は同時にレベルアップするので、その職に就く種族としてのポイントという扱いになります」


「ふむ」


「スキルポイントは種族、職業のレベルアップ時に一律2ポイント。そして、所有スキルのレベル10毎に1ポイント追加されます。クエストの報酬にポイントがある場合があります」


 ふっと聞かなければいけない疑問が浮かぶ。


「レベル上限は?」


「最終的な種族、職業に関しては、存在しません。いつでも最強を目指せます。スキルには、それぞれ上限があります」


 レベル上限がないだとは、随分思い切ったシステムだ。普通なら上限設定をして徐々に解放される物だが。しかし、プレイヤーとしては嬉しい限り。


「それではチュートリアルを終了します。チュートリアル達成報酬として、5000コルと初心者防具一式です。あ、チュートリアルで制作したアイテムは、そのままお持ちください」


「わかった」


 受け取った装備を確認する。


初心者の帽子 帽子 ランク1 耐久値1000 品質C

 器用+1


初心者の服 服 ランク1 耐久値1000 品質C

 体力+1 


初心者のズボン ズボン ランク1 耐久値1000 品質C

 体力+1


初心者のポーチ ベルト ランク1 耐久値1000 品質C

 アイテムポーチ+2


初心者の靴 靴 ランク1 耐久値1000 品質C

 体力+1 俊敏+1


「アイテムポーチ?」


「アイテムポーチは戦闘中に使用するアイテムを入れておく物です。+2なので二個まで入れられます」


「なるほど」


 俺はすっかり知り合い気分で別れを告げる。


「それでは、行ってらっしゃいませ」


 やっとスタートだ。


 楽しい冒険になることを祈って置こう。

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