第18話 公式イベント前半戦 午前
「ジン…お待たせ」
「ああ、姉さん」
現在7時50分。イベント開始まで後10分の時刻だ。
「何処からスタートするのかな…イベント」
街中のプレイヤーを警戒し人見知りモードに入る姉を横目にイベントを待つ。
「さぁ、巻き込まれないようにって言ってたから、何処かフィールドだと思うけど…」
「街にいれば…インフォあるよね?」
「たぶん」
イベント終了まで時間無いだろうから、今のうちに要望出しておこう。
「一応…レベルは10になった」
スキルが見にくくなってきたから、改善要望。
「おー、一人で上げたの?」
「ううん…リアルの友達と一緒に」
生産スキルのレシピ改善案を書いてしまおう。
「イベント一緒にやらなくて良かったの?」
「…良い」
戦闘の方は…まぁ、いいか。
「そろそろ時間かな?」
ポーン。昨日と同じ音声が流れる。
≪8時になりましたのでイベントを開始いたします≫
≪イベント『
≪ただ今の時刻を持ちまして、始まりの街にフリーボスが潜入しました≫
≪隠滅のアリアを探し出してください。なお、このイベントに失敗すると始まりの街が消滅します≫
「また、面白い事になったな…」
「ジン、どうする?」
「どうしよっか?」
実際どうしたものかと考える。
俺は気配察知や発見効果のあるスキルは、所有していない。精々【鑑定】だが、意識しなけれ無ければ使えない。
「まぁ、RPGの基本をするしかないだろうさ」
「何?」
「聞き込み」
「え?」
古来よりRPGとは住民との会話が、重要な構成要素の一つである。如何に強い装備を持とうが魔王城の場所が分からなければ意味がない様に、物語の進行を支える仕掛けの一つだ。
「とりえず見知らぬ人を見かけてないか、聞いて回ろうか」
「人なの?」
「分かんないけど潜入らしいし、街に入るんなら目立たない格好してるって思わない?」
「うん」
「積み荷に変身して荷物に紛れてとか水路を差遡ってとかは、ゲーム初めて間もない
ゲーム初日に訪れたスキル屋のドアをくぐり、店の中に入った。
「んん…なんじゃ。今日はやけに騒がしのう?」
この爺さんの怪しさは、他のNPCとは飛びぬけている気がする。
「よ、爺さん」
「何じゃ、宿主の坊主か」
「随分、儲けたらしいな?」
「ははは、お主のおかげじゃて…」
「それで今日は聞きたいことがあって来た訳なんだが」
「んぅ?」
イベントである事を隠し、街の状況を説明をした。
「なんじゃと!?」
「それで今、宿主みんなで探してるんだ」
「なるほどのう…それで聞きたいのは隠れそうな場所か?」
「ああ、それと情報通がいたら紹介してほしい」
新参者の
「うむ、残念ながら店からあまり出んでな。情報が多い場所と言えば、自然と人が集まる宿や酒場じゃろうが…」
「なるほど、行ってみるよ」
「ああ、気をつけての」
その場を離れると早足で、宿屋に向かう。
「おや、今日も泊まりかい?」
昨日宿泊したので、連日と勘違いされても仕方ない。
「いえ、実は…」
スキル屋で話した内容をそのまま伝える。
「そうかい…うちは何も聞いてないねぇ。他の宿屋にはもう聞いたのかい?」
「いいえ、他にも宿屋があったんですね」
「そりゃあ、そうさ。そうだね…あたしの方から何か見てないか聞いておいてあげるよ」
「ありがとうございます」
そろそろ姉さんが辛そうなので、少し休憩を取ることにしよう。
「ジン…酷い」
「ごめんって」
普段の人見知りの後遺症なのか、いじけ始めると長い。
ここで、情報をまとめよう。
スキル屋、宿屋で得られた情報は極僅かだ。
まず、各店のNPCが何も知らなかった事。これは、何処にいるのか知らないだけでなく、起きている事態を認識していないという事。
これは問題だ。
何せフリーボスが侵入しているのにNPCが気付かないのだ。
イベントでも無ければどう対処したものか。
二つ目は、スキル屋を狙っていない事だ。
街を消滅させるには、抵抗は少ない方が良い。それならば戦力の根幹を担うスキルの入手先であるスキル屋が邪魔になるはずだ。
だが、実際にはスキル屋は破壊されていない。
三つ目は、宿屋からの情報だ。
「大体出そろったかな…」
「はえ?」
「フリーボスの場所。分かったかも」
「えええ!?」
そっと時間を確認する。
「その前にお昼御飯だね」
「えー?」
午後には、実際にいるか確かめに行かないとね。
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