第17話 楽しんだ結果

 始まりの街で俺はステータスを眺めながら、ぼんやりとしていた。


「あー、堪能した。でもやりすぎたか?」


 フィールドに一体しかいないモンスターを根こそぎ狩ってしまった。幸運の白兎もいたから一日たてば復帰するだろう。


 素材はカードにできない物は全て売り払って、スキルの購入に当てよう。


 現在のステータスでは、フィールドに出ない方が良いだろう。運営に睨まれそうである。



名前  ジン

性別  男

Lv10★

HP   47

MP   60

筋力  11+1(12)

体力  13+1(14)

器用  21+4(25)

精神  16

知力  16

俊敏  8

運   15

ボーナスポイント 0



グリモワール 収録の魔道書 (グロノス)



装備    『グロノス(大鎌)』 白鉱のナイフ 探索者のベルト


所持金    20800コル


スキル    【鑑定Lv4】【魔書術Lv7】【採取】【採掘】【調薬Lv1】

       【幸運】【風魔法Lv1】【識別Lv1】【召喚Lv1】【剛力】

       【巧み】


称号     『始原の魔道』『第1階位の魔導書』『魔蜂の打倒者』『ダンジョン攻略者』『レアハンター』


収録の魔道書

名称   グロノス

形態変化 大鎌

階級   第1階位

タイプ  万能

能力  【コレクションカードLv3】【カード化】【魔物図鑑】



剛力 パッシブ

 レベルアップ時、ボーナスポイントを消費せず確定で筋力が1上昇する。

  何物にも負けぬ力を


巧み パッシブ

 レベルアップ時、ボーナスポイントを消費せず確定で器用が1上昇する。

  繊細な指先


レアハンター

 レアモンスター遭遇率2%上昇

  一定数レアモンスターを討伐した証。



 確か正式版への引き継ぎには、スキルが選択できる。スキルレベルは1まで落ちるが、そこは問題じゃない。ステータスにボーナスポイントを使用する理由が、また減った気がする。


 グリモワールは強制固定なので、引き継ぎ対象だ。アイテムなどは引き継げないので集める意味がない。


「よし、生産だ。あとスキル色々買っておこう」


 買い物を終えると個室を用意するべく、宿屋に入った。


「いらっしゃい」


「部屋空いてるかな?」


「ああ、空いてるよ…204号室を使いな」


「ありがとう、料金は?」


「一晩200コル。朝食付きなら250だ」


「じゃ、朝食付きで一晩頼むよ」


「あいよ」


 部屋の鍵を受け取り、そそくさと部屋に向かう。


「さーて、調薬調薬っ!」


 調薬を行うにあたって、問題であったのは場所だ。取りあえず薬草をどうにかする訳だが、腰を落ち着けないと意味がない。


 そこで、宿を取ることにした。


 別に濃密な効果を目指すわけでもないので、火を使う予定はない。


 さぁ、実験だ。


「…一応、ポーションは出来た」



ポーション 道具 レア度1 

 HPを10回復する。

  何所にでもあるポーション。



「普通だな」


 普通のポーションだ。どこからどう見ても普通だ。


「問題は効果だが…高いのか低いのか分からん」


 試しに幾つか作ってみたが最大で20だった。


「刻んで、磨り潰して…」


 一度作るとレシピに追加されるようなので、時間を忘れて作業を繰り返す。


「ふっー、単純作業って楽しいな!」


 元々地味な作業が得意なジン。作業を始めて既に五時間が経過していた。


 ゲーム内の時間は、現実とリンクするようになっている。理由は簡単で、人間の記憶領域の圧迫を防ぐためだ。人間の記憶できる容量には限りがあるので、ゲームの都合で削るのは不味いのだ。自己責任と言われればその通りなのだが。


 ポーン。前触れもなく音が頭の中に響く。


「お?」


 そろそろログアウトを検討する時間であったが、突然のインフォに気が削がれる。


≪明日8時より最終日までの間、イベントを開始いたします。なお参加されない場合は、巻き込まれない様注意をお願いいたします≫


「ここの運営は、ホント分かってるね」


 こんな面白そうなイベント参加しない訳には行かない。クローズβ版最終日まであと三日、全力で楽しませてもらおう。


「でも…巻き込まれないようにって、なんだろ?」


 不安な一文ではあるが、明日の8時までに起きれるように早めに寝るとしよう。


「ログアウト」



                       ♪



「兄上、晩御飯が出来ておりまする」


 『アライン』を外した俺のすぐ隣には、妹のかえでが不満げな表情で睨んでいた。


「すまん、時間を忘れていた」


「兄上、姉上はもうリビングで待っているのですよ」


「わかった。行こう」


 階段を下りてリビングに向かうと姉さんが、カレーをかき回していた。


「仁、遅いよ!」


「御免って、ログアウトしようとしたらイベントのお知らせが来て」


「ご飯の時間に遅れるのは許しません!」


 その後なんとか宥めるも夕食は、一時間延びた。

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