第6話 運営
-某所同日-
「…ハァ!?」
電話の向こうから、怒声ともとられかねない声が困惑の色彩を帯びて耳元にたどり着く。
「だから、言ってんだろ。『収集』が出ちまったんだよ!」
「んな…バカな…」
信じられないという様に声のトーンと共に、腰からスコーンっと力抜けて椅子に落ちて行く。
「気持ちは分かるが勝手に変更なんてしたら、大問題で信用問題だからな?」
「…し、しないよ?」
「なんで疑問系で答えんだよ!?」
そもそもの始まりは、クローズβの開始早々に『収集のグリモワール』がゲーム内に登場してしまったことに発端する。
「大体なんでβに『収集』が出るような設定にしてんだよ!?」
「仕方あるまい…第100階位に当たる物は全部キャラメイク後に出現できるように設定していたんだ。代わりに条件が相応に厳しく設定されているぞ?」
そう『収集のグリモワール』のキャラメイク取得条件はかなり厳しいのだ。まずインターフェース『アライン』を最後に使用してから5年は経過していること。本来ならば、あと数年先にならないと使用できない魔道書なのである。
「なんで取れたんだろうな?」
「知るか……でもま、ちょっと異常な魔道書は他にもあっただろ?」
「ああ、えーっと『創生』とか『繁殖』なんかだな」
「『収集』含めて魔道書は進化先が分岐して行くものだし、一番最悪な能力が『収集』の進化先にあるってだけの話だ。まぁ大丈夫だろ」
「正直、今ある全ボスのデータと対戦させてみても全滅なんだよな…ボス」
「ははは…エンドコンテンツの性能だから当然…でもないか殆ど悪ふざけで作った奴だぞ…」
「でも5年って事は…」
「止めろ戦争になるぞ…ったく。しょうがないか、出ちまったもんを消す訳には行かないからな。やばい進化出来ない様に調節すんぞ」
「まぁ、それぐらいなら2時間程の残業で済みますね。流石先輩!」
「メンテの時に無理やり挟むぞ」
仁の知らない所で、運営スタッフの残業が決まった。
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