第十六話 デザイン料


 婆さんとの話も済んだので、エリナたちがいる服飾部に向かうことにする。

 あそこに行くと長いんだよなー。ミコトやエマに色んな服を着せようとして大騒ぎになるし。

 今日はさっさと抜け出して他の部を見てみたいんだが。

 特に今日は朝から珍しくクレアが調理部に行っているから、どんな様子か見てみたいし。



「パパ! エリナママかわいいよ!」


「ぱぱ! ままをみてあげて!」



 ういーっすと服飾部の扉を開けた瞬間、やはり着せ替え人形にされたあとだろう、もはや制服ではなくふりふりのドレスを着せられたミコトとエマが、俺の胸に飛び込んでくる。

 ふたりも可愛いんだが、エリナを見ろとのことなので、室内をキョロキョロ見回してみると……。

 なんだあのどこかでみたピンクの制服……。



「お兄ちゃん! この制服可愛くない? ちきゅうれんぽうぐんの制服なんだって!」


「おおう……」



 似合ってる。似合っているんだが……。



「似合ってない?」


「いや、似合ってるよエリナ。でもイザベラ学園の制服としては採用しないけどな」


「えー。可愛いのにー」


「トーマお兄さんの基準が良くわからない……。可愛いし、トーマお兄さんが嫌がる露出も少ないのに」



 アンナが難しい顔をしてエリナの地球〇邦軍の制服を眺める。



「露出以前の問題だし、これオリジナルのデザインじゃないだろ」


「セイラ先生の持っていたスラモデルの箱に描かれていたキャラクターの制服だね」


「セイラじゃなくてセーラな。人様の名前なんだから気をつけろよ。色々まずいし。あとデザインもオリジナルじゃないと駄目だぞ……ってそうだ。アンナ、制服に採用された場合もそうだけど、もし市場に売りに出す場合なんだけどな」



「うん」


「売り上げに応じてデザイン料という形でその意匠を買い取るように決まったから、誰がデザインしたか、複数人ならその割合なんかを細かく決めておいて欲しい」


「えー揉めそうー」


「俺もそう思う。だがな、学園がすべての権利を生徒たちから取り上げるのも嫌なんだよ。それにいくばくかでも金が入れば助かる家もあるだろうしな」


「うーん。それは私たちだけで決めるの?」


「いや、服飾部の顧問のクリスや婆さん、あと割合や金額を決めるのにめんどくさそうなら城の専門家も呼ぶしな。できるだけ揉めないようにするから、そのあたりアンナたちはあまり気にしないでいいぞ」


「そっかー。わかったよトーマお兄さん」


「これも作ったばかりの制度だから実際に運用してみて変わっていくだろうけど、デザインをしたのは誰かを明確にすれば就職する時に有利になるかもだしな」


「うん! いつも私たちのことを考えてくれてありがとうトーマお兄さん!」



 がしっとアンナが俺の腰に抱き着いてくる。

 託児所で預かり始めたころは大人しくてクリスにべったりであまり他の子と話をするような子じゃなかったんだが。

 随分明るくなったもんだ。



「あーわたしもー!」


「えまもー!」


「「ピッピッ!」」



 俺に抱き着くアンナを見てミコトとエマも俺に抱き着いてくる。なんなんだこの状況。

 ついでにヤマトとムサシが俺の頭に飛び移り、頭皮をチョンチョンと突いてきやがる。

 アンナたちに抱き着かれて俺の両腕がふさがっているから振り払われないと確信しての嫌がらせだろうか。



「暑い暑い。子どもの体温高い。あと駄鳥、あまり調子に乗るなよ」


「「ピー! ピー!」」


「お兄ちゃん照れてるでしょ?」


「うっさいアホ嫁」


「えへへ!」



 アホ嫁呼ばわりでもエリナは嬉しそうな表情のままだ。

 っと、そうだ。



「エリナ、ミコト、エマ、服を着替えて調理部行くぞ」


「そうか、今日はクレアが行ってるんだった!」


「ママの所に行く!」


「えまも!」


「じゃあ早く着替えてこい」


「「「はーい!」」」


「お前らもミコトとエマと一緒に行けよ」


「「ピッピッ!」」



 そう言われても、ヤマトとムサシは俺の頭から動かずに、ひたすらギリギリ痛くない絶妙な加減で頭皮を突きまくっている。

 うーん、この程度で怒るのも大人げないしな。

 怒られないギリギリを探ってるのかな? だとしたら早めに怒っておかないとどんどんエスカレートしそうな気がする。


 駄鳥二羽にツンツン頭皮をつつかれながらどうすっかーと考えていると、朝一緒に出た服に着替えたエリナたちが出てくる。



「パパとヤマトとムサシってなかよしだね!」


「なかよし!」



 ツンツン俺の頭皮をつつきまくっているヤマトとムサシを見てミコトとエマがアホなことを言い出した。

 この状況で仲が良いように見えるのか……。



「ほらヤマトとムサシ、ミコトとエマの所に帰れ」


「「ピピッ!」」



 ヤマトとムサシはバサっと一丁前の羽音を奏でながら、優雅にミコトとエマの頭の上の定位置に戻る。

 もちろんあの二羽はミコトとエマの頭皮をつつかない。

 仲が良いどころか明らかに俺に対する悪戯なんだけどな。



「さあ行くか。じゃあアンナ、デザイン料に関しては正式には婆さんとクリスから話があると思うけど、何か聞きたいことがあればその時にな」


「はーい! 行ってらっしゃいトーマお兄さん! エリナお姉さん! ミコトちゃんエマちゃん!」


「「ピー!」」


「うふふ、そうだね! ヤマトとムサシも行ってらっしゃい!」


「「ピッピ!」」



 アンナは自己主張の激しい駄鳥へも律儀に挨拶をする。



「「「行ってきまーす!」」」



 って言ってもすぐ隣なんだけどな。調理部の部室は。



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