第十三話 タコライスと豚角煮。そしてポーク缶詰


 ちわっこのミニスカートは女子にも大好評のようで、既存の試作した制服も全部ミニスカートに! とか盛り上がってる。



「あのな、見えちゃうようなのは駄目だぞ」


「お兄さんお兄さん! 大丈夫だよスパッツを履いてるから!」


「スパッツを履いてりゃいいっていう風潮はなんなんだ……」


「見てみる?」


「うっせー」



 またからかうような言い方をしてくるちわっこはスルーだスルー。



「パパ! わたしもみにすかーとにする!」


「えまも!」


「絶対駄目!」


「「えー」」


「今のミコトとエマがミニスカートを履いても可愛くないぞ。もう少し大きくなったらな」


「「ぶー!」」


「「ピー! ピー!」」


「うるさいぞ駄鳥」


「パパ! だちょうじゃないよ!」


「ぱぱ! けんかはだめ!」


「はいはい」


「ミコトちゃんエマちゃん、シャルお姉さんと一緒にいろんな制服を見てみようよ!」


「「うん!」」



 そろそろ家に帰って晩飯の準備を始めようと思ったのだが、ミコトとエマがちわっこに捕まって、ハンガーに掛けられた制服を眺めながらきゃっきゃと盛り上がり始めた。

 どうすっかな、無理に連れて帰ってもかわいそうだしな……。

 などと思っていると



「お兄ちゃん、ミコトちゃんとエマちゃんは私が見ておくよ」



 エリナがそんな俺の気持ちを察してそんなことを言い出した。



「わかった。じゃあクレア、晩飯の買い物をして帰るか」


「はい兄さま。姉さますみませんがよろしくお願いしますね」


「任せてクレア!」



 妙にニコニコしているエリナにミコトとエマを任せて学園を出て、食材を買うために市場に向かう。



「兄さま、今日のメニューは決まっているのですか?」


「そうだなー、今日はタコライスとラフテーにしようと思う。いや泡盛が無いからラフテーじゃなく豚角煮になっちゃうか」


「たこらいすですか?」


「白飯の上にな、炒めた合い挽き肉、レタス、トマトを乗せて、タコソースかサルサソースを絡めた沖縄料理だ。チーズを振りかけたり、トルティーヤチップスを散らしたりするんだぞ」


「そういえば、タコスはエルフ国の露店で見かけましたね」


「エルフ国は沖縄っぽい料理の影響を受けてるけど、めんどくさがりなせいで基本シンプルな料理が多いけどタコスはあったんだよな。タコスもシンプルっちゃシンプルだけど、米がこの辺りで流通してなかったせいかタコスを乗せる発想までは行かなかったみたいだな」


「たこらいす美味しそうですね!」


「実際美味いぞ。簡単だしな。豚角煮も本来は煮込み時間がかかるんだが、クレアの魔導圧力鍋のおかげで時間短縮できるからな」


「圧力鍋は画期的ですよね」


「燃料節約や時間短縮にもなるしな。魔石を使わないノーマルな奴は結構売れてるし」


「魔石を使う圧力鍋は調理時間が本当にゼロですからね……」


「その分魔石の消費量が多いから、庶民には使いづらいけどな。魔導圧力鍋自体が高価だけど」





 クレアと調理器具の話などをしながら買ってきた食材を厨房に並べる。

 エルフ国の商店が立ち並ぶ区域を覗きに行ったら、サルサソースとトルティーヤチップスが売ってたのでついでに買ってきたんだが、最近エルフの店の品揃えが良くなってきたんだよな。

 商売っ気が出てきてくれたんなら歓迎なんだけど。



「兄さま、じゃあ豚角煮を作っちゃいますね」


「たのむ。俺はタコライスを作っちゃうわ」



 俺は超巨大な圧力鍋をマジックボックスから取り出してコンロの上に置く。

 相変わらずアホなサイズだが、一号が作って持って来るし、一応専門家から助言を貰いながら制作しているらしいのでしっかりとした作りになっている。

 圧力鍋はちょっと強度とか圧力弁の作りが甘いと爆発したりするかもだからな。その辺は一号もちゃんと理解しているので、安心して使用できる。


 クレアは圧力鍋の中に大き目の豚の三枚肉と臭み消し用のネギ、しょうがを入れ、水を張って蓋をして火にかける。

 一号の作った超巨大圧力鍋は一応魔石を使う魔導調理器具なのだが、巨大過ぎるために、あくまでも補助程度の機能しか持たない。

 具体的には調理時間の短縮程度か。


 超高級バージョンの魔導圧力鍋は材料と調味料を入れて蓋をしてスイッチを押すだけで完成するというトンデモ仕様なのだが、高額過ぎて全く売れないという代物だ。

 魔導士協会がいまいち魔導具で大きな利益を生めないのはこういうアホな物を作るのも原因の一つだろう。

 市場の需要を読み切れないで浪漫ばかり追っているからな。その気持ちはわからんでもないけど。

 魔導駆動車も一部好事家以外には全然売れてないし……。



「煮込んでる間に副菜の準備をしちゃいますね」


「ああ、俺の方も時間はかからないから、手が空いたらそっちを手伝うぞ」


「ありがとうございます兄さま」



 タコライスは本当に手がかからない。引きこもりエルフでもなんとか作れるといったレベルの料理だ。しかも手軽なのに美味しいし。


 さあまずはタコライスに乗せるタコミートを作るか。

 フライパンに油を引き、刻んだニンニクを入れ、香りが出てきたら刻んだ玉ねぎを炒め、玉ねぎが飴色になったら合い挽き肉を入れてウスターソース、塩コショウ、クミン、ナツメグなどの香辛料を入れる。

 全体的に火が通ったらチリパウダーを加えてタコミートの完成だ。

 ハンバーグと似た香辛料を使うが、香辛料がハンバーグより多めな上に、チリパウダーを加えることでよりスパイシーな食味になるのだ。


 このタコミートはこのままトルティーヤに乗せてタコスにしたり、つなぎを入れて固形にして軽く焼けばスパイシーハンバーグになったり、サラダに加えたり、パスタの具になったりパンに挟んだりと色々アレンジが効くので、大量に作ってストックしておく。


 このタコミートをライスの上に乗せ、レタス、トマト、サルサソース、チーズ、トルティーヤチップスをトッピングして完成だ。

 あっという間だな。



「ス〇ム、いやポーク缶詰があれば副菜にポーク玉子とか作りたかったんだが」


「缶詰って前にも兄さまが言ってましたけど、瓶詰じゃ駄目なんですか?」


「瓶は重いし割れるしな。それにガラスは高いし」


「でも缶詰もコストが高いって兄さま言ってましたよね?」



 そうなのだ。以前に缶詰の開発をしたいと言ったところ、幹部連中に難色を示されたという経緯があるのだ。

 アルミの材料であるボーキサイトはこのあたりじゃほとんど産出されず、アルミの精製自体にも大規模な魔力を必要とするので研究目的にごく少量が生産されている状況なのだ。

 スチール缶の材料である鉄は多く産出し、特に亜人国家連合から質の良い鉄鉱石が大量に持ち込まれているのでコストは安いのだが、鉄は腐食しやすく、内側にラミネートコーティングするPET素材の開発などが難しいという理由で頓挫していたのだ。


 だがこれってスライム材で代用できないか?

 ちょっと爺さんに確認しておくか。


 缶詰を実用化レベルの価格で製造できれば今以上の流通革命が起こるかもしれん。大量に輸送するために魔導駆動車の需要も出てくるかもだしな。

 魔素収集パネルの高効率化や魔導駆動エンジンの省魔力化、高出力化の研究次第なところもあるんだけど。

 ちわっこみたいに金持ちなら魔導ハイAを乗り回しても問題ないんだが、流石にもう少し販売台数が増えないと量産効果が出ないのでコストが下がらない。

 ちわっこの場合はちわっこが乗る魔導ハイAを護衛するために、騎馬じゃ追いつけないからって護衛用に魔導駆動二輪車にサイドカーを取り付けた戦斗バイク甲型を十台購入しくれたんだが、これだけの大口の顧客なんかちわっこ以外には存在しないのが現状なのだ。


 武装を付けたまま売れるのは事実上ちわっこくらいしかいないというのも問題なんだが。



「だがスライム材をうまく使えば安く作れるかもしれないんだよな……」


「亜人国家連合産のお魚の缶詰とかが安く買えたらすごいですね!」


「そうだな、少し爺さんと相談してみるよ」



 缶詰、できると良いなあ。ツナ缶とか鯖缶、鰯缶、秋刀魚缶とか好きなんだよなー。



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同時連載しております小説家になろう版では、十一章の水着イラスト、十三章の制服イラストをはじめ200枚近い枚数の挿絵が掲載されてます。

九章以降はほぼ毎話挿絵を掲載しておりますので、是非小説家になろう版もご覧いただければと思います。

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