第七話 着やせ(水着回Ⅵ)


 リゾートホテル滞在五日目。

 ちわっこも加わり、一緒についてきた護衛騎士や侍女なんかも増えて一気に騒がしくなる。


 この城塞都市の中にいれば滅多なことは起こらないし、ここは迎賓館も兼ねた警備が強固なホテルだし、ビーチもプライベートビーチだから楽にしていいぞと言ったらいきなり休暇モードになりやがった。

 普通に護衛騎士も侍女も朝食バイキングで飯食ってたけど気を抜きすぎだろ。

 売店で水着を買ってたけど流石に泳がないよな? 水辺で警護なりちわっこの世話をするから水着になるだけだよな?


 俺たちの警備は多分今もメイドさんがどこかでがっつり守ってくれているだろうから安心だけど、ちゃんと休暇とか取れてるのかね。

 うちの職場はアットホームな雰囲気でみんな夢に向かって頑張ってるんだし。


 なんだかんだいつものチーズオムレツの朝食を終えビーチに向かう。

 もう茅ヶ崎あたりの雰囲気にも慣れ、普通にリラックスできるようになったのは良かったけどな。風呂もファルケンブルク温泉物語ほどではないけど露天風呂もあって充実してるし。



「閣下、およびと聞き馳せ参じました」



 ビーチに一歩踏み出すと、アイリーンが待ち構えていた。昨晩メイドさんにアイリーンを呼ぶようにお願いしていたのを忘れていたな。



「おお、アイリーン……ってその恰好は……」


「打ち合わせついでに休暇を頂けるとのことで水着を着てきましたが……やはり礼を失したでしょうか?」



 すこししゅんとなるアイリーンのその姿は、軍人ルックというか、切れ込みの凄い黒のワンピースにところどころ皮ベルトをあしらっている、どこぞの女性パンクバンドか女子プロレスラー(ヒール)のような姿だった。

 更に軍服の上着を羽織り、軍帽まで被ってるのだからひときわヤバい。

 あとミリィの言う通り、やっぱり隠れ巨乳だったのな。



「失礼じゃないけど何故軍服なんだ?」


「常在戦場、いついかなる時も緊急の事態に備えた結果ですが」



 どうでもいい理由だった。

 というかアイリーンの水着姿が色々アレすぎて気付かなかったが、こいつカレーとタピオカドリンクを持ってやがる。



「アイリーン、朝食かそれ」


「あ、これは失礼いたしました。朝食を頂こうと食堂に入ったのですが、料理が無くなったということでしたので、そこの海の家で買ったばかりなのです」


「あー、今日はちわっこの護衛や侍女が飯食ってたからな」


「なるほど、王女殿下の。打ち合わせというのはその事ですか?」


「そうなんだが、まずはその手に持ったカレーとタピオカドリンクを片付けたほうが良いな。あそこのデッキチェアでいいか?」


「申し訳ありません」


「いやかまわん」



 アイリーンを伴ってデッキチェアの並ぶ場所まで歩いて行き、それぞれデッキチェアに腰を降ろす。



「では失礼して」


「おう」



 アイリーンは俺が返事をしたと同時に、ドバドバとカレーを口にぶち込んでいく。

 こいつこんなに大食いキャラだったっけ? そういや豚Wヤサイマシマシを普通に食ってたな……。


 俺がアイリーンの食べっぷりに唖然としている間に、あっという間にカレーを食べ終え、タピオカドリンクを飲み干した。



「ふう。お待たせいたしました閣下」


「もっとよく噛んで食え。タピオカもちゃんと噛んでから飲んだほうが良いぞ」


「カレーは飲み物ですからね」


「そんなこと言ってたタレントがいたな昔。まあ早速本題に入るがいいか?」


「はっ」



 アイリーンの口の端にカレーがついてるがスルーする。



「前に初期型の魔導駆動車を王家に献上しただろ? 王専用ってことで今は埃を被っているらしいんだよな」


「王が城から出るというのも中々機会がないでしょうしね」


「それに運転技術を教えた職員も技術を秘匿しちゃってるらしく、他の職員に教えたがらないんだとか」


「王命に逆らうというのもすごいですね」


「いや、教えるには教えるんだが、しっかり教えないというか肝心な部分は教えないみたいなことらしいんだ」


「自分が王都で唯一まともに魔導駆動車を運転できるという立場をわざわざ失うような行為になりますね」


「なのでちわっこがここにいる間に、魔導駆動車の運転技術を習得させて、ちわっこには専用の魔導駆動車と護衛用の魔導駆動車を数両渡そうと思うんだが」


「かしこまりました。護衛車両はまだ増加装甲を施していない機動魔導駆動車砲を四両ご用意できます」


「まあそんなもんだろうな。すでに旧式化してるしちょうど良い。んでちわっこの専用車は?」


「王女殿下にふさわしい魔導駆動車が現在軍部にはないのですよね。市販の魔導ワゴン車ベースに改造するにしても時間がないですし」


「じゃあ魔導ハイAを渡しちゃってもいいか」


「よろしいのですか?」


「外観も内装も王族が乗っても問題ないレベルだし、武装も十分だろ。それに今度魔導キャンピングカーを爺さんからもらうからな。俺はそっちに乗り換えるよ」


「かしこまりました。では早速用意してきます」


「待った待った!」



 デッキチェアから立ち上がり、走り去ろうとするアイリーンを止める。



「はっなんでしょうか?」


「ちわっこに、今連れてきてる家臣の中から運転技術を教える人間を選抜してもらうから、そいつらの教育も頼む」


「かしこまりました。軍部用に作成したマニュアルを使用してもよろしいですか?」


「むしろ積極的に配って良いぞ。運転技術というか免許取得をもっと広めるために、どんどん民間にも流したいし」


「今は民間人でも、免許取得希望者は軍部で免許取得の講座を受講する必要がありますからね」


「もっと魔導駆動車が普及すれば教習所を作っても良いんだが」


「そうですね、魔素研究は現在停滞していますが、実は別のアプローチで活用化の道が見えたのです」


「ほう」


「効率という点ではむしろ悪化しているのですが、魔素を魔力に変換という部分ではひとつの答えが出た形になります」


「報告書は?」


「もう少しお待ちください。ある程度の実験データと試作品と一緒にお見せしたく思います」


「わかった。楽しみにしてる。じゃあ昼にでもちわっこに運転技術を習得させる家臣を選んでもらうから、それまでアイリーンは自由に過ごしてくれ。せっかく水着も着て来たんだからな」


「ご配慮ありがとうございます」



 魔導ハイAはちわっこに譲ることになったが、代わりに魔導キャンピングカーが手に入るのなら問題ない。

 人数を乗せたいなら魔導マイクロバスとか持ってくればいいしな。

 あ、ナビの音声案内どうするかな。意味不明すぎて伝わらないんじゃないのか?



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次回も水着回です!


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是非一度小説家になろう版もご覧いただければと思います。

小説家になろう版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。


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