第七話 即席麺を作ろう


「どうじゃトーマ?」


「試食した中華麺は美味しいし、このまま量産をしても全く問題ないと思うぞ。もちろんスープや具によって太さ、固さなどを調整する必要はあるが」


「そのあたりはカッターの幅を調整すれば可能なようにしておくぞい」


「しかしなんでスープの達人や具の達人も呼んでたんだ? 製麺機の開発だろ?」


「直販する可能性もあるしの。給食としても提供する予定とのことじゃし」


「そういや給食室だっけここ」


「成功して事業拡大するまではここを製麺所にするらしいの」


「そのあたりのリスクを考慮してるのは流石クレアだな」


「てへへ、兄さまありがとうございます」


「あとさ、少し考えがあるんだけど、即席麺を作らないか?」


「即席麺ってなんですか?」


「異世界本で見たことあるのう。たしかカレー麺とか言ってた気がするぞい。サバイバル漫画じゃったかのう」


「キャンプな、緩い感じの。即席麺があれば、煮たりお湯を入れるだけで食べられるし、日持ちもするから備蓄や輸出も可能だし」


「どうやって作るんですか?」


「出来上がった生麺を蒸してから、油で揚げたり、熱風を当てたりして水分を飛ばして作るんだよ。蒸したものは焼きそば用の中華麺として出荷できるし、製造ラインは共用できるんじゃないか?」



 もちろん生麺より安い強力粉を使ったりして即席麵のコストを下げたりしても良いと思うがな。

 焼きそば用だって某B級グルメで有名な焼きそば用の麺とかを作ろうとすると別ラインにしたほうがよさそうだし。



「揚げちゃうんですか」


「こんがりきつね色に揚げるんじゃなくて、あくまでも水分を飛ばすためだけどな。熱風で乾かすタイプは生風麺になって食感が変わるし、付属させるスープに合わせても良いし」


「色々あるんですね」


「蒸した麺に味付けして揚げて乾燥させればそのまま煮たりお湯を入れるだけで食べられるようになるし、スープを粉末にしたり濃縮化したものを添付すれば便利だしな」


「生めんより製造工程が増えるわけですからコストが増えますよね」


「水分を飛ばすことによって日持ちがするようになるから、ロスが出にくいんだよ。量産効果や、原材料の見直しでコストを抑えれば庶民にも購入しやすくなるし」


「なるほど」


「戻した即席麺のお湯を捨てて、付属のソースで味付けをすればソース焼きそばになるタイプの発展型もあるし、色々楽しいと思うぞ」


「早速生麵を揚げたり熱風で乾燥させて試食してみましょうか?」


「即席麺用に細い専用麺とかにする必要はあると思うけどな」


「一番細い麺で試してみましょう」



 そういうとクレアは、職員にお願いして一番細い麺を揚げてもらう。

 時間差で揚げ加減を変えたものを複数用意し、油を切って冷ます。

 爺さんは熱風で乾燥させるようだ。



「そういや爺さん魔素と魔石の研究は?」


「今は停滞期じゃ。マリアの嬢ちゃんやエカテリーナの嬢ちゃんにも色々手伝って貰っているんじゃがのう」


「まあ難しそうだしな」


「なんとか魔素を蓄積するか、魔力を効率よく使えるようにしたいんじゃがな」


「そのあたりは力になれないからな。予算も頑張ってアイリーンに緩くするように言っておくから」


「すまんのう」



 亜人国家連合の方では即席麺は作ってないっぽいんだよな。なんかこだわりでもあるのか、魔力が少ない土地だから大規模な製麺工場が作れないのかも。

 生麺製造ならまだしも揚げたり熱風乾燥だとかは大変だしな。



「兄さま、とりあえず完成しました!」


「おっ、じゃあ試してみるか」


「じゃあ煮てみますね」



 袋タイプっていうのかな。袋には入ってないけどな。

 クレアが完成した即席麺を手鍋で煮ると、数分で完成する。



「スープの素が無いな」


「簡単に作ってみたのでこれを使いましょう」



 クレアがしょうゆベースであろう真っ黒な液体を少し器に入れ、手鍋で煮た麺を煮汁とともにそのまま入れる。

 生麺だったら打ち粉が煮汁に出ちゃうから煮汁は捨てないと駄目だけど、即席麺ならそのままでスープの素を入れれば食べられるのは良いな。

 クレアがキラキラした目で俺を見上げるので、早速食べてみることにする。



「お、少し固めだけどいけるいける。麺の太さとか茹で時間を調整するだけで商品化できると思うぞ」


「良かったです! これで即席麺の目途も立ちました!」


「煮るタイプも良いけど、できればスープとか具も少しついたカップ麺タイプの方が受けると思うんだよな」


「トーマよ、ラーメン三銃士を呼び戻すか?」


「いらん。普通に細麺にして粉末スープを開発すればいいだけだろ」


「まあ色々試してみるわい。開発資金はクレアの嬢ちゃんから十分出てるしの」


「クレア……」


「兄さますみません! 『クレア印の魔導調理器具の特許料の一部を払う代わりに仕事をくれ』とロイドさんに言われて仕方なくて……」


「たしかにクレアひとりに持たせるには大金だけどな」


「仕方ないじゃろう、現金で用意できなかったんじゃもん」



 じゃもんって……。

 とりあえずこれで中華麺と即席麺の製麺装置の開発が決まった。

 と言ってもラーメンが流行らなかったらただの備蓄食料になってしまうんだが。

 受けなかったら亜人国家連合に輸出するしかないかもな。




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