第二十二話 近接防御火器システム
「マリアお姉ちゃんすごいすごい!」
「わー! たかーい!」
マリアと一緒にセグAに乗り込んだミコトとエマが大はしゃぎだ。
ちょっとうらやましい。
「小回りも効いて便利そうだなあれ」
「飛行魔法自体が術者も少なければ飛行時間も数分とほとんど実用的ではないからの。セグAが量産できれば大流行するじゃろうな!」
「交通ルールを作っておかないとな……。販売するにもちゃんと審査基準なんか決めておかないと」
「トーマは細かいのう」
「城壁を簡単に飛び越えられる魔導具なんか簡単に流通させるわけにはいかないだろ。実際マリアはあれで侵入したんだぞ」
「城壁には既存の高角砲に加えて
「迎撃する案じゃなくて防御する案を考えろや」
「
「まあわからんでもないが」
「そもそもコストパフォーマンスの悪い装備をアイリーンの嬢ちゃんが認可するわけないじゃろ」
ぐうの音も出ない正論を吐かれたので、スルーして上空のマリアたちを見る。
マリアが高角砲で撃ち落とされなかったのは、高角砲は魔力に対して反応するレーダーと連動していたからで、魔素には反応しなかったためと報告があったが、今後は赤外線で魔力が無くても空を飛ぶ人間に対して対応できるようにするとのこと。
良かったなマリア。下手したら大怪我じゃすまなかったぞ。
上空を飛ぶマリアはまだ余裕そうな顔をしているが、流石に魔素が続かないのか、ゆっくりとセグAを地上に着地させた。
「はい、ミコトちゃんエマちゃんお疲れさん」
「ありがとーマリアお姉ちゃん!」
「おもしろかったー!」
「またあとで乗せてあげるからね!」
「「わー!」」
完全にマリアに懐いてしまったふたりがマリアに抱き着く。
人見知りしなさすぎなのも問題だな。
「マリアの嬢ちゃん、あとで儂にもセグAを見せてくれ!」
「ええもちろん。私も魔導エンジンを見せて頂きたいですロイド卿」
「おう、魔導駆動二輪車なら仕組みは簡単だし、魔導ハイAよりこっちの方が魔導エンジンを見るにはちょうど良いじゃろ」
そういうと爺さんは自身のマジックボックスから魔導駆動二輪車を取り出す。
見た目はネイキッドタイプのバイクだなこれ。
「おー! 見てええですか?」
「もちろんじゃ!」
ミコトとエマを張り付けたままのマリアが魔導駆動二輪車に近寄ると、ふむふむと半分むき出しの魔導エンジンの観察を始める。
「ロイド卿、設計図はありますか?」
「これじゃ」
「おおきに!」
爺さんから渡された設計図と、シートなどが外されて、ほぼ全てが見えるようになった魔導エンジンを見比べながら、マリアは爺さんに次々と質問を投げかける。
「魔力伝導パイプ、これ凄いですね」
「じゃろじゃろ? 魔石を収めた箱から魔力を吸って魔導エンジンに供給するようにしたんじゃ。亜人国家連合の魔導コンバインは魔導エンジンの中に直接魔石を入れておったからな。魔力伝導パイプのおかげで魔石を入れた箱をカートリッジ化できたんじゃぞい」
「魔素を魔力に変換できれば、魔力で駆動するシステムはもう完成しているというわけですね」
「ただし魔力効率がまだ良くないのう。魔石を大量に必要とするから魔導駆動車を使った長距離移動は、魔力を供給できる術者がいなければ現実的ではないからのう」
「カートリッジの内側で魔力を吸収するようになってるんですね、これはどんな素材なんです?」
「これはの……」
専門的な話になってきて飽きたのか、それとも仕事の邪魔をしちゃいけないと判断したのか、ミコトとエマがマリアから離れて俺にしがみついてくる。
昼飯には早いしどうするかな……。このあたりじゃ遊ぶものも無いし。
ミコトとエマが退屈だろうなと心配していると、荷馬車がこちらに向かってくる。
御者席にはアイリーンが座ってて酷くシュールな光景だ。
ガラガラと俺の側までやってきて御者席から降りたアイリーンがちらりとマリアと爺さんを見つつ、俺に挨拶をする。
「閣下、こちらにいらっしゃると伺い参上いたしました」
「ちょうど良かったよアイリーン、技術開発に関して魔導士協会をどこまで嚙ませるかとかの話まで進みそうだし」
「はい、今日こちらでマリア殿の空中浮遊の魔導具の試乗をされるということで、一緒にロイド卿から審査を依頼された品もお持ちしました」
「爺さんから審査依頼?」
「魔導駆動二輪車に取り付けるサイドカーですね」
「サイドカーってそれほど機構も複雑じゃないし、エンジンを積んでるわけでも無いのに審査が必要なのか?」
「魔導高角砲を積んでますからね」
「またそれか……」
「閣下の魔導ハイAに搭載されている同口径の高角砲をそのまま水平射撃できるように搭載してあります」
「そういう問題じゃないんだが」
「もうひとつ審査した試作品もありまして、
「そのCIWSの報告は受けてないんだが」
「CIWSに搭載されている火砲は
「銃は異世界本でこの世界に伝わってるのは聞いてたし、実際にハンターが持ってたから知ってたけど機関砲って」
「製造自体は可能でしたからね。問題は魔法と比較したコストという一点だけでしたし」
そういって、アイリーンは荷車に被せられたシートを外す。
荷車には、サイドカーのような車体に砲身が備え付けられたものがふたつ鎮座していた。
思想的に過激じゃないやつっていないのかな?
どんどんアホなことになっていってる気がするぞ……。
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