第十六話 豆乳鍋とトマトカレー鍋
野球が終わった後、ガキんちょどもが風呂に入るためにそれぞれ寮と家に向かう。
「じゃーまた明日ね!」
「うん! バイバイ!」
寮生組と旧孤児院組はここでお別れだ。すっかり仲良くなってるな。
あと「バイバイ」って英語だけどこれも言語変換機能なんかな。普通に「さようなら」でいいと思うんだが、親密度を良い感じに表現するために「バイバイ」って変換したのか? 高性能すぎるな。
などとアホなことを考えながら家の扉を開ける。
珍しく出迎えが無いが、エマもミコトもお昼寝中かなんかでエリナとクレアは動けないんだろう。
というかもう冬で寒いし元々出迎えはいらないぞって普段から言ってるから良いんだけど。
「じゃー兄ちゃん、こいつら連れて風呂に入ってくるな」
「頼むぞ一号。あと湯船で泳ぐなよお前ら」
「わかったよ兄ちゃん」
こいつら増築で広い風呂になった時からやたらと泳ぎたがるんだよな。
水泳の授業も無いし川とかで泳ぎの練習もしてないのに、いつの間にか全員が泳げるようになってやがる。
エマを風呂に入れるのに、旧孤児院の狭いほうの風呂にエリナと入ったりしていて、俺がいない時にやたらと泳ぎまくって練習したとのこと。教材はもちろん異世界本だ。
来年の夏には学校にプールを作ろうと計画しているが、わざわざ授業で水泳を教えなくても風呂で習得しやがった。アホすぎて理解が追い付かない。
魔法を使えば温水プールなんかも余裕でできるんだが、そこまで甘やかす必要はないから夏までお預けだ。
「シルもサクラも女子チームを連れて風呂に行ってこい。その間に飯を作っておくから」
「わふわふっ! わかりましたっ!」
「わかりましたお兄様! お手伝いできなくてすみません」
「今日は鍋だし手間はそれほどかからないから気にするな」
「鍋は亜人国家連合では冬の定番メニューですからねっ! 楽しみですっ」
「お兄様の作る鍋楽しみです!」
「はいはい、砂とかちゃんと落として来いよ」
「「はい!」」
さてガキんちょどもが風呂に入っている間に晩飯の支度を始めるか。
「クリス、ミコトの世話をクレアと代わってきてくれ」
「かしこまりましたわ旦那様」
厨房に入りバカでかい土鍋を並べていく。
一号たちが作った特製巨大鍋だ。ついでにこの鍋に合う卓上魔石コンロまで作ったのだ。土鍋は空ならなんとかなるが、鍋に具材が入ってると俺一人で持ち上げられないサイズだ。アホだからか食への欲望のまま作りやがった。
俺にはマジックボックスがあるから問題ないが、寮では職員が二人がかりで運んでるらしい。
米は大量に炊いたものをおひつに入れてマジックボックスにしまってあるし、中華風蒸しパンやパスタ、パン、常備菜なども収納してあるので鍋の用意だけで済むのだ。
巨大鍋に水を張り、豆乳鍋にする方には昆布を投入して火にかける。
昆布で出汁を取る時は、沸騰直前のお湯に昆布をくぐらせるだけとか、沸騰直前に引き上げるとか色々あるが、細かいことは気にしない。
食材をマジックボックスから取り出し、調理台の上に並べていく。
「兄さま、お待たせしました」
「お、クレア丁度良かった。鍋に入れる具材を全部出したから、火の通りにくい順から切っていってくれ」
「任せてください兄さま!」
「今日は豆乳鍋とトマトカレー鍋だぞ」
「豆乳ってエマちゃんに何度かあげたことはありますが、お鍋にも使えるんですね」
「コクが出て美味いんだぞ」
「あとかれーって何ですか?」
「スパイスを混ぜ合わせた辛いシチューみたいな料理なんだよ。
「辛いんですか?」
「甘口とかもあるんだけどな、今回は初心者でも食べられるように、いつものトマトシチューにカレー風味の味付けをした鍋料理で様子を見る。エリナとミコトにはいつものトマトシチュー風のトマト鍋を普通サイズの鍋で作るけど」
「ミコトちゃんはわかりますけど姉さまもですか?」
「医学的には問題ないらしいんだけど、母親が辛い物を食べた後って赤ん坊が母乳を嫌がったりする場合があるんだと。トマトカレー鍋を少し食べる程度ならいいと思うが、メインで食べるには少し怖いからな」
「ふふふっ。姉さまは愛されてますね」
「いいからさっさと作るぞ」
「はい兄さま」
鍋に張った水が沸騰し始めたので、豆乳鍋用に入れた昆布をどんどん取り出す。この昆布はあとで佃煮にするのでさっと洗ってしまっておく。
豆乳鍋にする方に豆乳を出汁と同量ほどと、醤油、酒を少量入れ、トマトカレー鍋の方には、ターメリックなどの香辛料、ブイヨン、トマトペースト、ジャガイモ、キャベツ、鶏もも肉を入れていく。
豆乳鍋の具材は鶏もも肉、鶏つくね団子、白菜、人参、ほうれん草とシンプルなものにした。
トマト鍋の方は最初に入れた具材に火が通った後に、ソーセージ、ベーコン、トマトを入れるだけだ。
「じゃあクレアは豆乳鍋の方を頼む。あとはいつも通りに火の通りにくい順に具材を入れるだけだから」
「はい」
どうせあいつらは巨大鍋で出しても最初の分だけじゃ足りないから具材を追加投入するんだけど。なので見た目をあまり気にしないでいいんだが、最初だけは美味そうに見せておくか。
トマトカレー鍋のジャガイモなどに火が通ったのを確認してからソーセージ、ベーコンを見た目良く並べながら投入していく。
スープの味見をしたところカレーの風味がしっかり出ているけどそれほど辛くないし、美味い。
甘口スープカレーとも言えそうな鍋が完成した。適当に作ってみたが初心者には丁度いいかもな。
日本ではお子様が大好きなカレー。あいつら喜ぶだろうか。
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