静寂を切り裂くは神の雷霆 (一)
『敵機を確認。各自、配置につけ』
ウォードの冷徹な声音が無線へ響く。
『総数は不明。前衛はリーラに一任する。砲撃時は無線のみの警鐘にとどめる。聞き漏らすなよ』
傍らで出撃に備える師団員らが生唾を飲んだ。
『ライル、準備はいいか』
「……ああ」
『カイナ。先鋒は任せる。最小限の労力で可能な限り攪乱させろ』
『了解』
『各位、武運を祈る。――迎撃戦開始』
同時、荒野へ向けて師団員たちが駆けていく。
その勇姿を一瞥し、ライルははるかに
かつては自分も、あちら側だった。
国を滅ぼし、人を殺めることになんの感慨も抱かず、ただ自分が生き残るがために無心で尊厳を踏みにじってきた。
けれど、いまは違う。
自分にも守りたい人たちができた。
だからこそ、過去の自分と決別しなければならない。
なにも持たず、誇らず、ただ生きていた人形の頃の自分自身と。
「そのために俺は……あんたを討つ」
視界の先。
迫り来る敵機の先陣が深緑を駆け下り、その姿を土気色の戦線へと現す。
『ライル、頼んだぞ』
「……ああ」
ライルは山々の上空に集う曇天へ手を伸ばすと、開戦を告げる号砲の如く叫び、
「万雷の喝采を以て敵の
数多の爆雷を山々の深緑へ降り注がせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます