絶対絶命限界脱糞お嬢様

朝活四時

第1話 入学式とお嬢様

 石爾女いしじめ女学院、始業式兼入学式。第一体育館。


 生徒会長がお話をされている中わたくしは、私は……




 糞 が し た く て た ま り ま せ ん わ!!!




 猛烈な便意のせいで貧乏ゆすりをしたくてたまりませんが私は今日からお嬢様学校の生徒の一人、そんなはしたないこと出来ませんわ!


 落ち着くんですの私!少し過去を振り返って心を落ち着けますの!


 そう、まず石爾女女学院には二種類の生徒がいますの。


 一種類目が小中と石爾女女学院附属で過ごしそのまま上がってきた内部生と入試で入学してきた外部生がいますの。


 私、ヴァイオレット・ヴァイパーヴィルは外部生ですわ。


 この口調もこの女学院に入ることになってから練習した付け焼き刃ですの。


 それにしては中々の完成度ではなくて?そう思えたのは入学して教室に入るまでですわ。


 皆様も天然物の「ご機嫌様」を聞けば嫌でも正気に戻されますわ。


 ちなみに私は隣席の内部生数名と二言三言言葉を交わしましたけれども、こんなお嬢様言葉で話している方は一人もいませんでしたわ。


 早速黒歴史を作ってしまったという訳ですわね。


 あ、生徒会長が一歩下がってお辞儀をしましたわ!


『――続いて学院長からのお話です』


 糞がよ!!!……失礼、つい汚い言葉が口から出てしまいましたわ。


 このお話はプログラム通りですわ。不条理な怒りを鎮めなくてはなりませんわ……


 お願い、耐えてくださいまし私の肛門括約筋!こんな体育館で起立した状態で糞を漏らそうものなら、私の輝かしいお嬢様学校生活即終了ですわ!


 便意にも波がありますのよご存知?


 普段なら便意を堪えるため体を捻ったり唸り声を上げたりして気を紛らわしますけれど、流石に入学式という周りに人がいる状況でそんなことをする勇気はありませんわ!


 というか私は先程から誰に話しかけてますの?便意のせいでテンションがおかしくなってますわねマズイですわ!


『――そして新たに我が学院に入学した四名の皆さん』


 まだそんな話をしてますの!?早く、早くしないと新入生の一人を学院から失いますわよ!


 え?なんでこっそり入学式を抜けてトイレに行かないのか不思議に思われて?


 学生エアプですの?入学式はそんなことできる空気でないことは常識ですのよ!


 あ、いけませんわ。肛門がヒクヒク痙攣を始めましたの。こうなるともういよいよ限界ですわね。


 でも私は最後まで諦めませんの!トイレに間に合うという希望がある限り、人は前に進めますのよ!


 学院長のお話が終わったくさいですわね!早くトイレに行かせてくださいまし!


『続きまして、学院歌斉唱』


 冗談じゃないですわ!便意を我慢しながらまともに歌をお歌いになれると思いまして?


 だ、だめですの……まだ漏らしては……こらえますの……いやしかし……


 歌わないわけにもいきませんので、私は足をガクガクいわせながら震える声で歌いましたわ。


 こ、これでプログラムは全て終了ですわね……


『――続いて、生徒指導の先生からのお話です』


 神はここで私に漏らせとおっしゃっているのですの?


 駄目ですわ。もう耐えきれませんわ。辞世の句を詠みますわ。


 さようなら、私の輝くはずだった楽しいお嬢様生活……


 肛門の隙間から何かが漏れ出ていくのを感じた私は天を仰ぎ見ますの。




 ブブブッ、プゥ~~~~~~!




 屁 で し た わ。


 確かに脱糞よりは恥ずかしさは数倍マシでしたが、恥ずかしいことに変わりはありませんわ!


 しかもそれがあまりにも大きな音でしたので周りからクスクスとお上品な笑い声が聞こえてきましたわ。


 次の瞬間、左脇の女生徒が倒れましたわ。


 私の屁の臭いで倒れたのでないのは自明の理でしたので私はすぐに呼吸を確認するとその場を離れたいという一心で彼女を保健室に運ぶ先生の手伝いをしましたわ。


 担架に彼女を乗せる手伝いを終えると私は元の場所に戻って一応、式の終わりを迎えることが出来ましたわ……


 その後、私はプーさんと呼ばれるようになり、五日ほど学校を休みましたわ。

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絶対絶命限界脱糞お嬢様 朝活四時 @maverick_arclight

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