名も無い彼は繰り返す

凛々時雨

第1話 何度目かの目覚め

物に触れる感覚がした。


背中側に冷たくて硬いものを感じた。


どうやら僕はコンクリートか何かで出来た地面に仰向けになっているようだ。


だんだんと意識がはっきりしてくる。


僕は寝起きのようなだるさを感じながらも重い瞼を薄く開くと、視界に眩しい光が飛び込んできた。


僕は反射的にしかめっ面になり目を細め勢いよく体を起こした。


首と肩が痛い。


どうやら僕はここで長い間眠っていた「らしい」。


「今回もロクな役じゃなさそうだ」


ため息が出る。


右手で首を揉みながら「それは置いといて」と視界に入った光の原因を探るように前方に目をやる。


目の前にあったのは木製の椅子と机。


眩しかったのは机についていた電灯のせいなのだと分かった。


「まずはここがどこか知る必要があるな。」


僕は腕と足がちゃんと動かせることを確認すると、よっこらせ、とゆっくりと立ち上がった。


身長は170後半くらい、体つきはそれなりにガッチリしている。


「よく動けそうな体という点においては不幸中の幸いって感じか。」


フンと鼻を鳴らす。


外からの音が一切しない。どうやら外は夜らしい。


半袖で快適ということは初夏といったところか。


僕は夜に街を彷徨くのはなんとなく嫌だったので椅子を机から離して座り、大人しく朝を迎えることにした。


「朝になったらもう"手遅れ"とかやめてくれよ…マジで。」


若干の焦りを含んだ声でそういうと静かに目を瞑る。


さっきまで寝ていたというのに不思議とすぐに眠れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

名も無い彼は繰り返す 凛々時雨 @rinrinkyokuto0113

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る