sequence 2【ひのやまのおおかみ】part1
アケボノ町と三津岡市内に発生する神かくし事件。
奇妙な化け物に取り憑かれた姉妹。
さらわれた妹の行方。
化け物と敵対する白いオオカミ。
そして−−山で出会った獣耳の不思議な少女の正体。
こんだけたくさんの非日常を突きつけられて、正気でいられる人間がいるだろうか。だから、夜遅くにふらふらおぼつかない足取りで家に帰った俺は、駆けつけていた近所の人たちに抱えられているアカネの姿を見たときに、全てが夢か幻覚なのだと思った。
「あっ!コウイチくんじゃないか!どこに行っていたんだ?!」
「アカネ!」
アカネは気を失っていた。会社帰りだと思われる近所のおじさんに抱えられている。現場では2、3人の人が取り囲んでいた。制服姿の学生もいる。買い物袋を持った近所のおばさんが俺に言った。
「アカネちゃんは道端で倒れていたのよ。玄関の鍵も空いてるし、花壇も荒らされているし…あなたもどろどろじゃない。何があったの…?」
「すみません、ちょっと俺も何がなんだか…。それよりもアカネは無事なんですか!?」
「怪我はなさそうだよ。さあ早く家に入れてあげて」
ありがとうございます−と言って、俺はアカネを抱えた。寝ているようだった。怪我はなさそうだ。中学生になったアカネは記憶よりもずっと重かった。記憶…、そうだ。俺は、8年前の震災の日もこうしてアカネを抱えて走ったことを思い出した。
−思い出したのね…。
「え?」
誰か、何か言ったか。俺は周囲を見回したが、心配そうな顔で俺を見守っているだけだ。急にキョロキョロし出した俺を不審そうにしている。あの声はまるで頭の中に響くような声だった。さっき出会った少女と話したときのような…いや。
周囲を取り囲む人々の向こう側、制服を着た女学生が立ち去るところだった。市内の中高一貫のお嬢様学校のセーラー服だ。暗くて顔はよく見えなかったが、そいつの薄気味悪い笑みを俺は見逃さなかった。
「コウイチくん、何をしてるんだ!早くアカネちゃんを」
「は、はい。すみません、ちょっと気が動転していて…」
セーラー服少女の姿はもうすでに闇に溶け込み見えなくなっていた。
俺はのちのち後悔することになるんだ。この時に、もしも俺が秋葉山で出会った”あいつ”の協力を得られていたら…全てはこの時、この場で終わっていたのかも知れない。
きっと俺が無知だったから、この遭遇がただの”始まり”になってしまったんだ。
To be Continued..
*この物語はフィクションです。実在の人物や団体とは一切関係がありませんので、本文中の表現をそのまま受け取ってしまう純粋ピュアな読者の方は、ご注意下さいませ。
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