1-12《冒険者ギルド》
ソフィアは今、鉄混じりの城壁の前に立っている。
―――ここに来るのは2回目だけど…相変わらず凄いなぁ…
鉱山都市エステル。元々はただの平地だったが、鉱山の採掘が盛んになり、そこらを中心として鉱山夫等が貿易拠点として建物を造り、そこを中心として栄えたのがエステルだ。
今や『メルアリード王国三大都市』となっており、常に人で賑やかだ。
「よしっ」
目の前の大きな建造物に、気押されるも覚悟を決めて城壁の門を通り抜けようとした時―――
「おい、嬢ちゃん。一回こっちに来てくれ」
「…?、はい、いいですけど…」
急になんだろうとソフィアは、首を傾げながらも話しかけた兵士然とした格好の男性のところまで歩いていく。
「嬢ちゃん、この門を潜る時は身分を証明できる物が必要なんだが…それは持っているのか?」
「え…?」
―――父さん…!?そんなのあるなら言ってよ!
ソフィア、早くも詰みである。
***
「それで…身分を証明するものは持ってないと」
「はい…」
「困ったなぁ…」
その兵士の男性は、困ったように頭を掻く。そしてソフィアの目を真剣に見つめてその男性は言う。
「嬢ちゃんは何処から来たんだ…?」
「えーっと…北の方からですね」
「北の方から…フィノールの村か」
「あ、はい…」
正確には何処の村にも街にも入っていない、別荘なのだがそこは今は言う必要はないだろうと、ソフィアはそう思案する。
「…まぁ、いいだろう。とりあえず仮入門という事にしておくから俺が今から言う質問に答えてくれ」
「はい」
そう言ってソフィアは、20分程の間、様々な事を聞かれたのであった。
***
「よし、これで問題はないな。あとはこの仮入門書を渡しておくからな。それを持って『冒険者ギルド』まで行くといい。そこでその仮入門書を渡せばギルドカードっていう身分証明書が貰えるからな」
「ありがとうございます!」
「…!お、おう。それじゃあな、嬢ちゃん。頑張れよ!」
「はい!」
その兵士の男性は、親切に詳しい事を教えてくれた。その事にソフィアは、笑みを浮かべお礼を言うと、明らかに動揺したように、その男性は一瞬思考が停止するが、すぐに意識を取り戻して言葉を返した。
その事にソフィアは、気付かずに元気に返事をして冒険者ギルドというところに向かい、門を潜った。
***
エステルの城門を抜けて30分程、ソフィアは目的の建物前にいた。
「ここが『冒険者ギルド』…」
目の前には大きな建物。扉の上には、剣と盾が交互に重なっている絵の看板が貼っている。その建物は、周りの建物と同じく木で出来た造りになっていて、何処か年季を感じさせる雰囲気だ。
ソフィアは、その見慣れない建物に興味を持ちながらも、すぐに気持ちを切り替えその建物の扉を引く。
今の時間帯は昼を少し過ぎたくらいだろうか。
カランカランと、扉に取り付けられたベルの音が辺りに響く。
その建物の中には屈強な戦士然とした男達の姿が沢山いる
―――――はずもなく。
ギルドの中はとても閑散としていた。決して誰もいないという訳ではないが、それでも2、3人程度。内部の広さと比べると、それでもスカスカに感じるだろう。
正面には受付用のカウンターがあり、それぞれ『受注受付』『完了受付』『素材受付』
と書かれており、それぞれの受付窓口に制服を着た女性が座っていた。
その中でも『受注受付』前に座っていた女性がソフィアに気付き、ニコっと微笑んだのでソフィアも微笑み返し近く。
「ようこそ、エステル冒険者ギルドへ!…冒険者登録でしょうか?」
「はい!お願いできますか?
「大丈夫ですよ!では少々お待ち下さいね」
そう言って受付の女性は、奥の部屋へと入っていった。
5分程経った頃、先程の受付の女性が戻ってきた。そして女性はカウンターのテーブルに、カードを置きソフィアに説明を始める。
「これはギルドカードと言って本人の身分を証明するのに使います。これを城門を通るときに提示すれば手間が掛からなくなるという訳ですね。そして冒険者とは、様々な依頼を受けて報酬を貰う職業ですね。冒険者ギルドは国にも縛られることはないので、基本的に冒険者は自由に活動することができます。」
女性の説明通り、冒険者は掲示板に張り出されている依頼を受け、その依頼を遂行することで報酬を貰う職業である。
主に魔物討伐の依頼、護衛依頼や薬品製作、薬草採取など、依頼には様々な種類がある。決して冒険者だから旅に出なくてはいけないわけではない。
名前で勘違いしがちだが、依頼自体はその依頼の受注確認が取れれば、どんな依頼も出すことができ受けることができるのだ。
そして女性は話を続ける。
「そしてギルドカードの右上に模様のような物が見えますよね?これはランクといって本人のギルドへの貢献度や、魔物討伐の際に貰える討伐ポイントが増えるほどランクが上がる仕組みです。それぞれ
因みに銅から銀のランクアップは、貢献度を上げることで自然と行うことができるが、銀から金以上のランクアップだと、昇格試験という物があり、試験官との対決で勝利するか、その能力を認められない限り昇格は出来ないのだ。
そして金以上は冒険者ギルドということもあり、戦闘能力が求められるので戦闘以外の腕がどんなに良くても、銀III以上は上がることはないのだ。
「大まかな説明はこのくらいでしょうか。他に何か質問はありますか?」
「いえ、ないです」
そうソフィアは答え、その女性は微笑み「では登録しましょうか」と紙を取り出そうとするが、そこでハッと気付き、
「そういえば入門の際に『仮入門書』を貰いましたか?それがあれば登録の手間を、省くことが出来るのですが…」
ソフィアはその言葉に、先程の兵士の男性から貰った仮入門書を取り出し、女性に渡す。
「これですよね?」
「確認致します。……はい、確認が取れましたのでこのまま入力しますね!」
それから、ソフィアはギルドカードを受け取り受付の女性にお礼を述べ、ギルドを後にする。
因みに先程の受付の女性は、メイジーという名で互いに名を名乗り合い、少しだけ親睦が深まった気がすると、ソフィアはしみじみと思っていた。
***
「あの嬢ちゃん、なんて
「ソフィアちゃん…あの年で
兵士の男性―――バードンは先程の美しい少女が持つ槍を思い出し、思わずそう言葉を漏らす。
同時にギルド内のメイジーも、あの時は全く気にして無かったが
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