第6話 似ても似つかないとは

たった一つ、彼女と共通点があった。

その一つ以外は、似ても似つかない二人だった。


わたくしは彼女との共通点を見つけたその時から、その喜びを、彼女にたくさんたくさん押し付けた。それだけわたくしは、たくさんの事を彼女と共有したくて仕方なかった。

初めから彼女が好きだった。同性なのに変かも知れないけれど、一目惚れだったわ。


彼女は最初は困った顔をされていたけれど、徐々に笑みを見せてくれるようになり、そして唯一無二の親友になった。

「貴女は、」

「はい?」

「いえ、なんでもないわ」

わたくしは出会った当初の、彼女の乱暴な言葉遣いが好きだった。

クラス替えで隣の席になった時にご挨拶をすると、かなり乱暴な口調で罵られた。どんな言葉だったかは忘れたけれど。なのに彼女はいつのまにか、わたくしと同じような、幼少期からお父様に強要された言葉遣いを真似ーーとは違うかもしれないけれどーーするようになった。

彼女の個性やらしさが薄れたようでほんのちょっぴり悲しかったけれど、彼女が一粒一粒バケツに水滴を落とすように、ほんの少しずつだけれど、自らの意思でわたくしに近付いているような気がして、背中がむずむずとかゆくなった。

「…ボルゾイたちに会いたいわ」

わたくしの家には、ボルゾイが何匹もいる。お父様が事業の傍らで、ボルゾイのブリーダーをされているので、その話をした数ヶ月前から、彼女は頻繁に自宅に遊びにきてくれるようになった。わたくしはそれがとてもとても嬉しかった。

「本当?それならば、また週末遊びにいらっしゃらない?」

「でも」

彼女ーー俯いた時に、長い睫毛が青白い肌の頬に影を落とし、わたくしは思わず見惚れる。

「毎週のように伺っても…いいのかしら」

「良いに決まってるわ!まめこさんがいらっしゃる事が悪い事な訳ないでしょう?」

時々彼女は、自分自身の存在意義を否定するような発言をぽつりと呟く時がある。


「まめこさん、好きよ」

「…わたくしも」


遠い昔の記憶。彼女と過ごした脆くて美しい少女時代を、どうにかして、綺麗なまま遺しておきたい。

そう思う事は許されるのかしら、まめこさん。

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