第49話 俺はバクーシャとヴァイシュナーに対峙する
そして 俺はバクーシャとヴァイシュナーに対峙する。
「その魔法は知っているぞ。とにかく、しつこく追い回してくるらしいな。また、その爆発の威力も半端でないらしいからな。だが、少しの衝撃で爆発するのはマイナス点だな」
バクーシャはそう云うと懐からカードのような物を取り出した。
「これぞ、多層障壁! その水弾の数以上の障壁を用意すればよいだけよ。広い面積の障壁は必要ないからな」
バクーシャとヴァイシュナーの周りには、カードが展開され、ふたりを中心にくるくる回っている。
確かに、貫通力がなく、わずかな衝撃で爆発するニトログリセリンに多大な魔力が必要な広い防御障壁は必要ない。
「くっ……」
何かないか……、なにか? あの多層障壁を貫通するだけの魔法は……。
「さらにこの多層障壁は攻撃にも使える!!」
二人の周りをまわっていたカードが一斉に俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。
俺の周りをまわっていたニトログリセリンを慌てて四方八方に飛ばしたが、カードに触れたニトログリセリンは数十カ所で大爆発を起こしたのだ。
その爆風から逃れるため、急いで遮断していた重力を最大重力に変えを急加速する。俺は音速のエレベーターのようにグランドクラックの深部まで落ちて行く。
その俺を追うように幾多のカードが俺の周りを舞っている。俺に水弾を撃たせないためか?! どうして止めを刺しに来ない? いや、時間稼ぎ? 奴らの意図が計れない。
だが、その思考が命取りだ。
「エム、このニトログリセリンは俺の無意識の願望によってその性質を変えるのか?」
エムに念話を飛ばす。
「何をしようとしているのか分かりませんが、そのニトログリセリンは京介の無意識の影響下にあります、です。おそらくは可能、です」
「なら、ニトログリセリンを結晶化させる」
「結晶化?です」
エムの問いには答えず意識を自分の奥底に沈めて行く。このグランドクラックの底はどこか異質だ。
自分の本質に簡単に近づける気がする。 俺自身が気が付いていない願望……。
過去が俺の中で蘇る。自分はどうしょうもないダメな人間で……。でもそれを認めるのがいやで周りのせいにして逃げて回って来た。本気さえ出せば……、いや、本気の出し方さえわからない。もし、本気を出してもなにも変わらなかったら……。
それが怖くて、理性という名の檻で、自分の本気を抑え込んでいた自分がいた。
そんな俺が、ヒュドラを倒し、メタルスノーマンを倒し、今ここに立っている。
――俺の本心は!! それらの経験を喰って最強になりたい!!
そう叫んで、一気に二人の魔族の所まで浮上する。
「目の色が変わったな。お前のこのグランドクラックの深淵を覗いたか?!」
「このグランドクラックで隔ててるもの……、分かったとしても、それは俺を止められない!!」
俺は再びニトログリセリンを数滴たらして空中に留まらせる。
「何度、やっても結果は変わらんぞ」
「それはどうかな? ニトログリセリン結晶化!!」
そう叫んで、両手を伸ばし浮かんでいる水滴を握りつぶす。
そして、一気に弾き飛ばす。
メタルスノーマンを喰った時に得た電磁気力。それを現代科学でスキル化した能力。更にスキル重力制御の重ね掛けだ。
「超電磁砲(レールがん)!!!!」
ローレンツ力を使って電磁加速された水弾。いや、今は結晶化して金属の性質を持っている。
そんな金属弾が、バクーシャとヴァイシュナーに電磁加速で打ち出された弾丸が重力加速して、多重障壁をぶち破り迫る。
「そんな!! バカな!!」
それが彼らの最後の言葉だった。
大爆発とともに砕け散った二つの影
傷だらけの俺を気遣ってエムたちが近づいて来た。
もちろん、重力障壁は解除している。そのまま近づかれると俺は銀河の果てまで飛ばされちゃうからね。
「大丈夫ですか?」
「ああっ、俺は大丈夫。それより充希は?」
「はい、今のところ互角かと……。相変わらず4人の残像がそれぞれの繰り出す技を紙一重で避けていて、どちらも致命傷には至ってません、です」
エムが俺の問いに答えてくれた。まあ、あの二人の戦いを目で追えるのはエムしかいない。
「そうか、もう魔力もそんなに残ってないだろ。だったら、二人とも最終奥義を出すタイミングを計りだすな」
「「最終奥義?!」」
「そう、レベル100になれば使える技。魔王は過去の充希を殺す技。そして充希は未来の魔王を殺す技。どちらも技も現在の二人には躱すことが出来ない必中の技だ」
「どうして、そんなことを知っているのですか?」
「俺の持っているラノベに書いてあった。この世界の未来が……」
そう、俺がこの世界に転移した時、あの研究室にあった研究書類は全てラノベに変わっていた。そのラノベは冴えない男の恋愛物、学校一の美少女にアイドルに女優に愛されるありえない妄想記録。これが俺の願望だと突きつけられてちょっと凹んでしまったが、その中の一冊にだけ毛色の違う予言書としてのストーリーがあった。魔王と勇者が異世界の未来を掛けて戦う物語だ。
もちろん、最初は架空の物語だと思っていた。このポリーティア王国の歴史が単一国家であり続けたことを知るまでは……。これは悲劇なのか? 茶番なのか? 予定調和なのか?
。
「その魔法は知っているぞ。とにかく、しつこく追い回してくるらしいな。また、その爆発の威力も半端でないらしいからな。だが、少しの衝撃で爆発するのはマイナス点だな」
バクーシャはそう云うと懐からカードのような物を取り出した。
「これぞ、多層障壁! その水弾の数以上の障壁を用意すればよいだけよ。広い面積の障壁は必要ないからな」
バクーシャとヴァイシュナーの周りには、カードが展開され、ふたりを中心にくるくる回っている。
確かに、貫通力がなく、わずかな衝撃で爆発するニトログリセリンに多大な魔力が必要な広い防御障壁は必要ない。
「くっ……」
何かないか……、なにか? あの多層障壁を貫通するだけの魔法は……。
「さらにこの多層障壁は攻撃にも使える!!」
二人の周りをまわっていたカードが一斉に俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。
俺の周りをまわっていたニトログリセリンを慌てて四方八方に飛ばしたが、カードに触れたニトログリセリンは数十カ所で大爆発を起こしたのだ。
その爆風から逃れるため、急いで遮断していた重力を最大重力に変えを急加速する。俺は音速のエレベーターのようにグランドクラックの深部まで落ちて行く。
その俺を追うように幾多のカードが俺の周りを舞っている。俺に水弾を撃たせないためか?! どうして止めを刺しに来ない? いや、時間稼ぎ? 奴らの意図が計れない。
だが、その思考が命取りだ。
「エム、このニトログリセリンは俺の無意識の願望によってその性質を変えるのか?」
エムに念話を飛ばす。
「何をしようとしているのか分かりませんが、そのニトログリセリンは京介の無意識の影響下にあります、です。おそらくは可能、です」
「なら、ニトログリセリンを結晶化させる」
「結晶化?です」
エムの問いには答えず意識を自分の奥底に沈めて行く。このグランドクラックの底はどこか異質だ。
自分の本質に簡単に近づける気がする。 俺自身が気が付いていない願望……。
過去が俺の中で蘇る。自分はどうしょうもないダメな人間で……。でもそれを認めるのがいやで周りのせいにして逃げて回って来た。本気さえ出せば……、いや、本気の出し方さえわからない。もし、本気を出してもなにも変わらなかったら……。
それが怖くて、理性という名の檻で、自分の本気を抑え込んでいた自分がいた。
そんな俺が、ヒュドラを倒し、メタルスノーマンを倒し、今ここに立っている。
――俺の本心は!! それらの経験を喰って最強になりたい!!
そう叫んで、一気に二人の魔族の所まで浮上する。
「目の色が変わったな。お前のこのグランドクラックの深淵を覗いたか?!」
「このグランドクラックで隔ててるもの……、分かったとしても、それは俺を止められない!!」
俺は再びニトログリセリンを数滴たらして空中に留まらせる。
「何度、やっても結果は変わらんぞ」
「それはどうかな? ニトログリセリン結晶化!!」
そう叫んで、両手を伸ばし浮かんでいる水滴を握りつぶす。
そして、一気に弾き飛ばす。
メタルスノーマンを喰った時に得た電磁気力。それを現代科学でスキル化した能力。更にスキル重力制御の重ね掛けだ。
「超電磁砲(レールがん)!!!!」
ローレンツ力を使って電磁加速された水弾。いや、今は結晶化して金属の性質を持っている。
そんな金属弾が、バクーシャとヴァイシュナーに電磁加速で打ち出された弾丸が重力加速して、多重障壁をぶち破り迫る。
「そんな!! バカな!!」
それが彼らの最後の言葉だった。
大爆発とともに砕け散った二つの影
傷だらけの俺を気遣ってエムたちが近づいて来た。
もちろん、重力障壁は解除している。そのまま近づかれると俺は銀河の果てまで飛ばされちゃうからね。
「大丈夫ですか?」
「ああっ、俺は大丈夫。それより充希は?」
「はい、今のところ互角かと……。相変わらず4人の残像がそれぞれの繰り出す技を紙一重で避けていて、どちらも致命傷には至ってません、です」
エムが俺の問いに答えてくれた。まあ、あの二人の戦いを目で追えるのはエムしかいない。
「そうか、もう魔力もそんなに残ってないだろ。だったら、二人とも最終奥義を出すタイミングを計りだすな」
「「最終奥義?!」」
「そう、レベル100になれば使える技。魔王は過去の充希を殺す技。そして充希は未来の魔王を殺す技。どちらも技も現在の二人には躱すことが出来ない必中の技だ」
「どうして、そんなことを知っているのですか?」
「俺の持っているラノベに書いてあった。この世界の未来が……」
そう、俺がこの世界に転移した時、あの研究室にあった研究書類は全てラノベに変わっていた。そのラノベは冴えない男の恋愛物、学校一の美少女にアイドルに女優に愛されるありえない妄想記録。これが俺の願望だと突きつけられてちょっと凹んでしまったが、その中の一冊にだけ毛色の違う予言書としてのストーリーがあった。魔王と勇者が異世界の未来を掛けて戦う物語だ。
もちろん、最初は架空の物語だと思っていた。このポリーティア王国の歴史が単一国家であり続けたことを知るまでは……。これは悲劇なのか? 茶番なのか? 予定調和なのか?
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