第43話 ちょっと、待ってえなー!!
「ちょっと、待ってえなー!!」
充希は京介のことをもっと知りたくなった。きっと同じ世界から転生者だ。それに聞きたいこともまだまだ沢山ある。どうやってそんなに強くなったのか?とか
しかし、ラノべをあまり読まない充希は知らなかった。大体、転生者もので巻き込まれ型の主人公は、主役の勇者に対して非協力的なのはテンプレであること。我が道を行くアウトローがカッコいいと思っていることなどなど。
まあ、そういう訳で、充希の呼びかけに振り返ることもなく、エムたちを連れて飛んでいってしまった。
がっかりして、京介たちを見送る充希はキャロラインたちの元に戻って来た。
そして気が緩んだのか、そこに着いた途端、足元をふらつかせ、リオンに支えてもらってやっと立っていられるのだ。充希の体力は限界に近い。
「あかん。もうフラフラや」
そう云うと、充希はそのままリオンの腕の中で眠ってしまった。
「充希様は力尽きて寝てしまわれたぞ」
「まあ、しっかりしているようでも、まだまだ子供ですからね。それよりも充希と話をしていた男……、何者なんでしょう。魔王の四天王をやすやすと倒し、見たことも無い魔法を使う方でしたね」
そんなことをいうキャロラインの目はハートマークになっていた。
「あのー、キャロライン様」
そんな心ここに在らずのキャロラインを呼び戻したのはリオンの一言だ。
「確かに、何者なんでしょうな? あれも充希と同じ召喚された勇者ですかな?」
「いえ、召喚される勇者は一人のみです。過去にそのような前例はありません。文献では魔王と勇者の一騎打ち。その最後を知る者はいません。その二人の戦った跡がグランドクラックと言われています」
「しかし、あの者、勇者以上の力を持っているのは間違いありません。彼が人族側についてくれれば……(わたしが女王になる目はまだある)」
「ええっ、今までと違った結果になるかも……。悲劇が繰り返されないためにも……。彼が何者かは充希が、気が付いてからゆっくり聞きましょう。今日はダンジョンの攻略は中止にして王宮に帰りましょう」
「ははっ、――騎士団!! 本日の演習は中止だ。王宮に帰るぞ」
充希をお姫様抱っこしたリオンとキャロライン王女を囲むように騎士団が隊列を組み王都に向かったのだった。
*************
「この辺で良いか」
俺は重力コントロールを解き、エムたちと地面に降りた。その先には城壁に囲まれた王都が見える。
「王都に行くんですか?」
「ああっ、人らしい生活は人の集まるところでないとできないからな」
「京介はボッチでいるのが好きだと思っていたんですが」
「エムさん、勘違いしているようですけど……、どんなに人を嫌っていようが、人に失望していようが、人は人の中でしか生きて行けないんだよ」
「なんか言葉が重たいんですけど、現状維持さえおぼつかない人生だったはず、です」
「辛辣だな。不満があっても、だったら一人で生きて行けよって言われるとなにも言い返せないんだよ。結局」
「あの~、何を言っているのですか? 京介さんってすごく強くて、怖いもんなんてないないですよ。どんな問題が起こっても力でねじ伏せられるでしょ?」
「マリーさん。この世界ではね。京介が生きていた世界では超弱者で底辺の人種ですよ。自分を殺すことでしか社会に適合できなかったですからね」
「そんなバカな!」
「エムの言う通りなんだ。そんな訳で町を目指しているんだ」
「意外……、でも王都に入るためには身分証がいるよ。またはよそから来たのなら通行証とか」
「その辺はなんとかならないかな?」
「お金を払えばなんとか」
「エムお金ってあるか?」
「ないですね……。さっきの勇者に貰っとけばよかったのに……、命を救ったお代だって」
「そんなかっこ悪いこと……、あっそうだ! サリー、その通行証ってどれぐらいかかるんだ? サリーだってエルフの村から王都にでてきたんだろ?
「あたしの時は、そうだな。商売するわけじゃないし、冒険者になるために王都に来たっていえば、5千ポリーだったと思います」
「お金の単価は日本とは違うとは思っていたけど、ポリーね……」
「ポリーティア王国だからポリー。京介はそれさえ知らない。あなたはどんな世界から来たと云うの?」
「……」
「歩いてはいけないとても遠い世界から、です」
無言の俺に変わってエムがマリーに答えていた。
王都の門では、サリーの言った通り、5000ポリーを門番に払って王都にいれてもらった。結局お金を持っていなかったのでサリーとマリーから借りて支払った。サリーもマリーも命を救ってもらったお礼って言ったけど、ギルドに冒険者登録して身分証を発行してもらえば、その身分証を門番に提示すれば、保証金の5000ポリーは返してもらえるらしい。
それに冒険者ギルドでは魔物の素材も買い取ってもらえるらしいのだ。
王都に入って最初にいったのが、王都ポリーティムのギルド、ポリーティム支部だ。
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