第44話 サリーの案内で大通りを行くと
サリーの案内で大通りを行くと、大通りの両側には店が立ち並び、広場には露店も出てとても賑わっている感じだ。仕事場とマンションの往復だった俺は久しぶりに知らない町にきて、ワクワクする気持ちを抑えきれないでした。
この感覚、何年ぶりだろう。修学旅行以来か? そう言えば俺の容姿は18歳ごろになっているんだった。
「どうですか? ポリーティムは?」
先に進むサリーとその横に並び、興味深そうにキョロキョロしながら歩いているエムを見ながら、俺の横に並んでいるマリーが尋ねてきた。
「エムと一緒さ。物珍しさで目が回りそうだ」
「そうですか? 余りキョロキョロしているとお上りさんと思われて犯罪に巻き込まれますよ。変わった格好をしているので王都の人じゃないからすぐわかりますし」
「そう言えば、ミスチルの鎧の下はジャージだったけ」
「ミスチルの鎧を着た冒険者に因縁をつけてくる人もいないか。かなり高価な物でそれなりの実力がある人しか着れませんものね」
そういうものなのかな? 確かに前の世界でも見た目は重要だったけど……。
目の前にギルドと書かれた看板を掲げた3階建てぐらいの大きな石造りの建物が見えて来た。この大通りに在ってもかなり目立つ建物だ。
サリーとマリーがギルドの中に先に入り、俺とエムを受付へと案内してくれる。
入った瞬間、剣呑な視線を受けたが、他の冒険者に絡まれるというテンプレイベントも発生しない。まあ、それでも注目を集まる中、サリーに声を掛けて来た受付嬢の所にいく。
「サリー、それにマリー、今日の首尾はどうでした。デビルシープの毛皮持ってきたんでしょ。それにしては、ケントとクランが居ないようだけど?」
「ケントとクランはダンジョンでマッドレミングの死の行軍が始まって、それから私たちを助けるために犠牲に……」
「マッドレミングの死の行軍だと!!」
「どの方角に向かっているんだ?!」
「まさか王都に向かってないよな?!」
マッドレミングの死の行進が始まったと聞いて、殺気だったギルド内だったが、更にサリーが続けた言葉に、周りの冒険者は安どしたものの、なんとも判断が付かないという感じで俺の方を見ている。
「マッドレミングの死の行軍はダンジョンの入り口に居た勇者が、ダンジョンを塞ぐことで食い止めました。それで、その行軍を引き起こしたのが、魔王の四天王の一人、ドゥリタラーという魔族だったんです」
「魔族だって!!」
「グランドクラックを超えて、こちらに来ていると言うのか?!」
「それで、その魔族はどうなったんだ?」
「魔族の四天王が現れたんで、この辺りの魔物が活性化してのか?! スタンビートが起こるぞ!!」
不安から声がさらに大きくなる冒険者たち。もはや怒号といっていい。
「その魔族を倒したのが、勇者とこの京介さんなんです」
マリーが身振り手振りでその時の様子を冒険者たちに話している。
とまあ、ここで俺に視線が集まっているわけだが……。
「えーっと、そちらの方は……?」
視線を集める俺を知っているらしいサリーに受付嬢はおずおずと尋ねている。
「京介は、マッドレミングの死の行進から私たちを助けてくれたんです。とにかく強いんです。人族ではあり得ないぐらい」
「そこのやさ男が? 魔族を? 」
サリーの言葉に疑いの眼を向けてくる。その瞳には憐みさえ浮かんでいる。
俺はそれらの疑いの眼を無視して受付嬢の前に出た。別に注目されたいわけでも、自慢したいわけでもない。正直、魔族と人族の戦いに積極的に関わりたいわけではないのだ。
戦力として勘定されるより、疑われている方がましなのだ。
それよりも、この町で生活するためにはするべきことがある。
「魔石の買い取りをお願いしたい」
そう言って、俺は収納魔法から、ヒュドラの魔石やメタルスノーマンの魔石、その他回収できた魔石を受付のテーブルの上に広げた。
ひと際目を引くのが、一抱えもある黄金色の魔石だ。
「こ、この魔石は?!」
「ああっ、なんて言ったけ、ダンジョンの最下層にいた八つ頭の魔物、ヒュドラだっけ? の魔石だ。その横の3つはメタルスノーマン」
「ま、まじですか?」
口をポカーンと開け。目を見開いている受付のお嬢さんは言葉に素が出てしまっている。
「ちょ、ちょっとお待ちください。か、鑑定しますので……」
お譲さんが慌てて、裏に人を呼びに行ってしまった。おそらく鑑定魔法の使える人を連れてくるのだろ。周りの冒険者たちもざわついている。
「まさか、本物か?」
「そんなわけないだろう。しかし、あんな大きくてきれいな魔石なんぞ見たことがねえ」
「本物なら、あいつはドラゴンスレイヤーだぞ」
「確かにあの装備、よく見るとメタルスノーマンのドロップアイテムのミスチルの鎧じゃないのか?」
「まさか……、国宝級の鎧だぞ」
「ああっ、俺も本物は見たことがない」
「そんな、騎士団と魔術師団が数百人いてやっと討伐できるって言われているメタルスノーマンの三位一体をたった一人で……」
「いや、それよりも勇者の持つ神武の剣でしか倒すことが出来ないと言われているヒュドラだぞ。一体どうやって倒したんだ?!」
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