第13話  バッシーーーーン!!!!

 バッシーーーーン!!!!


「このバカ!! こんなダンジョンの序盤でMPを大量消費して!!です。それにここは地下1000メートルの洞窟です。火を燃やすと酸素不足になってしまいます、です」

 どこからか出したハリセンで頭を目一杯はたかれた。

 そのおかげで、他のサイクロプスは横穴に逃げ込んでしまった。

「だって、魔物は全部退治しとかないと……」

「このダンジョンには、他にも冒険者がいるの、です。依頼も受けていない京介さんが根こそぎ魔物を退治すると、他の冒険者さんは商売あがったりなの、です。それにこんなところで火柱を何本も作られると一酸化中毒になります、です」

 あっ、そうか! 色々考えることがあるんだ。知識と情報、生き残るためには一番重要なことなんだよね。ならば、情報源からの声に耳を澄ませなければ……。

 チロロン、来た来た。

「サイクロプスジェネラルの討伐を確認しました」

「スキルが83になりました」

「スキル毒物耐性を獲得しました。 毒物耐性のレベルが2になりました」


 あれ、もう終わったよ。あの赤黒い奴は、サイクロプスの上位種のジェネラルとかいうやつで、群れを統制する立場らしい。それに、毒性耐性と言うのは一酸化炭素中毒になりかけたことで得たらしい。本当に調子に乗っていると危ない所だった。


「エムさん、奴らが逃げて行った横穴の先って、ひょっとして・……」

「イエス。それぞれの横穴の先は同一種族の魔物のコロニーになっています、です」

「そうか、コロニーか……。うかつに迷い込めば、統制された数多くの魔物と戦うことになると」

「イエス、です。無駄にMPとHPを消耗し、良くて逃げ出し、悪ければそこで力尽きて死ぬことになる、です。幸い私たちはダンジョンを遡ってきていますから、そう言った誘導トラップに引っかかりません、です」


「なるほどね。迷路は出口から攻略するに限るよね。それで、あのサイクロプスには魔石が無いのかな? システムからの応答にはなかったんだけど……」

「在りますよ。ちゃんと魔石は持っていきます。何せゼニになります、です。まず魔石は魔物の魔力の結晶です。体内を巡る魔力が死ぬことによって集まり結晶化します、です。それに対して核と言うのは、魔物の心臓に当たります、です。核を破壊しなくても魔物は死にますが、核が破壊されることで、魔物の形づくっている力が弱まり、姿を形作ることが出来なく無くなって、すぐに崩壊を始めるの、です」

「だから、オーガの肉を食(くら)うことが出来るわけだ」

「イエス。お互いのコロニーは不可侵ですが、この洞窟はいわゆる共有部分、あんな感じで縄張り争いや生存競争がよく起こります、です」

「ふーん。ダンジョンって魔物の王国だね。これからも群れに出会う可能性が高いわけだ」

「イエス、です」

 やれやれ、火炎スキル以外の殲滅スキルを持たない俺にはここからはハードモードになっていきそうだ。

 なるほどなと思いながら更に洞窟を進んでいく。洞窟内では魔物同志が捕食し合ったり、上位の魔物から逃げ惑う魔物と遭遇した。

 しかし、どの魔物も俺たちを見ると争いをやめ、襲い掛かってくるのだ。


 人間はごちそうなのか?

 そんなことを考えながら、指先から焦点距離を最大にして、ビームを横薙ぎに放つ。ビームは光の刃になり、ビームの通った後を真っ二つに切り裂いていく。そして、打ち漏らした魔物が飛び掛かってくるのをレーザーブレードで片付けていく。

 ビームは切れ味が良すぎるのと、切れ口が焼き切れることで、ダメージが通らず不満に思ったが、反って魔物の返り血をあまり浴びなくていいことに気が付いた。

 サクサクと魔物を倒し、うまい具合に核を破壊した魔物の魔石だけ回収してアイテムボックスに放り込んでいく。

 魔物の死骸はそのまま撃ち捨てておいても、死肉は他の魔物が奇麗に回収してるのだろう。さっきギガアントの集団と出くわしたし、この共有部分の洞窟は、魔物同志が殺し合う割にはとてもきれいだ。

 まあ、あの蟻の魔物がダンジョンの掃除屋を一手に引き受けているのだろう。


 それにしても、立て続けに魔物の群れにブチ当たる。ダンジョンの下層部では群れで人を襲う魔物がうようよしている。さっき挙げたギガアントに狼の魔物のフェンリル、オーガにサイクロプスに鷲の上半身に獅子の下半身を持つグリフォンなど、通常のファンタジーでは上位種にあたる魔物たちが群れで襲ってくるのだ。

 もちろんこの辺りのはチート能力で瞬殺するのがお約束だ。

 気が付いたらレベルも90になっていた。

 少しふらつく足元で先を急ぐ。こんなところでグズグズしていたらそのうちビームの多用でMP切れを起こしてしまう。


「京介さん、足元がふらついてますよ? です」

「うるせえ、ちいとばかり疲れたんだ」

「だったら、ビタミン剤を飲めばいいんです。 アイテムボックスに入っているはずです」

「ビタミン剤?」

 確かにあの部屋にあった薬品や薬剤は一通り持ってきたけど……。そう考えてアイテムボックスを開いて手を突っ込む。考えた物が手に取れるので、四次元ポケットと同じぐらい優秀だ。

 浮かび上がった魔法陣に手を突っ込み、手に触れたものを引っ張り出す。これは錠剤だな。できれば栄養ドリンクの方が良かった。だって飲み込むには水が必要なんだもの……。

「この先にダンジョンのオアシスがあります、です。そこで少し休憩しましょう、です」

「オアシス? そんなものがあるんだ」

「ええ、某小説の影響かな、です。でも安全地帯じゃないので気を付けてくださいです」


 助かった。掟破りの逆踏破は序盤に強力な魔物が立て続けに出てきて体がもたないと思っていたんだ。ちゃんと主人公が死なない程度にメリハリが付けられているんだ。

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