第11話 まず電磁気力、電気と磁力の力だ

 まず電磁気力、電気と磁力の力だ。それから弱い力、これは原子核を分離する力。まあ核分裂なんかをイメージしたんだけど少し違うか?それに強い力、これは素粒子を結び付けて原子核を作る力と思えばいい。最後に重力、お互いが引き付け合う力なんだけど、計算上よりこの重力の力が他の力に比べて弱いらしい。

 それで、この重力を発生させるグラビトンという素粒子は、超ひも理論でいうひもがひっついているDブレーンから飛び出して、別のDブレーンにひっついていくという仮説が成り立つらしい。だから、他の力に比べて減少しているのだと言えるらしいのだが……。

Dブレーンって世界を構成する膜だったろ。すなわち、グラビトンはパラレルワールドを唯一行き来できる物資なんだ。


 アメリカのヘルシオン研究所は電子を高速でぶつけて、そのグラビトンが飛び出る状態を観察する実験を行っている研究所なのだそうだ。もっとも、グラビトンが飛び出した状態がどんなものか分からないから、観察できるかどうかも分からないらしい。

 不毛な実験を膨大な費用を掛けてやる国だよな~、アメリカって国は……。


 それで結論から言うと、この世界と俺がいた病院の研究室は、このグラビトンが頻繁に行き来して、元々、緩やかな繋がりを持っていたらしい。まあ、グリセリンのシンクロシティの都市伝説があるくらいだし、元々創造主も違うわけ(この世界は集合的無意識が、あの研究室は俺の潜在的無意識が作り出した)だからそんなこともあるだろうということだ。

 グラビトンが頻繁に行き来していたため、俺のスキルに重力制御ができたのか、元々重力を制御して、俺の潜在的無意識がこの世界と結び付けたのかは不明だけど、それが顕在化してスキルとなったようなのだ。


「あの球体が電磁気力で結びついていると気が付いて、ひょっとしたら、京介さんは重力を操るスキルを持っているかも知れないと閃きました、です」

「エムさん。あれって単なる閃きですか!! もし、そのスキルがなかったらどうするんですか?!」

「いえ、ご都合主義の賜物です、です」

 はあっ、ご都合主義ね。いや、ラノベを読んでいて、その感想は何度も持ったことがあるんですけど……。この辺でこれを読んでいる人のモチベが駄々下がっているのが目に浮かぶんですけど……。


「さあ、先に進みましょう、です。まだ先は長い、です!」



 そうですね。あまり考えるより話を進めた方が無難ですよね。

「えっと、ちょっと待って」

 せっかく出て来た魔石を拾いアイテムボックスに収納する。それからドロップアイテムを装備する。ミスチルの鎧を装着すると、形が変わり俺のサイズぴったりになった。それにこのメリケンサック、一撃で岩さえ砕きそうだ。カイザーナックルと命名しよう。

「ジャージから、ずいぶんと冒険者らしくなりました、です」

「そう? せっかく異世界に来たんだから、恰好から入りたいしね。エムさんのナース服も、街に出たら、それらしい恰好の服を買いそろえましょう」

「えーっと、このままでいいです。京介さんの好みだから……、です」

 なぜか、顔をまっかに染めながら体をくねくねとしているエム。

 単にコスプレが好きなだけで、病院ならナース服と思っただけで、異世界なら冒険者の恰好の方が素敵だと思う。へそ出しのビキニアーマーなんて最高じゃないかな? もっともそんなことは口にはしない。

「でも、ナース服だと体を守れないし、怪我とかしたら大変ですから」

「――うん! ですよね!! 」

 俺が怪我を心配していることがよほど嬉しかったのか、最後のですを忘れている。もっともあの体術ならかなりの攻撃力がないと当たらないと思う。


「それじゃあ、先に進みましょう! どこかに転移魔法陣でもあればいいんですが?です」


 そういって、俺の前に出て、ダンジョンの中を進んでいく。


 ダンジョンの通路は先ほどと変わって大分広くなっている。横幅二〇メートル、高さ五メートルくらいだ。そしてその理由は通路のところどころに横穴があるためだ。

 最初、この横穴は何だと思っていたんだけど、エムが「寄り道しても腹が減るだけ、です」というので、地上に向かうためサクサクまっすぐに歩いている。


 前方約三〇〇メートルの所に、身長二メートル以上角の生えた人型のものが視えた。

「あれはオーガ!です」

 エムの声に納得した。あれがオーガ……。こん棒を肩に担いでこちらに向かってくる様はまさに鬼だ。

 俺たちは歩みを止め、オーガの出方を伺う。っとその時、横穴から、身長三メートル、鎧のような皮膚をした一つ目かつ一角の魔物の群れが飛び出してきた。

「サイクロプス?! 群れに出くわすなんて……!! です」

 サイクロプスと呼ばれた魔物は巨大な斧を持ち、あっという間にオーガを蹂躙している。巨大な斧でオーガの五体をバラバラに引きちぎり、それらをむさぼり食っている。サイクロプスの群れは返り血を浴び、周りには血の池が広がっている。


「うえーっ!!」

 思わす顔を背けて、その場で吐いた俺。エムさんが背中を優しくなでてくれる。熱くなった食道が少し癒される。エムさんっていい人だ。

「大丈夫?! です」

 その聞き方、おかしいだろう。「いや、大丈夫じゃないから」そう言い返すとしたところで、脳内にいつもの音が鳴り響いた。

「スキルグロ耐性がレベル6になりました」

 その声を聴いた途端、俺の心が軽くなった。これがスキルグロ耐性の効果か。

 今、目の前ではサイクロプスがオーガのはらわたを引きずり出し、耳まで裂けた口元から腸を垂らしながら咀嚼しているのだ。

 実際にリアルで見ると、恐怖と気持ち悪さで何も考えられなくなっていた。危なかった。でも今はスキルのおかげで、この光景も平然と見ていられる。


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