第10話 ちっ、攻撃は最大の防御だ!

 ちっ、攻撃は最大の防御だ! 

 雪だるまの頭めがけて、回し蹴りを放つ。

 あれ、なんと雪だるまは回し蹴りを、胴体に沿うように頭を転がし避けたのだ。

 ――?!

 なんなんだ?! こいつの関節はどうなっている?

「エムさん、こいつはどうやったら倒せるんだ?!」

「今の回避行動を見るに、球体同志は電磁気力による結合ですね。電撃を放てば一発でバラバラ、です」

 相変わらず華麗にメタルスノーマンの攻撃を躱しながら俺にアドバイスをくれるんだが……。

「俺、電撃系のスキルは持ってないよ!!」

「なんと! 京介さんは役立たず、です。うーん、電磁気力ですか……。電磁気力、力……」

 なにか、考え込んでいるエム。そのエムの頭の上に電球が光ったように見えた。なんて古典的な閃き……。

「京介さん。固有スキルです。重力制御のスキルを使うんです」

「はーっ、そんなのシステムからの通信にはなかったけど……」

「京介さんが、この世界に転移した時に持っているはずなん、です。説明は後、です」

「分かった。やってみる」

「スキル、重力制御」

 そう口ずさみ、3体のメタルスノーマンに向かって右手を伸ばし、メタルスノーマンを押さえつけるように手を下げて行く。

 すると、メタルスノーマンは、上から何かに押しつぶされるように、地面に這いつくばった姿勢で動きを止めていた。

 重力を制御できるなんて?! 動けないのならこっちのものだ。

 俺はレーザーブレードを逆手に持ち替え、刃の部分が針の先のように細くとがったイメージをする。

 そして動けなくなったメタルスノーマンの頭に、中心に向かって入射する一点にレーザーブレードを突き刺したのだ。

 レーザーブレードは反射することなく、ズブズブと中心に向かって入っていく。そして、中心にあるコアを破壊した。それと同時に赤く光っていた目と思われる部分の光が消え、粒砂になって形が崩れていき、やがて風に吹き散らかされるに消えていった。

 それを3回繰り返すことで、三体のメタルスノーマンをついに倒したのだった。

 そして、メタルスノーマンがいた場所には、ミスチル製の胸当て、肘当て、脛当て、メリケンサックが転がっている。それと魔石と……。


 そんな時、頭の中にチロロンという電子音が鳴り響いた。

「レベルが80に進化しました」

「固有スキル重力制御が開放されました。スキル重力制御のレベルが6になりました」

「スキル俊敏を取得しました。スキル俊敏のレベルが5になりました」

「ドロップアイテム、ミスチルの鎧を取得しました」

「メタルスノーマンの魔石(3)を取得しました」

 

 どうやら、メタルスノーマンを倒したことで、レベルとスキルを獲得したみたいだ。レベルがあまり上がらなかったのは、低いレベルなら少しの経験値でレベルが上がるが、高レベルになると多くの経験値が必要になるからだろう。

 これで防御力も上がるぞ。

 しかし、どちらかと云えば、回復系のスキルが欲しかった。左肩は折れたままだし、体中に打撲があり、HPとMPが下がったことで、その痛みは益々ひどくなってくる。


「京介さん、やりましたね。ふふっ、アイテムボックスから包帯とマキロンを出してください。私が手当します、です」

 エムが満面の笑みを浮かべて俺の方にやって来た。それでアイテムボックスから包帯とマキロンを出してエムに渡した。

 エムは俺のシャツを脱がせると、肩の部分にテーピングを捲くように包帯を巻いていく。

 ち、近いです。それに何かいい匂いがします。俺に被さるように包帯を巻くので、胸が背中に押し付けられ、自然と意識が背中に集中してしまいます。あと、赤くなって腫れた打撲部分にはマキロンをシュシュと吹きかけている。これは消毒液の匂いじゃない? 何かエムと同じようないい匂いがする!

 そんなふうにエムのやさしさを堪能していると、

「はい出来ました。腕を動かしてみてください、です」

 エムが耳をぴくぴくさせながら、俺の瞳を覗き込んでくる。

「いや、無理でしょ。これきっと折れてるから」

 目を逸らしながら、それでもエムが言うんだからと腕を動かすと、腕を回すことが出来る。それだけじゃない。痛みをほとんど感じなくなっているのだ。絶対折れていたはずなのに?

 チロロン~。

「固有スキル、ヒーリングが開放されました。スキルヒーリングのレベルが5になりました」

 へっ、固有スキル、ヒーリング?! 喉から手が出るほど欲しかった回復系のスキルか。

「この包帯や治療薬は、京介さんの潜在的無意識が生み出した研究室にあった物なの、です。当然、異世界の冒険には回復魔法が欠かせません。ラノベを読み倒している京介さんが潜在的無意識に刷り込んでないはずはないじゃないですか? です」

「そっか……、あの病棟の部屋の中は俺に都合のいいスキルが転がっていたわけか……」

 確かにラノベに出てくるチートたちが使う現代知識を使った魔法の類って、ド〇えもんの四次元ポケットの域を超えていないような気が……。あの部屋は四次元ポケットのようなものか? だから、そこにあった応急処置的な道具が俺の願望で、スキル、ヒーリングの回復魔法具になったのは分かる。

 ところで、エムさん。この薬の中に大人のドラ〇もん的な薬ってないですかね。

 テロリロリン、どこでも発情期みたいな? プラスいつでもが在ればなおのこと都合が良い。

 俺がそう思ってエムの方を見ると、エムはなぜか固まっていた。


 違う違う、今考えるところはそこじゃない。なぜ、重力制御が俺の固有スキルになっているのかということだ。後で説明すると言ってたし……。

 俺の考えを読むように、ほっとした顔のエムが答えた。

「これはさっき出て来たヘルシオン研究所の実験の内容の話になります、です」


 そう言って、また難しい話を聞かされたんだが、俺が理解した範囲で話をすると、物質の間には四つの力が存在するのはご存じだろうか? もちろん俺は知らなかったんだけど……。


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