第2話 自己紹介ふうに自分の境遇を紹介している間に
自己紹介ふうに自分の境遇を紹介している間に、次の進展があった。
ドッ、ドッドンーーーーーン!!!!!!
大きな揺れを伴いやっとエレベーターは終点についてようだ。かっこよく着地と言うわけにはいかず、バランスを崩して尻もちをついてしまったんだ。
それにしても、一体どれだけ落ちて来たんだろう? 体感では2、3分位か? そうなるとエレベーターは分速500メートルくらいだから、1000メートル以上落ちたことになるのか?
俺の人生、詰んだ。いや、大地震で生き埋めって、それが1000メートル以上地下深くって、誰が俺を掘り出してくれるんだ?!
でも、この建物はまだぺしゃんこになっていない。ここから奇跡の生還を果たせば、俺は一躍時の人か!! 今までのろくでもない人生の中で脚光を浴びたことなんてあったか?
俺は根っからの楽天主義に助けられ、痛みが残る下半身に力を入れどうにか立ち上がった。
そして自然と目が行った窓に映る姿は、18歳ごろの俺の姿だ。着ているのはまあジャージなんだけど。どういうことだ? 視線は自然とそのころと一番変わっているおなか周りに落ちた。メタボじゃない? まさか若返ったのか? よく見るために窓に近づいたことで、薄明るい外の様子に気が付いた。東京ドームがすっぽり入るほどの大きな空洞、いやもう空間と言った方だ正解だ。そんな状況の中に、この病棟は放りだされているのだった。
……?……
さらに、向こうの方では、砂塵をまき散らしながら小山のような物が蠢いている。
なんだ? 目を凝らして見てみると……! 小山に見えたものは、9つの頭を持つ大蛇だった。もたげた鎌首の太さは直径2メートル以上、牛さえ丸のみ出来そうな巨大な咢(あぎと)を広げ、それぞれの頭から炎とレーザービームのような光線を吐いている。それが周りの岩肌に当たり、岩が裂け、表面が溶けて流れ出しているのだ。
思わず窓枠に手を掛けて、外の光景を凝視してしまう。
もう、若返ったことなんてどうでもよくなった。
あれはキングキドラ? いやあれは頭が3つだ。えーっとヤマタノオロチまたはヒュドラか?
そいつがこちらの方に向かって、光線を吐きながらやってくるのだ。
まばゆい光が俺の視界を潰す。
あっ、死んだ。本日2回目の生を諦めた。
元々諦めは早い方だ。もしこんな時に足掻くタイプなら理不尽な経済の変化に流されてこんな底辺の人生は送っていない。
しかし、光線が当たった窓は少しガタガタとなっただけで、炎や光を吸収しているように無効化している。
防弾、耐熱ガラス? その光景に唖然としていると後ろから臀部を思いっきり蹴飛ばされた。思わず振り返ると、見たことのない美少女が小瓶を持った腕を突き出しいる。
「これをあいつに投げるのです。です!」
「スキル言語理解を取得しました」
誰かが頭の中で囁いたようだけど、微笑みながら威圧する形相に、深く考えることが出来ずにその小瓶を受け取ってしまった。
「これをあいつに投げればいいんだな?!」
こくりと頷く少女。
意を決して窓を開けた。途端に吹き込んできた砂塵と焦げ臭い大気の臭い。化け物が発する威圧に息が詰まりそうだ。
対岸の火事からいきなり自分に降り注いできた理不尽と言う名の火の粉。半分諦めて投げやりになっている人生観が、俺から深く考えることを奪い去っていた。
とりあえず投げればいいんだろ。
大きく振りかぶって小瓶を化け物に向かって投げようとしたところで、頭の中でチロロンと電子音が鳴り響き、女性の声が聞こえてくる。
「固有スキル爆裂が開放されました。レベルマックスに達しました。」
……?……
またなんか聞こえたが関係ない。今更、動作を止めるわけにもいかず、化け物目掛けて小瓶を投げ捨てた。
「窓を閉めるのです、です」
後ろから聞こえた声に言われるままに、窓を素早く閉めた。
ドッカーーーーーーーーン!!!!
外で大爆発が起こり、建物を揺らし、砂塵が舞い、小石が窓に降り注ぐ。小石に混ざって肉片みたいなものもべっちゃと窓に張り付いてくる。
そして肉片はずるずると下のほうにずり落ちていきながら、粒砂のように微小の粒になり吹き飛ばされて消えていく。そんなグロ現場に唖然としながら……。
い、いったい俺は何を投げたんだ?
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