第16話 アルはデビルグリズリーと戦う②

「ティア。現在のステータスを確認したい」

『かしこまりました』


 俺の目の前にブルーティアのステータスが表示される。


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 神剣ブルーティア・ソードモード

 FP:1221

 攻撃力:611

 防御力:610


 スキル 剣2 弓1 銃1 錬金術10 鑑定10

 サポート 収納 自動回収 成長加速10


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「ステータスは上がってる……けど、これでも勝てない相手か?」

 

 敵の強さは理解しているつもりだ。

 これだけの性能があれば勝てない相手でもないと思うんだけど。


『現状このままでは……ですが』

「現状? どういうことだい? もしかして俺があいつらに勝てる方法があるのか?」

『はい、ございます。まずご主人様の能力を引き上げるサポートスキル【身体能力強化】。そして【剣】のスキルを最大まで取得する。この二つで問題はなくなるかと思われます』

「なるほど……じゃあ、二つとも最大まで習得してくれ」

『かしこまりました』


 ブルーティアが光ると同時に、俺自身の身体能力が上昇するのが分かった。

 力がみなぎってくる。

 果てしなくみなぎり、無敵感が溢れ出る。


『これでご主人様がデビルグリズリーに勝てる確率は――100%でございます』

「よし」


 俺はブルーティアを手に取り――


 全力で駆け出した。


「さっさと蹴散らそう」


 風のような速度でデビルグリズリーとの距離を詰める。

 俺に反応できないデビルグリズリーの背後から、剣を突き刺す。


 身体能力が、剣の扱いが段違いに上昇している。


 迅く、強く、鋭く。


 俺の剣は確実に、無駄の無い動作で敵の数を減らしていく。


「ははは……なんだこれ……無敵じゃないか」


 あまりの強さに、高揚感が高まっていく。

 あまりの感動に、心が震える。


 俺は今――最強だ!


「な、なんだあいつは!!?」

「す、すげー……上級冒険者か!?」

「誰か知らねえけど、あいつがいるなら……行くぞ、みんな!」


 俺の戦う姿を見た人たちは、勢いを増す。

 さっきまでは押されるばかりであったが、少しずつデビルグリズリーを斬り倒していく。


「ガァアアアア!!」


 デビルグリズリーは俺を切り裂こうと爪を振り下ろすが、俺はこれを後方に飛び避ける。


「【ソニックストライク】!」


 【剣】スキル最強技、【ソニックストライク】。


 回避と同時に、剣を横薙ぎに振るうと、巨大な真空の刃が飛翔する。

 刃は何十というデビルグリズリーを容赦なく斬り刻んで行く。


「あ、あいつ、強いなんてもんじゃねえぞ! 化け物だ!」

「あんな奴、ギルドにいたか!?」

「いや、あれだけ強かったらもっと有名になっているはずだ……」


 皆が俺の剣を見て、唖然としていた。

 敵が目の前にいると言うのに。


「敵、来るよ」

「あ、ああ!」


 ハッとし、皆はデビルグリズリーに向き直り、戦闘を続ける。


 俺はデビルグリズリーを蹴り、王都を囲む壁へ飛び上り、敵を静かに見下ろす。


「ティア。敵を一掃したい。術の習得を頼む」

『デビルグリズリーの弱点は……火でございますね』

「ああ。【火術】を最大レベルで取得し、モードはロッドで頼む。バランスは魔攻力100だ」

『かしこまりした』


 俺の手の中のブルーティアが光り輝き姿を変え、先端に宝石がついた蒼い杖に変化した。

 サイズは俺の身長よりも大きく、重みはあまり感じないが、周囲の魔力が集まり出すのを感じる。


 ロッドモードの性能は、攻撃力が50%ダウンし、魔攻力が50%アップするというものだ。

 魔術に関しては、圧倒的な火力を誇るモード。


 俺はブルーティアを右手で掲げ、【火術】を解き放つ。


「【フレイムレイン】!」


 ブルーティアの宝石から上空へと、紅い閃光が昇って行く。

 そして空中でドンッと花火のように弾けたかと思うと――


 いくつもの炎が雨のようにデビルグリズリーへと降り注いでいく。


「グオオオオオオン!」


 デビルグリズリーたちの頭を、胸を貫いていく炎。


「ななな、何が起きてんだよぉ!!」

「う、上を見ろ! あいつだ!」

「こ、これが人間になせることなのか……?」

「強すぎだろ!!!」

 

 大騒ぎする戦場の戦士たちは俺の方を見ながら、大きく口を開いて固まっている。

 戦闘は【フレイムレイン】の一撃でデビルグリズリーを根こそぎ退治し、終了した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「すげー! すごすぎだろ、あんた!」

「お前、どこかのギルドに所属してるのか!? 良かったらうちのギルドに来いよ!」

「いやいや、お前は騎士になるべきだ! 俺が騎士団長に話を通しておくよ!」


 俺は草原の真ん中で、人々に囲まれてもみくちゃにされていた。

 別にこういうの嫌いではないけれど、ちょっとこの数はさすがに疲れる。


「今は別のギルドに所属してるからいいよ。それより、一つ訊きたいことがあるんだけど」

「なんだ?」


 一人の騎士が応える。


「今回のことで、特別報酬とかないの?」


 お金は大事だから、もし貰えるものなら貰っておきたい。


「それなら王様に話を通しておこう。きっと褒美を用意してくれるよ。君はどこのギルドの者なのだ? また結果を連絡することになると思うから、教えておいてくれ」

「ローランドの冒険者だよ」

「「「ロ、ローランド……?」」」


 さっきまで大騒ぎだった人たちが、ピタリと口と動きを止める。

 まるで時間が止まってしまったかのようだった。


「またまたー! ローランドとか冗談キツイよ!」


 ゲラゲラ笑いだすみんな。

 いや、冗談じゃないんだけどね。

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