第4話 ブルーティアは成長する②
どこまでも続きそうな草原を歩き続ける。
どれだけ歩いても変化が訪れないのでそろそろ飽きてきた。
だが帰るにしても、もう相当な距離を歩いてきたからなぁ……
なんて、帰る気も無いのにそんなこと考えてみたり。
右手にはずっと森が続いていた。
俺は途中で何度か木に斬りかかり、素材を回収する。
まぁどこかで役に立つだろう。無駄には絶対ならないはず。
「おっ」
スライムばかりで暇をしていたその時であった。
なんと新たなモンスターを発見したのである。
肌は緑色で身長は俺の腰ぐらいまでしかないだろう。
手には剣や斧を持っていて、スライムぐらいポピュラーなモンスター、ゴブリンだ。
ほんの少しの変化だが、今の俺にとってはありがたき変化。
ブルーティアを抜き、互いに距離を少しずつ詰めて行く。
「キキッ」
俺が進んでいた方向から、別に2匹のゴブリンが現れた。
ちょっと待って。
さすがに3匹相手とか……無理ではなかろうか。
というか、1匹相手でも勝てるのだろうかと俺は悲観的に思案する。
ゴクリと固唾を飲んで、向こうの出方を窺う。
と、目の前にいたゴブリンは、突如駆け出した。
「ははは……もっとゆっくりしてくれてても良かったのに」
俺はつーっと汗をかきながら駆けるゴブリンに集中する。
逃げてもいいけど、追いつかれたら後ろからバッサリか……
俺は覚悟を決め、剣技を繰り出すことにした。
「【スラッシュ】!」
【スラッシュ】。
切れ味の増した刃がゴブリンを迎え撃つ。
俺の剣は相手の剣ごと、スパーンと真っ二つにする。
「あれ? 意外と楽勝?」
あまりに手ごたえがなかったもので、少々気が抜ける。
続いて走って来るゴブリンたちも、一太刀ずつで切り伏せた。
「……はぁ……弱くてよかった」
どれぐらい強いのだろうと緊張したが、あまりスライムと大差なかったように思える。
俺は剣を背負おうとしたが、宝石が赤くなっているのに気が付いた。
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神剣ブルーティア
FP:10
攻撃力:12
スキル 剣1
サポート 収納 自動回収
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「ん?」
何やらお知らせが表示されてある。
『攻撃力が10を突破したので、武器のモードを選択できるようになりました。同時にパワーバランスの設定も可能になりました』
武器のモード?
ステータス画面をよく確認して見ると、【武器モード】の文字が追加されている。
その文字に触れると、どうやら剣だけではなく他の武器としても扱えることが分かった。
神『剣』なのに他の武器として使えるのか。
そしてパワーバランスというのは、攻撃力と魔攻力と防御力にパワーポイント――今は攻撃力に全て振られているが、これを好きに割り振りできるみたいだ。
現在の武器モードはソードモード。
パワーバランスは、攻撃力と防御力に半々で割り振りする。
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神剣ブルーティア・ソードモード
FP:10
攻撃力:6
防御力:6
スキル 剣2
サポート 収納 自動回収
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ついでに剣スキルを上昇させ、2にしておいた。
とりあえず防御力に半分振っておいたが、どれぐらいの効果、というかどうなるのだろうか?
どんなものか試してみたいと思っていると、好都合にゴブリンが2匹現れた。
ちょっと怖いが、一度攻撃を喰らってみよう。
ゴブリンは奇声を発しながら、俺に向かって走り出し、斧を振るった。
というか、一回も喰らったことないから違いが分からないんじゃ?
そう思った時には既に遅し。
相手の斧は俺の顔面を捕えようとしていた。
が、キンッと俺の目の前に半透明の壁が出現し、ゴブリンの攻撃を防いだ。
もう一匹のゴブリンも攻撃を仕掛けてくるが、どちらの凶器も俺には届かない。
「なんだよなんだよ。さらに便利になったじゃないかぁ」
俺はルンルン気分で剣を振るう。
先ほどより攻撃力こそ下がったものの、剣スキルが上昇したため、楽に相手の体を切り裂いた。
もうね、全然負ける気がしない。
無敵感とでも言うのだろうか。
俺はそれをヒシヒシと無尽蔵に感じていた。
さらにゴブリンを倒しながら突き進む。
歩くことに飽きていたが、ブルーティアがさらに成長したことの喜びがそれを打ち消していて、俺は楽しくローランドへと向かって歩いていく。
ローランドへ到着する頃には、またブルーティアの性能が上昇していた。
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神剣ブルーティア・ソードモード
FP:17
攻撃力:9
防御力:9
スキル 剣2
サポート 収納 自動回収
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【収納】を確認してみると、『スライムの体液』が57個。
『ゴブリンの骨』が41個。
うーん。こうやって見たら、結構な数を倒してきたんだな。
なんていきなりグッタリする。
歩き続けたのもあるが、さすがに疲れた。
ブルーティアを背に納め、ローランドに視線を向ける。
「…………」
廃屋に近い建物がいくつも建ち並び、背の高い建物は一つもない。
そこら辺にゴミが散乱していて、酔っ払いやゴロツキたちが地面に座り込んでいたり喧嘩をしていたりしている。
子供も数人見えるが……みな不幸のどん底みたいな表情をしていて俯いている。
何だここは?
あまりいい噂を聞かなかったが……
こんなにひどいなんて噂も聞かなかったぞ。
俺は夕暮れの中、ローランドを見つめたままポカンとしていた。
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