第3話 ブルーティアは成長する①
マーフィンの町へ戻った俺は、道具屋へと足を運んだ。
店内は傷を癒すポーションやタイマツ、冒険や私生活に必要な物がずらりと並んだ店だった。
「買い取りお願いしたいんだけどー」
「ああ。いらっしゃ……って」
店主の男性は、俺の顔を見るなりしかめっ面になった。
「お前……アルベルトか?」
「あれ? 俺のこと知ってる?」
俺は彼のことは記憶にないが、どこかで会ったことがあるのだろうか?
「……話はゴルゴさんから聞いてるぜ」
「ああ……」
なるほど。
ゴルゴからの手回しか。
「言っとくが、仕事はないぞ」
「はぁ……」
「聞いたところによると、手癖が悪いみたいじゃないか」
「いや、物盗んだことないから」
親が商売をやっていたんだ。
物を盗まれることの損益をある程度理解しているので、そんなことできないしやるつもりもない。
ゴルゴの奴、あることないこと言いふらしてるんだな。
「それに、ちゃんと仕事をしないらしいじゃないか」
それは半分真実。
できたらのんびり生活したい派なもので、せっせと働くのはあまり好きじゃない。
やることはやるけど、必要以上に仕事はしたくないのです。
だけど今はそんなことどうでもいいのだ。
俺は商品を買い取りしてほしいだけだから。
「仕事を求めているわけじゃないよ。これを買い取って欲しいんだ」
俺はブルーティアを手に取り、【収納】にある『開く』という文字を押す。
するとステータスの代わりに、黒い空間のような物が出現する。
俺はそこから『スライムの体液』を取り出し、店のカウンターへ置いた。
それは真四角のブルンと震える物体で、店主は物珍しそうに視認している。
「こんないい状態の『スライムの体液』……初めて見たよ。これなら、100ゼルでどうだ?」
100ゼル。
普通に食事を取ったら500ゼル。
安い店に入ると300ゼルぐらい。
宿はできるだけ安い店に泊まるとして……2500ゼルぐらいかな?
まぁ、これ1つで100ゼルをいただけるなら、今日は問題なく生き延びれるだろう。
そう考えた俺は、収納している『スライムの体液』を30個、全てドドーンとカウンターへ出す。
「お、おう……すげーな、お前」
状態のよい品物が30個積み上げられているのを見て、店主は顔をピクピクさせて驚いていた。
◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、安宿で目覚める。
木造のせまい部屋で、ベッドから下りるとギシッと今にも床が抜けそうな恐ろし気な音がした。
朝食は簡単なパンのみだったが出してもらえた。金の無い俺にとってはありがたさこの上なし。
俺は食事をさっと済ませ、マーフィンの町から出て、草原に移動した。
「さてと……」
この町ではゴルゴの噂が広がってしまっていて生きにくそうだ。
やはり別の町に移り住むしかないな。
俺は遠くに見えたスライムに向かってのんびりと走り出す。
必死にやるのは性に合わないから、マイペースでモンスターを倒しながら他の町に向かおう。
ここから一番近い町は……確か北東にあるローランドか。
あまりいい噂を聞かないが、まぁマーフィンよりかはましだろう。
今の俺から見ればだが。
ズバッとスライムを切り裂き、北東に向かって歩いて行く。
道中、スライムばかりが出現し、俺はあくびをしながらバッサバッサと切り捨てていった。
いやースライム退治は楽でいいねえ。
それから2時間ほどスライムを倒し歩いていた時、ブルーティアの宝石が赤く光る。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神剣ブルーティア
FP:7
攻撃力:9
サポート 収納 自動回収
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また強くなった俺の神剣。
ウキウキしながら習得できるスキルを確認する。
スキルポイントも溜まったため、新しいスキルが入手可能になった。
俺は迷いつつも、とりあえず剣のスキルを選んだ。
まぁ神剣だし? 剣のスキルがあった方がいいよね。
今はスライムだけを相手にしているが、もっと強い敵が出てきたら大変だ。
その時も楽に戦えるように、剣スキルを向上させておきたい。
俺はジョブスキル【ナイト】から【剣】のスキルを選び、文字を押す。
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神剣ブルーティア
FP:7
攻撃力:9
スキル 剣1
サポート 収納 自動回収
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剣スキルを習得したことにより、どうやら剣技を使えるようになったようだ。
着実に強くなっている……
気分をよくした俺は、軽い足取りで歩みを再開させた。
すぐさまスライムとエンカウントし、剣を振り回す。
さっきよりも剣の鋭さが増している。
どうやら剣スキルが上昇したことにより、武器の扱いが上手くなったようだ。
なんて素晴らしいブルーティア。
俺は神剣を抱きしめたい気持ちでいっぱになったがそれは控えておくことにした。
だって他の人に見られたら、どう考えてもヤバい奴にしか見えないから。
その後もスライムを倒しながらズンズン歩いていくと、右手に森が見えてきた。
俺は森に近づき、ふと【自動回収】のとある性能が気になり木を斬り付ける。
木にブルーティアの刃がカツンと入ると、木は粒子になりブルーティアに収納された。
「おおっ」
自然の素材に攻撃することによって自動回収する……
それはどうやら本当のようで、こうして木をブルーティアに自動保管させることに成功した。
『木材・大』×1が、ブルーティアの【収納】に表示されている。
ちょっとこれ、便利すぎませんか……?
俺はあまりの嬉しさに、一人ハイテンションでクルクル回ったりスキップをしながらローランドへと歩を進めた。
あーこれ、誰かに見られたら絶対ヤバい奴だと思われるだろうなぁ。
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