第2話 ブルーティアは便利
「攻撃力……3」
モンスターを倒したことによって、ブルーティアの攻撃力が上昇した。
上昇……成長した……
まさかこれって……成長する剣?
今までモンスターと戦ったことなかったから知らなかったけど、そういうスキルを所持している剣だったのか?
俺は抑えきれない興奮と戸惑いを胸に、近くにいるスライムに近づいていく。
バサリと今度は一撃で仕留めることができた。
だが、スライムを倒したというのに宝石が輝かない。
「俺の思い違いか?」
そう思案しながら、本来の目的を思い出す。
「スライムの体液は……と」
ダメだ。
売ったら少々金になるはずの、スライムの体液は四方八方に飛び散ってしまっていた。
というか、こんなのどうやって回収すればいいんだ?
無理にも程があるじゃないか。
俺はぶつぶつ言いながら、次のスライムの下まで歩いて近づいて行く。
攻撃力が上昇したのは間違いなく、今度も一撃で倒せるようになっていた。
そして体液の回収も困難なのは間違いなく、今度も失敗に終わる。
どうすればいいんだろうか……このままじゃ、金を稼げないぞ。
もう明日辺り飢え死にするしかないのか……?
「…………」
だがまだ諦めることはないだろう。
もう少ししたらコツを掴めるかも知れない。
俺は淡い期待を無理に抱きながら、スライムを狩り続けた。
すると――
また、宝石が赤く光る。
「よしっ」
俺は左拳を握り、喜びの声をあげる。
そしてブルーティアのステータスを開く。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神剣ブルーティア
FP:3
攻撃力:5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「?」
攻撃力がまた上昇していた。
今回は少し時間がかかったが、やはり俺の考えた通り、成長する剣で間違いないようだ。
だがそれだけではなかった。
今回はさらに、
「習得って言っても、どうやって……」
俺はなんとなく、その文字に触れてみた。
すると新しい文字が映し出される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
スキル
サポート
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「?」
≪スキル≫と≪サポート≫。
これはどういうことなのだろう?
俺はそれらを確認するために、スキルの文字に触れてみた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジョブスキル
├ナイト
├マジシャン
├プリースト
├シーフ
└アーチャー
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5つの基本職。
それらが表示される。
ちょっと待て……基本職全部表示されてるってことは……全系統のスキルを使用できるようになるってことか?
俺は一つ前に戻り、今度はサポートに触れた。
サポートというのはどうやら、ブルーティアの性能を拡張できるというものらしい。
それは戦闘のための物もあったが、そんな物よりも俺を釘付けにする文字が表示されていた。
【自動回収】という物だ。
それに触れてみると――
『モンスター素材や自然素材など、攻撃した物を自動的に回収する』という説明文が表示された。
何それ? 便利すぎない?
俺は高揚しながら、迷うことなくそれを選択する。
そしてもう一つ、【収納】というものがあったのでそれも選んでおく。
【収納】というのは、物を出し入れすることができる倉庫のような物らしい。
これを習得することによって、【自動回収】で手に入れた素材も、【収納】の方へ自動的に保管してくれるようになるようだ。
なんて便利なお得機能。
俺はあまりの嬉しさに踊り出しそうになった。
誰も見てないから踊ってもよかったが、それよりもこの新しい機能を試してみたい。
最初のステータス画面に戻ると新しく取得した物が表示されていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神剣ブルーティア
FP:3
攻撃力:5
サポート 収納 自動回収
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
他のスキルなどを手に入れようとしたが、どうやら新機能の解放にはスキルポイントというものが必要らしく、今はこれだけしか入手できない。
まぁ、これだけでも嬉しい限りではあるが。
俺は少し離れた場所にいるスライムを見つけ、草原を揚々とした気分で駆ける。
そして一撃でスライムを切り裂いた。
ブルーティアのステータスを開き、【収納≫】文字に触れる。
スライムの体液×1
「……本当に回収されている」
今度こそ俺は小躍りした。
便利だ……これは本当にありがたい。
敵を倒すと性能が上がり、利便性も上昇していく。
もうなんというか、控えめに言って神だと思う。
なるほど。
だから【神剣】なのか。
などと勝手に自分で納得し、さらにスライムを蹴散らしていく。
◇◇◇◇◇◇◇
気が付くと夕方になっていた。
ブルーティアのステータスを確認する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神剣ブルーティア
FP:5
攻撃力:7
サポート 収納 自動回収
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
また能力が上昇している。
スライムの体液は……30溜まっていた。
これだけあれば、とりあえず明日死ぬことはないだろう。
最低一日分ぐらいは稼げたんじゃないか?
俺は思いがけない神剣の性能に喜び狂いそうになっていた。
なんでこんな便利性能に気づかなかったのだろう。
もっと早く気づけたら、もっと楽な生活ができていただろうに。
まぁ、過去を振り返っても仕方ない。
これからは天国だ。
今の俺には輝かしい未来しか想像できない。
俺はスキップしながら、楽しい気分で町に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます