無双!悪役令嬢6

ユニ

無双!悪役令嬢6


ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!

大観衆の声が巨大なコロシアムに地鳴りのように響きあがる。




ここは第三ヒール帝国

先々代の王までは小国であった。

どこからともなく現れた者があれよあれよという間に先代王の宰相までに成り上がり、

しかし、実はそこからが彼の本領発揮であった。

それからほどなく、その小国は周辺の大国を飲み込み、帝国までに成り上がった。



月日は流れ

先代の王も、宰相もなくなり、僕の時代になっていた。


僕が踏まれる番になっているのだ。


大観衆の中、王である僕は、コロシアムの中央の舞台に上がる。

歓声が更に大きくなる。


今年から始まる年に一度の、建国記念。の、重要儀式。

小国時代の苦渋を忘れぬための、我が国で最も重要な儀式である。

宰相の遺言によって、僕のが17歳になってから始めることになっていた。


「さあ、姫、、」

姫を促す。


姫役は王妃ではない。敵役なのだから。



僕は舞台の中央に敷かれた茨のマットにうつ伏せに寝る。棘だらけで皮膚の表面が傷つき、血が滲む。


姫が僕の両の手首を後ろ手にし、手枷をはめる。足首もに足かせを。


姫が両手を掲げる。右手には乗馬用鞭。

観衆は絶頂を迎える。


姫が両手を降ろす。

観衆は口を塞ぎ、コロシアムは無音になる。



ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!


「おーっほっほっほっほっ!! お前は豚だ!!お前は家畜だ!!お前は奴隷だっ!!!」


ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!ビジっ!

鞭は次第に僕の服を裂き、そして僕の皮膚を裂く。


姫は特製の「ハイヒール」という靴を履いている。

かかとが高く、先がとても尖っている。道を歩くと土にめり込むか、石畳の継ぎ目にはまり込み、実用的ではない。

拷問用だと言われている。


そのハイヒールで、僕の背中を踏む。


ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり


僕の背中は血だらけだろう、、、


そして、姫は立ち去る。


僕は手枷のまま跪き、うなだれる


「クッ、こ、ころせっ!! この屈辱を忘れぬっ!!!」


ここまでで、儀式は終了だ。


僕は立ち上がる。


ここで再度大歓声が起きる


ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!




先代宰相の教え。今の我が帝国の根本思想が、この「ヒール」なのだ。

全周を大国に囲まれ、常に過酷な状況を強いられ続けて来た我が国。

それを「屈辱だと認めなければ永遠にこのままだ。このまま豚でいるか?家畜でいるのか?奴隷のままでいいのか?!!」と国全体を奮起させた。

そして、

「屈辱を忘れないために」

と彼が生み出した儀式だ。


敵国の下僕としての我が国。敵国の王女にさえも蹂躙され、指一本あげられない。

そういう屈辱を再現し、常に、国全体を奮起させる。


最初は流石に王家の者にはできなかったので、宰相が率先して踏みつけられていた。

宰相の顔は屈辱で歪みすぎ、歓喜にさえ見えるほどの歪みであった。

そのうちに「ハイヒール」を複製する靴屋が現れ、人々の中には、町や村の中央広場で、公衆の面前で、敵国王女に模した美女に踏まれる者が続出した。皆、踏まれた際は、やはり屈辱に顔が歪みきり、表情がよく読み取れなくなるほどにまでなった。


そのおかげで、

「敵国の王女を!」を合言葉に、国中の男たちが兵を志願した。

戦意最高。宰相の考案した新型兵器三角木馬などを携え、我が国は次々と周辺大国を飲み込んでいった。



今日、僕を踏んだのは、本当に敵国だった東の大国の姫だ。

敵国の王族は殺傷していない。一領主として我が王都の隣接領地に移封している。

彼らの今の領地は豊かだ。だから税も安く設定させ、領民が豊かに暮らしていけるようにしている。つまり平和な領地になっている。

その元王女達の幾人かは、僕の兄弟たちと結婚し、縁戚になっている。


敵国王女役は未婚と決まっているので、今日の若い彼女はまだ結婚していない。







ふっつざけんなぁあああ!!

ド畜生の変態どもめぇえ!!!

何が儀式だ!クソがっ!!ああ!確かに儀式だとも!!変態どものなっつ!!!!!

コレだけ屁理屈くっつけて、国をあげて変態にさせたクズばかやろうはどこのどいつだ!!!!!

くそっつ!!!くそがっつ!!!糞があああああ!!


姫役は怒っていた。


彼女には前世がある。前世を覚えている。今の自分が成長していくにつれ、少しづつ前世を思い出してきた。

ブラックな会社しか無い社会で、生活費の足しにとバイトをしていた。そのバイトと全く変わらないのが、今回の儀式。

で、思いっきり前世を全部思い出してしまったのだ。



畜生、どうしてくれよう?

少し落ち着き、冷静になり始めたその姫は、この腐れた国をどーにかしてやろうと心のどこかで決めていた。


思い返して見ると、この国はもう全体的におかしかった。


先々代のこの国は小国であった。その時までは、周囲4大国に囲まれ、緩衝地帯として、どこからも手を出されず、経済的に周囲の4つもの大国との中間貿易でもそこそこ潤っていたはずであった。

それが先代になり急激というほどいきなり兵力を増強し、周囲4大国に順次襲いかかった。

その速度は燎原の火のごとくに!

それまで、4大国は拮抗していたので、それは「安定」でもあった。なので自国が兵力を増強すればその安定が崩れる、ということ。それが分からぬ4大国王家達ではなかった。


なので、かなりの無理をし、奇天烈ド奇計を巡らせれば、この小国でも無理な話ではなかった。だが、よほどの才覚があるものが指揮しなければ絶対に無理なほどの差はあった。

が、

その指揮をしたものが、先代の宰相だった。

カス同然であった国が一気にここまできたのに異常な違和感を感じ、調べたら、このようなことだったと。

で、宰相が国中を洗脳した結果が、今ココ。


その宰相はもう没している。

「くっそう!くっそううううう!死んだものをぬっころすことはできぬっつ!!!!!くっそうううううう!!!!」

地団駄を踏みまくる姫。

端で見ていた侍女達は、その優雅な地団駄はダンスに見えた、

後の地団駄ダンスの誕生の瞬間である。



それはそれとして、


「姫役」は、敵国の王女かつ未婚でなければならなかった。そして、それはこの帝国一の栄誉となっている。

姫役をやった者には求婚が殺到し、引く手あまたどころ程度ではなかった。

王家が介入すると”異常”事態が発生するのは目に見えている。なので王家側としては放置。

元4大国の多くの王族が王都周辺にいるので、姫役にはことかかない。


4大国王族側としても、もう現王の弟たちに自分の姫が后として迎え入れられているので安泰だ。

領地も帝国内でも極上の場所を与えられている。

儀式の意味合いがイマイチ理解できないことだけを除けば、昔の自国で王をやっているよりよほど楽ちんで優雅だった。だれ一人として昔に戻りたいなどとほざく者はいなかった。





今回の姫役は、アレの後、誰の訪問にも会わず、表にも出なかった。

あれから、外部の者で姫役に会った者はいなかった。



それから半年は経っただろうか。


「わーはっはっはっはっはっはっはーーー!!!」

うーりゃっつ!

ガスッ!!

せいっ!!

ズバッ!!

ひょい、

ガン!!

「はー♪大漁♪!!」


領内の森でたった一人で修行していた。

それまでも一応元大国王女で姫役候補として、王族や上位貴族に迎え入れられるに相応しいようにと、幼い頃から一通りの武芸も習っていた。


武芸以外の楽器も歌も、舞踏も、刺繍も、詩も、何もかも放り出し、

森に入った。


最初は比較的安全な獣しか居ない森。次第に危険な生き物のいる森に移動し、今は領内でも最も危険な魔獣の巣窟と呼ばれる森に居る。


魔獣を狩り、食べ、木の上で寝て、起きて、魔獣を狩る。


夜間の猛獣や魔獣は木の上を飛び回る物も多い。

が、彼女はもう既に気配を察知することができていた。

相手が自分を察知し、自分を獲物として捉えた時点で察知できる。

自分を囮として、狩るのだ。えげつなく危険であったが、彼女は楽しんでいた。



彼女の名は、

元東の大国王家、現ヒガシーノ公爵家令嬢、

ヒメノ・アズーマ・ヒガシーノ。 もう我が読者様は突っ込み無用のはずである。


自分の家の領地内で最も危険な森での狩りでさえ、笑いながら大漁にまで出来るようになってしまっていた。

当然、さらなる強敵を求めるのが本能だろう。

もう、当初の目的を忘れ去っているのだろうか、完膚無きまでに。


狩り中に捕獲し下僕にした角馬に乗り、ヒメノは大剣を肩に担いで、隣の領地の町に向かった。そこのギルドで危険な森の次情報を得ようと目論んでいた。


町に入ると通行人にギルドの場所を聞く、中央広場に面したところだという。


・・・・・

あ?

なんじゃこりゃ?


おい、なぜ前世の私がいるんだ?


巨大な銅像だ。

ヒメノの前世が、ボンテージに身を固め、一般的な方の鞭を振り上げ、そのヒメノ前世に踏みしめらている猿ぐつわと手枷足かせした男。


こっ、こいつ!!

「踏まれのマゾじゃねーかっ!!!」


側を歩いていた者に聞くと、その男は先代王の宰相で、この国を帝国にまで押し上げた立役者本人だという。


だが、奴は彼女の前世のバイトの客の中でも、最もその気が強かった客。 苫園誉、踏まれのマゾ、と女王さまたちは呼んでいた。


この像と同じものは、各地の戦勝記念の銅像として、国内各地にあるそうな。

前世の彼女に踏まれている苫園そのもの!!


クッ!!、とぉまぁぞぉのぉおおおおおおお!!!!!!


実は王都にも自領の領都中央広場にも同じものはあったのだが、ヒメノはどちらの中央広場には行ったことがない。というか、ほとんど自領からでないし、更に言えば家からもほとんど出ない。

前世を完全に思い出すまでは、単なるおとなしい娘であった。外出は、ごくごくたまに、領都に楽団や劇団が来た時、夜の部に見に行くくらいだっただけだった。


でなければ、彼女の覚醒はもっと早かったろう。



ヒメノは己の剣を見た。

うむ、充分だろう。

それは大型で重量があり、刃物というよりは打撃用武器と呼んだほうがいいようなものでもあった。勿論力任せに切ることもできるが。



高さ10mはあろう銅像。

というか、中はコンクリでも詰め込んでいるのではなかろうか?とヒメノは思った。踏まれマゾのことだからなぁ、、


気合を入れる。ヒメノ自身はまだ知らないが、もう彼女は身体強化の魔法?気?を知らぬ間に使っているのだった。修行の成果だろう。

それほどこの変態国が嫌いだからなのか?



気合一発!

前世像の右足が崩れた。

二発目!

左足が踏まれマゾの方に崩れ、踏まれマゾも破壊される。


フンッツ!!


「貴様ら!!」

集まってきていた大量のモブ達に言う


「こいつは変態の像だ!お前らは何も知らず、変態に洗脳されているんだ!!」


モブはざわつき始めた。

ひとりの声がする

「洗脳されようがなんだろうが、幸せを感じるんだ!踏まれることが生きがいになっているんだ!!いいじゃないかっ!!」

「「「「「そうだそうだっ!!俺達の幸福を破壊するなっ!!!」」」」


クッ、、、くそ、やつら踏まれマゾそのものに成り果てていやがる、、、


だが、、

息巻いているのは男どもだけだ。

女たちは?

と探すと、端の方で成り行きを見ているだけ、の様子。

にしては、、、


「わかった、糞男どもの言い分はわかった。お前らが糞もいいとこだということが、よっくわかった。

よかろう、今はおまえら糞を相手にしても埒が明かないので、今日は私は引くことにしょう。」


ヒメノは大剣を担いでモブの隅の方に向かう。



ヒメノが女たちの方に向かっているということが、男達にもわかった


「余計なことするなっ!!」

「何しようってんだ!!」

「女達!その女の話なんぞ聞くんじゃねーぞッ!!」

女たちは動かない。

その多くの目は、何かを期待している目にも見える。


そりゃそーだろう?

男どもがみんな踏まれマゾになっちまったんだ、困り果てていたんだろうよ、、、

ヒメノはそう思いながら女たちの群れの前に立った。

「さて、おまえら、あのクズどもをどうしたい?」

と、後ろを親指で指し示す。


男どもが小走りで邪魔しにこようとしている。

女どもを脅して解散させるつもりなのはモロ見えだ。


先頭の群れが10mくらいにまで近づいた時、ヒメノはおもむろに振り向きながら、大剣を振るった。

ブン!!

「「「「「「わーーーーーー」」」」」

ブン!!

「「「「「「わわーーーーーー!!」」」」」

ブーン!!

「「「「「「「「「わわわわーーーーー!!!!!」」」」」」」」


半数が吹き飛ばされて、残りは棒立ち。

「さて、お前らも、?」

うっわーーーー!!

蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「よし、邪魔者は消えた。じっくり話そうか?」

安心した様子の女たち。


女たちを銅像の瓦礫の方に誘導した。各々、瓦礫を椅子代わりにした。

中央なので見通しが良い。踏まれマゾになった男どもが聞き耳を立てられたり、邪魔をしようとした場合丸見えだ。


女たちとじっくり話し合った。

皆違和感を感じていた様子だ。

そして、

「もう我慢できない!」というのが今日の結論になった。


貧乏なのに大枚叩いてハイヒールを買ってきたり、

最近できた「フンでくれるお店」に入り浸ったり、、

・・・・・・(うっわー、私の前世の同業かよー、潰すしかねー)


1、 ハイヒールに踏まれたがるのは変態である

2, 個人の自由かもしれないが、嫁や恋人はそれを嫌悪している。

3, 公衆の面前でのそれは禁止せよ

つまり、国家の儀式としてのそれも禁止しろ、と。

国家あげての変態だから、バカがおおっぴらにやってしまうのだ。


ここに「反変態同盟」が出来上がった。



同盟の指針としては

ヒメノは今日のようなことを各地で行う。

女たちは、旦那や恋人が踏まれマゾな場合、反省して止めるまで距離を置く。

男どもが暴力や嫌がらせをしてくれば、女たちは助け合い協力し合うこと。

女たちが力不足の場合、ヒメノの実家のヒメノ専属侍女にその旨知らせろ、と。

そして、この街の同盟のリーダーチームを決めた。


それから、ヒメノは各地を周り、銅像を破壊し、踏まれマゾ達をふっ飛ばし、女たちと話し合って、同様のことをしていった。


ヒメノは、ヒガシーノ領を中心として、回っていった。



幾つかの他領地を平定し、ヒガシーノに帰ってきた時、邸の前庭には騎士団部隊が駐留していた。

結構前から待っていた?テントまで張って、炊事場までできている。

兵士たちはまるで自宅のようにくつろいでいた。

一ヶ月かそこいらは待っていたようだ


「またせたようだな?」






2人は剣を交えていた。


ヒメノと騎士団団長の大男。


剣の大きさはヒメノの剣が数倍でかい。


体の大きさは、団長のほうがヒメノの体重の3倍近くはあるんじゃなかろうか?


だが、団長は押しきれていない。

実戦の差か、身体強化の差か、、、


鍔迫り合いが続く、顔を間近に突き合わせ、


「じゃ、おまえの娘が、あの変態靴を履いて、変態男を踏んているとしたら?」


「・・・・・・・ゆ、、ゆるっさん、、、、」


「わしはその逝かれた風習を辞めさせようとしているのだ、

おまえは、その変態風習をまもろうと、今私と戦っているのだ。」


「おまえは、クズか?自分の娘も変態の餌食にさせようと?!

大したもんだな帝国の騎士団団長様は!!!」



騎士団団長は膝をついた

「クッ!こ、ころ、して、くっれ、、、もう、、生き恥、晒したくない、、」


「だからお前はクズだってんだよ!」

ヒメノは襟首を掴んで引っ張り上げ拳でぶっとばした。数メートル空を飛ぶ大男を駿足で追いかけ、落ちた途端拾い上げまたぶっ飛ばす。

何度か繰り返し、大男はもう動く気力も無くなっていた。


「バカが、お前も私に協力しろ。お前らが、私と一緒に、変態風習を禁止させるんだよ、わかるか?

それが、唯一、お前の面目躍如の方法なんだよ。

全国の女たちに聞いてみろ。おまえの娘に聞いてみろ。

王と言えども変態に立ち向かうのがカッコイイパパなのか?変態の為に正義の味方を討伐するのがカッコイイパパなのか?ってなー」

卑怯な言い方であるw だが、一応事実であるんで、騎士団団長は納得するしか無かった。


問題は、

騎士団の中に踏まれマゾがいるかどうか?いたら獅子身中の虫だ、情報がダダ漏れになり、返り討ちの危険性大になる。


ヒメノはふと思い出した、

「踏絵」ってあったな、、、誰かの名前だったっけ?、、

なんかを踏んで、そうなんかどうかを検査するんだったよな?

アレか?踏まれマゾかどうかを、検査していたのか?

踏む役を「踏絵」という名の女がやっていたのか? 


「団長!ちょい、」呼ぶ、

「うちの 反変態同盟から美女を呼ぶから、彼女に騎士団員全員踏ませろ。喜んだ顔したやつが踏まれマゾだ。

そして、残ったまともな奴等を各地に派遣しろ。

私が各地の同盟に手紙を書いてやる、各地で「踏絵」にそこの男達を全員踏ませろ。

で、踏まれマゾが居た場合、全て捕縛しこのうちの領地に送れ。

全員鉱山に送り込んでやる。」

「それはわかったが、、王たちが黙っていないだろう、、、」

「心配するな、これから私が直接行ってくる。多分、王自身は踏まれマゾじゃない。踏んだ私が言うんだw王をこちら側に付けてみせる。心配するな!」


「踏絵」誕生の瞬間であった。


彼女は前世で学校の勉強は大嫌いだったのだから、まぁ仕方がないことだろう。



ヒメノは王城に単身乗り込んだ。

最も強い騎士団がヒメノのところに派遣されているので、残っているのはゴミみたいなもんだ、という騎士団長の言葉通り、

ブン!! 「「「わーーー!」」」

ブン!!! 「「「「「わわーー!!!」」」」」

ブブーン!!!  「「「「「「「「うぎゃわーーーーー!!!!!」」」」」」」」


ハエ? 腐ったゴミにたかった多くのハエを払う程度でしかなかった。


侍女や文官達は大慌てで逃げ出した。

侍っていたゲス領主どもも真っ青で、どうしていいかわからず、右往左往し、誰かどーにかしろ!と叫ぶのみ。

王がまだ居る王城で、王を放って逃げると、あとからどーなることか、、


「居た」という事実のみを維持するために、物陰に隠れる。が、バカだから気になり、ヒメノを見る=自分も発見される、のだ。


「ついでだ」

ブン! ドゴッ!!

ブン! グシャッ!!

ブン! ドゲリョブシャッ!!

目に付いたクズを剣で払うと、決まったように皆壁に叩きつけられる。

趣味なのか?踏まれるのが生きがいだからなぁ、、と納得する。自分はちょいと払っただけ、と思っているヒメノ。

中に今の宰相もいたが、ヒメノの眼中になかったので気づかなかった。


王の執務室。


ノック。 妙なところで律儀。


「入れ」

ギギーー、


「元東の大国王家、現ヒガシーノ公爵家令嬢、ヒメノ・アズーマ・ヒガシーノ

入ります」


「おお、久しいの。あの節はご苦労だった。嫌なことをさせて申し訳なかったな」

あれ?かなりまともじゃん?

しかも、私が”嫌な”ことだとわかってるってのがポイント高いぞ?


「うむ、折いって頼みごとをしにきた。おぬしでなければ収集がつかん」

なんかちょっと予想と違う王に混乱し、武士言葉になってきているヒメノ


「ほう、なんだろう?僕にしかできないこと?」

「うむ、、あの変態行為のことだ」

流石に、ヒメノが嫌がって踏んだとわかるくらいな、苦労だったとわかるくらいな青年だ。 し か も 、イケメンというより美少年というほど童顔、王でなければかなりモテたろう。

あれ?ヒメノ、ちょっと顔が赤くなっている。どーぢてだろー


「ちょっと暑いな、、、この部屋なんか暑くないか?」

「そうか?」と、窓を開け放ってくれる王。 やさしいではないか、余計暑く感じてくるヒメノ。だが、その真実が何なのかという事をまだ知らないヒメノ。


対面する王も、その手のことはうとい。 一般人であったなら、もうとうに誰かの毒牙にかかって知っていたろうが、、



ごほん、

「どうもありがとう、おかげで少し楽になった。」

ほんとはもっと暑くなっているのだが、礼儀として言えないわな。


さて「この国の男達の多くは、踏まれることに快感を見出す変態になってしまっている。

全て、踏まれマゾこと 苫園誉のせいだ。

お前の国の、先代宰相、やつが 苫園誉だ。

やつは別の世界で、超ド級の変態だった。私はやつの変態レベルをよっく知っていた。だから、やつがここまで、つまり自分の変態趣味のために帝国まで作り上げた、ということを、別に不思議とは思わん。やつだからやり遂げたんだろう。

私が同じ時代に生きていたら、当然にして、こんな変態世界を作り出すことは阻止したはずだ。

だが、私は今この時代にいる。とても残念にも思える。

が、

不幸中の幸い、

おぬしはまともだ。おぬしは、踏まれることに快感を見出さないだろう?」


「うん、僕はそんなこと全く無いね。痛いだけだった」


「わしは、領内、他領、と調査を兼ねて回ってみた。女たちは皆困っていた。男どもは働いて金を得ても、皆変態の店やハイヒールやそれを履いて踏んでくれる美女につぎ込んでしまう。その金を得るために一生懸命働くから領経済は滞らないが、領民達の”普通の幸せ”がぶち壊しだ。町中に幸せがある家庭なんぞ、もう無いんじゃないか?な、くらいだ。

それほど多くの者たちが、 苫園に感染してしまっているのだ。 苫園は病原菌と見て良い。そうすることで、状況をより理解しやすくなるだろう。」


「ふむ、 苫園病か、、、よし、それで行こう。感染者は皆隔離。」

「今、まともな騎士団員達が、各地で選別を行っているはずだ。」

「はやいな!!・・・・優秀でもあるのだな君は、、」

「いや今はんなことどーでも良い、で、踏まれマゾと認定された者たちは皆うちの領に送られる手はずになっている。鉱山にぶち込めば、外と接触できないし、もう二度と踏まれる機会なんぞ与えん。」

「なるほどなぁ、、、君は凄いな!」

いやぁ、、と照れるヒメノ。一回目は面目を保ちどうにか気にしていないふりをしたが、二度目となるともうコレだ。

免疫ゼロ!なのでよく頑張ったほうだろう。




数カ月後。

王城の中はもとより、全国の貴族、一般の区別など無しに、

「変態は一律鉱山送り」

として、一斉に大規模に取締が行われた。


結果として町中は女ばかりになってしまい、一時期経済も下降したが、それでも「母は強し」?なのか、皆助け合って頑張って元に近いほどに持ち直した。

男どもが町からほぼ消えたので、犯罪は激減。


しかし、

男の取り合いが酷く、、男どものそれに比べたら「過激」の一言。刃物?普通使うよね?とか、、、

なので自警団が必須になった。

「仕方がない」ので、王は「一時的に、重婚を許可」した。後日追加で「双方の確実な同意が必要」とした。

初期に、男が刃物で脅されて、などが横行したためである。



セカイは変わった



ヒメノは?

王と結婚していた。

王は独身だったのだ。


前宰相は

”姫役は前大国王家の未婚女性とする。踏まれ役は我が国王とする。”

として次期王に残したので、王自身も未婚である必要があるんだろなー、とか思い込んでいた。

なにせ第一回が現在の王なんだから前例は前宰相しかなかった。死ぬ寸前まで踏まれ役をやっていた前宰相は生涯独身だった。



「王が女王さまに踏まれる場面を見てみたい、が、嫉妬に気が狂うだろう、だから俺が生きている間は、俺以外に踏まれ役はさせない」


後日、前宰相の持ち物を全てチェックしていたヒメノは、そんな日本語の日記の一文を見つけた。


ヒメノは王と結婚し、多くの子をもうけた。



ヒメノは、王の密かな趣味が未だに続いていることを、あまり気にはしていないが、すごいな、とは思っていた。

ヒメノはもう50に手が届く。逆に?愛されている、んだろうなとも感じていた。


結婚する直前にヒメノは王の密かな趣味に気がついた。前世の職業的勘?だろうか?



ヒメノは知っていた、王が

ヒメノがその日一日中はいていた靴を自室に持ち込み、臭いを嗅いでいるのを。

なので、

ヒメノはわざと一日中同じ靴を履いていた。    ごほうびだ。



「あれに比べりゃ可愛いものだ。しかも人知れずやっているのだから」




































「結局変態かよ!」


最後に皆様の突っ込みいただきまいた!

ごちそうさまっす!

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