ゴム


――――――――ブスリ!







 …………とは、いつまで待ってもならなかった。


 なに? どうしたの?


「たみこ」


 目を開けたら、きよこが真剣な顔をしていた。


「ゴム、持ってる?」


「…………は?」

「ゴムつけないと」


 ええええええええええええ?


 いや、そうだけど! そうだけどさ!


 わたしの覚悟はなんだったの!? 返せよ!! わたしの…………


 あれ? なんだろ?


 わたしの?


 きよこがまたわたしを呼んだ。

「ねえたみこってば」


「…………なに」

「ゴム持ってない?」


「持ってないよ」

 でも、いいからとにかく持っとけっていわれる理由は、いまはじめて理解できた。身にしみて。


「そっか。じゃあ、しょうがないね」

 きよこは意外とあっさりあきらめた。


「え? …………いいの?」


 だって、ピンクのつるつるすべすべはまだそんなに元気いっぱいなのに。

 だいじょうぶなの、きよこ?


「いいよ。だって、ちゃんと避妊しないとダメじゃん。自分をだいじにしないと」

 は? おまいう?


 でも、きよこはちょっとつらそうだった。

 わたしにはわからない、つらさ。


 脱がされかけてた服をちゃんと直して、わたしはいった。

「じゃあー。いまから買いにいく?」


「え? いいの?」


 だからなんでそんなにうれしそうなんだよ。


「その前に、シャワー浴びたい。へんな汗かいちゃったし」

 両手でぱたぱた風を送りながら立ち上がると、きよこが手をふった。


「うんわかった。いってらっしゃい」


 なにいってんの。わたしはきよこに手を差し出した。


「いっしょに入ろ?」


 だって、そんな状態じゃ外に出られないでしょ。

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