パンツ
「きよこ、ほかのパンツなかったん?」
「うち、ぴっちりしてるほうが好きだもん。ゆるいのはなんか、でろーんって気分になるからやだ」
「あんたの気分は知らんけど、こんなキツキツに圧迫するから充血するんじゃね?」
あんまりじろじろ見るのもなあ。だけど、出っぱってるところにはどうしても目がいっちゃう。
だって見たいし。でも、あんまり見たらかわいそうだし。
「わたしの貸したげるから、脱ぎな? ちょっと待ってて」
たんすの引き出しに手をかけようとしたら、きよこはくねくねしながらへらへら笑った。「いいよぉ。このままで」
「よくないよ。締めつけすぎだって。今日ぐらいはでろーんって気分でいいじゃん」
「だって、悪いし」
「なにいまさら遠慮してんの。べつにわたしは気にしないから」
「だってぇ」きよこはへらへらしながらいった。「サイズ合わないかもだし」
「え、ちょ、はあ?
…………それってわたしがデブってこと?」
「いやちが、いや、ちがうって。うちそんな意味でいってない」
「はー、もー、ありえんわ」わたしはきよこに背中を向けた。「人が心配してんのに、よくそんなこといえるわ」
「え、ごめんたみこ、ほんとごめんって」
きよこがおろおろしている雰囲気が背中に伝わった。
いまさら、セミの鳴き声が窓越しに聴こえた。
まあ、ちょっとかわいそうかな。ゆるしてあげてもいいかな。そんなことを考えていたら。
いきなりうしろから抱きすくめられた。
「ゆるしてたみこ。うちが悪かった」
…………なんでこいつは男に生まれなかったんだ。
でも、もしそうだったら、わたしとじゃなくて、きよこと同じくらい頭が悪くてわたしよりずっとかわいい女とつき合って、毎日へらへらしながら
あ、でもいまは男か。
きよこと同じにおいなのに、わたしを抱きしめる腕や胸はがっしりしていた。なんでなの?
なんでなの、きよこ?
あと、お尻に硬い物が当たっていた。
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