カーテン

「ネットで調べてみよっか」


「ほんと? ありがとう。わかりそう?」

「まだ入力してないって。

 …………何で調べたらいいのかな」


 わたしはスマホで「女 男 変身」と打ってみた。


 出てきたのはどれもこれも、「男女が入れ替わる。ただし化粧や写真加工アプリで」、みたいなやつばっかりだった。


 きよこが横からのぞき込んだ。

「だめそう?」

 わたしは答えられなかった。がっかりさせたくなくて。


「いいよ。たみこ」


 きよこは立ち上がって空色のパーカーを脱いだ。

 パーカーの下はタンクトップだった。


 ああ、やっぱりきよこはすらっとしててかっこいいな。


 きよこがいった。

「見せたげる」


「えっ……いいよ、無理しなくて」


「へいきだから」

「ほんとに、いいって」

「うち、へいきだから」

「でも……」


 きよこはわたしのくちびるを指で押さえた。「むこう向いてて」


 わたしは目をぱちくりさせながら、きよこに背を向けた。

「ほんとにいいの?」


「たみこがうちのこと、真剣に考えてくれてるから」


 きよこもわたしに背中を向けているのが、声でわかった。

 きぬずれの音だけが生々しかった。


 ……………………。


 …………………………………………。


 まだ待ったほうがいいのかな。

 もう音は聞こえないんだけど。


「きよこ? もういい?」


 返事がないのでふり向いた。


 カーテンのすきまから射し込んだ真夏の陽射しが、光と影を作っていた。


 きよこはタンクトップで前を隠して、内股で、はにかみながら立っていた。

 女の子の本心が見せたさ七、隠したさ三ぐらいだとしたら、その逆の感じだった。

 白いふとももに静脈が走っていて、男の体には見えなかった。


「きよこ、もういいって。無理しないで」

 わたしは目をのぞき込みながら、片手できよこのうなじを抱いた。


 ……そして反対側の手でタンクトップを思い切りめくった!


「ひゃっ!」

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