病院

「で、いつからなん」

 わたしはきよこのとなりに体育座りした。


「昨日の朝、起きたとき。気づいたら」


「え? それで今日までほっといたん?」


「だって昨日はお父さんとお母さんとマサトが入院したから。たいへんだったんだよ?」


「あ、そっか。そうだったね。

 てか電話ぐらいしてよ。メールでもさー」

「ごめん。でも携帯、家に忘れてきたからさー。

 まじでたいへんだったんだって。うち生まれてはじめて救急車乗ったよ」


「じゃ、もしかしてこのマンションの前通ったのかもね。病院どこ?」

「第一病院。やばかったよ。人がすごい並んでんの」

「まじ? どのくらい?」

「国道のとこまで並んでたよ」

「国道? ってどこ」

「大きい通りだよ。あのほら、ポピーズんとこ」

「ポピーズ? どのポピーズよ」

「ほら、病院の近くのポピーズ」

「いやだからその病院がわかんないんだって」

「んー……。あ、ゴリラの看板あるとこだよ」

「あー、ゴリラね。わからん。

 え? ちょっと待って」


「わかった?」


「そっちじゃなくて。

 病院いったんでしょ? なんで調べてもらわなかったの?」


「え? 調べたよ。陰性だってさっきいったじゃん」

「あーもー、じゃーなーくーて! 体のことだよ!」

「たみこ怒んないでよ。こわいよ」


「怒るよ!

 女に(≧▽≦)ピー生えたってどういうことかわかってる? 大問題だよ? 医学上の新発見だよ? ノーベル賞レベルでしょ?」

「ノーベル賞に医学賞ってあんの?」

「しらんけど! 医者に聞けよ!」


「えっ」


「なんで調べてもらわなかったの、っていってんの!」


「無理だよ。

 だって、みんな忙しそうだったし。混んでたし」


「えええぇー…………?

 まあ、じゃあそれはいいけどさ。じゃあ今日までなにしてたのあんた」


「だって、検査結果が出るまで一日かかるっていわれたもん。

 病院に泊まったんだよ」


「…………ああ。そっか。

 そんじゃしかたないね。


 …………ごめん」


「たみこ」


 きよこは歯を見せて笑った。


「笑顔笑顔。たみこは笑顔のほうがかわいいよ」


 はぁー。ホストかあんたは。


 そしてそれを男の声でいうな。

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