キス

 パリッ。


 きよこはようやくポテチに手を伸ばした。

 わたしはベッドの上でなんとなく体をゆらしながら、きよこの名前を呼んだ。


「きーよーこ」


「なに」


「あのさぁ」

「やだ」


「まだなんもいってないじゃん」

「いってなくてもやだ」


「なんで」

「わかるし」

「なにが」

「よからぬことをたくらんでる」

「なに、よからぬことって(笑)」

「よからぬことをたくらんでる顔だよ」きよこはどこまでも真顔だった。


「だからなにが(笑)」


 きよこはひざこぞう越しに上目づかいでわたしをにらんだ。


「見せろっていうんでしょ」


 うん。まあね。


「だってさあ。きよこ、なんとかしたいんでしょ?」

「え。そうだけど関係ないじゃん」

「関係あるよ。なんとかするってことは、解決策を見つけるってことでしょ?」


「……うん」


「解決策を見つけるってことは、対策を立てなきゃじゃん?」


「…………?」


「対策を立てるには、まず現状を把握しないと。いま、なんにもわかんない状態なんだよわたし」


「え? なんかそれ、あやしい」

「どこがー」

「ぜんぶ」


「は? ていうかわたしに相談しにきたんでしょきよこは。ちがうの」

「ちがうよ。あれはたみこがむりやり口を割らせた」

「なんでそうなるんだよ。じゃあなんでわたしんちにきたの」


 きよこは子供みたいにほっぺをふくらませて、そっぽを向いた。

 あーまったく、めんどくせー女だなー。


 わたしはベッドから下りて、きよこのほっぺを両側から押さえた。ぷしゅー。

 こっちを向かせると、きよこはまぶたを閉じた。


 あーもー、わかってんのかなー!


 わたしはおでことおでこをくっつけて、きよこにキスをした。

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