牛乳

 空っぽのコップに牛乳をつぎ直したら、きよこはちょこっとだけなめるように飲んだ。


「うちさあ」


 よし、きたぞ。「うん」


「いや、やっぱいい」


 はああああああああああ?


「えー? なに? なになにきよこ」

「いや、なんでもない」

「そこまでいったら最後まで教えてよー。気になるじゃん」


 きよこはいやいやながら「うち、ロココかも」と答えた。


「え? だって病院で検査したんでしょ?」

「うん」

「陰性だったんでしょ?」

「うん。だけど……変異株かも」

 あ?

「変異株って? ウイルスの?」むしろ、きよこが変異株なんて知ってたのがおどろきなんですが。


「たぶんだけど。千パーセントまちがいないと思う」

「医者にそういわれたの?」

「ううん。いわれてないけど……」

 じゃあ、きよこの妄想だ。億兆パーセントまちがいない。


 きよこは「……たみこ、うちヒゲとか生えてないよね?」と、テーブルに身を乗り出した。

 牛乳を飲むとき、マスクを取っていた。


「ヒゲある。白いのが」

「うちマジメに聞いてんだけど!」

「ごめん。……だいじょうぶ。生えてないよ」


 きよこはため息をついた。「はぁ。うちもう死にたい」


 まあ、うん。


 話はだいたい見えた。


 マンガとかではよくあるよね。リアルでは聞いたことないけど。


「きよこ、もしかして」

「ん?」

「生えたのって、ヒゲじゃなくて(≧▽≦)ピー?」

(≧▽≦)ピーっていうな!」

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