第3話 陸上部からの一歩は無駄じゃない

「今日はこれで以上だ。明日忘れ物をするなよ」

『ありがとうございました!』

ついに始まってしまうのか…なんだか緊張してきたな。

「心無く〜んこっちこっち!」

廊下近くの扉に、手を振りながら満面の笑みを浮かべた愛羽さんがいた。

「こんにちは…」

鞄を持った俺はすぐに廊下の近くの扉に向かった。

「よし!行くよ心無君!」

「へぇ?」

俺の手をいきなり掴んだ愛羽さんは、ものすごい勢いで走り出した。


それは手を引っ張って走ったと言うにはあまりにも違いすぎた。力強く、速く、そして大雑把すぎた。それは正に無邪気そのものだった。


愛羽さんに身を委ねていたらいつの間にか、グランドにいた。

「あの…愛羽さん?なんでわざわざ俺のクラスから引っ張って来たんですか?」

「え、なんでって君と一緒に行きたかったからに決まってるでしょ?」

え、眩しい…眩しすぎて目も開けらない!なんていい笑顔なんだ…俺が吸血鬼だったら一瞬で灰とかすほどの眩しさだな。

「よし!準備運動がてら2周いくよ!!」

「2周?2周って言いました?」

「うん言ったけど?」

「ここのグランドの1周あたりさん300mなんですよ!そんなの俺疲れて死んじゃいますよ…」

「行ける行ける根性があれば行けるよ!」

そんなので行けたら世の中苦労しねぇよ…

「まぁとりあえず走ってみます」

「頑張ってね!」

反則だろ、その笑顔…


グランドを2周走ったんだが……

「はぁはぁきもちわりぃ…」やべぇ正直吐きそう…胃が掴まれているのか?くそ痛てぇ。足が限界を迎えそうだ。

「心無君一つ言っていいかな?」

「はひぇ、いいですけど…」

「なんでそんなに遅いの?」

「おっ遅い?」

「うん遅い!どれぐらい遅いかと言うと、雪が降りはじめて、積もるまでの時間ぐらい遅いかな?」

それは結構遅くないか?と言うよりくそ遅せぇじゃねぇか!

「今週の金曜日に1500m走の大会で6分代狙ってるならもっと頑張って!」

「6分台ってなんのことですか?」

「え?工藤先生が言ってたけど?」

「はぁ?」

何を言ってるんだあの先生は…


あの先生の狙いは十分理解している。多分1500mを6分台取らせるために、俺に努力させようとしているのだろう。

「心無君って1500mのタイムなんぼなの?」

「8分です…」

「8分ねぇ〜心無君って本当に面白いね!8分台が6分台を狙うなんて」

「 いや狙ってるわけではないんですけどね、難しいですかね…」

「ふふふ…私を誰だと思っているの、私は陸上部のエースでありキャプテンの愛羽夏海よ!陸上に関しては無敵に近いわ!」

なんて自信に満ち溢れているんだ!とても心強いが果たして愛羽さんは、俺を6分台へ導いてくれるんだろか?

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