10.4
肌をジリジリと焦がす熱に、思わず口の中の砂利を噛みしめた。体の下に散らばっている鋭い石が肉を刺している。全身を覆う危機感と圧迫感に戻ってきたことを実感する。
目が霞んでいてもわかるのは周囲のあちこちから火の手が上がり、さっきまでよりも地獄のような惨状が増しているということだ。その黒炎をいくつも隔てた先に、魔王の姿がある。焔獄魔王はその手につくもの首を掴んで持ち上げていた。彼女はそれに力なく抗っている。でも抗っているのならまだ間に合う。
俺は手のひらを地面に叩きつけた。そのまま大地を引き裂こうとでもするかのように引き寄せ、必死に体を起こしていく。全身が燃えるように痛い。感覚が鉛のように重い。燃え盛る火の手の前では立ち上がろうとすることでさえ困難だ。
俺は勝てるのか。たかが人間があんな恐ろしい魔王に。
いや、勝てるかどうかなんてもう問題じゃない。俺はただひたすらにあいつらの為に諦めないで抗うだけだ。
俺は膝をついた。口の中の砂利を吐き捨てる。そして奴にも潰れかけた声を投げつける。俺はまだここにいると。
「…………チから……なせ……ッ……!」
炎の壁を突き抜けた俺の意志は奴に届いた。その鋭い悪夢のような眼光が周囲を窺う。
「……ァン? 誰かなんか言ったかァ?」
俺は地面に必死に喰らいつき、体を起こす。そうだ、まだ起き上がれる。俺はまだ、戦える。
「聞こえなかったのか……!!」
遂に奴の視線が俺を捉えた。その眼光に真っ向から立ち向かい睨みつける。
俺はもう一度、立ち上がるために手のひらを大地に叩きつけた。
「俺のダチから……手ぇ放せッ……!!」
指輪が嵌っていたその指の先に、血のように燃える深紅の王石を宿らせながら。
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