第10話 決勝戦!!!!開始!!!!

 「…今まで会場まで歩いて行ってたのか

ホテルから結構距離あるぞ」

 あまり顔に感情が出ない為判りにくいがこれは呆れているらしい。

 ウチにすれば、身体をほぐすアップ効果も兼ねて歩いていたんだけど、今回ばかりは

流石にその余力でさえも温存しておきたい相手。そう伝えると「会場からの最寄り駅があるよ。この暑い中、歩いていくより電車で涼も♪」

「そうですわね。乙女に日焼けは天敵ですし。わたくし達も、一緒に行きましょうか」


 そういうワケで電車を利用することに。

改札を抜けると熱気を帯びたプラットフォームが靴裏にジンジンと伝わってくる。

駅構内はそれなりに人がいてるも、

流石に午後とあって車内は空いている。

  

 3人はウチの向かい側の席に座り、流れる景色や、吊り広告などに目をやり、コイツラなりに気を遣ってくれているみたいだ。

初夏とあって空調は扇風機でまかなっているらしく各駅で停まる電車なので、停まる度に

熱を孕んだ空気にさらされる。

目を閉じて少しでも試合に臨む精神でいようとすると、蝉が外窓にはりついている。

ミーンミーンミンミン…ミーンミンミンミン

「あ〜ッちくしょう!!うっせえよ」

結局…余力は怒りで消費してしまった。




泰然とした佇まいで神楽は目を瞑っている。内観することで集中力を高めているのだろうか。マントに包み込んだその異形の姿は

鴉のようだ。


「ユー顔が隠れているから判らないけどきっと内心穏やかじゃないだろうねえ」

「元斉様の仇討ちも込まれていますものね。当然ですわ」

「しかし相手に気圧されることはないみたいで安心したよ」



 頭に血が昇っているのが分かる。

この一戦は、あまりに色々な物事が詰め込まれているから尚更。

アツくなるな。師匠の最後の言葉を想い出す。それでも両の拳は堅い。


師匠は、式神を使うと言っていた。

初手合わせの時のカラクリはそれだったのか。だとして、ウチに活路はあるのか


≪さぁ・・・それではいよいよ決勝トーナメント場所を決定する時がやってきました!!!!

それでは振ってもらいましょう。せーのッ≫


 ―賽は投げられた―


≪鈴麗選手、このトーナメント始まって以来まさかの決勝戦でバトルフィールドの権利を

勝ち取りました≫


「やったね♪」「場所取りも大事ですからね」「…フン」

神楽をジッ…と見据えながら

「ヤツのホームで頼む」と一言。

コレには場内が驚きの声をあげる。


≪どうした事でしょうか。前回ではミヒェル選手の奇策でお互いのホームをドッキングした特設フィールドで闘いが行われましたが、今回も同様に鈴麗選手に何らかの策があっての選択なのか!?ともあれ選択権は鈴麗選手にあります。それではジェネ・ジャパンフィールドで用意はいいでしょうか?≫


「ああ」と頷く。

「クックック…わざわざボクのフィールドを選ぶとは。馬鹿なヤツだ後悔しても遅いぞ」




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