第7話 必殺技習得!!

  1週間が過ぎた。

うむ。と師匠が呟く。

「そろそろじゃな」

「そろそろとは?」

「基本的な構えや洞察力は身についてきたからのう。そろそろ弾をもってもええじゃろ」

「弾?弾とは何ですか師匠ー!!」

「おヌシがシャルロット戦で垣間見せた応用じゃよ。次の神楽は陰陽師の末裔らしい。

奇妙な技に対抗するにはコチラも技を持たねばの。今まで闘ってきたライバルも

遠・中距離の名手。

動かされる事には慣れておるじゃろうが

コチラも相手を動かしていかねばの。

そうじゃなあ、必殺技といえば名前も必要じゃろうから…うーん…そうじゃッ!!

名付けて風圧拳!!」

「あ、安直な名前…」

「う、うるさいワイ。名前なんかに時間とってる場合じゃないじゃろ。一分一秒でも惜しいからのホレ。あそこのフェンスにマットを包んで敵に見立てておる。アレに攻撃を当てるんじゃ。ただし」

と、付け加えた条件に唖然とする。

師匠はテープを1メートルほどの間隔で地面に貼り付け

「ココから風圧で殴ってみせい」

「ココからですか!?」

「もちろん。クリアしたら更に飛距離を伸ばしていくからのホッホッホ。ココが試練の時!めげないマン!d(*´ω`🎀)」


…出た。半ば呆れた気持ちで取り組む。

師匠と組み手をする事を思えば幾分か気持ちは楽というもの、だと思っていた―


「ピクリとも動いておらんの、どうやって風を作るか考えて考えて励まねばの」

「そんな事いったって風なんか周りにねえし必死ですよ」

一旦休憩じゃ。と告げ、師匠はお茶を差し出す。

「ま、コレでも飲んでおちつけ。それにしてもお前がクラシックなぞを知っておったとはの。意外じゃったわい」

「父さんや母さんが好きだったんです。

よく母さんがピアノを弾いてくれて

ウチと弟でよく歌ったりしてました。

あの頃は、小鈴が常にウチの側にいて

何かあると、おねえちゃんおねえちゃん

と無理難題なお願いされる事が多かっんです。いつかは、母が不在の時に、ピアノの音を聴きたいと言って…」

「ほう、弾いてやったのか?」

「いえ、ウチは母の奏でる指運びを近くで見てはいましたけど、自分で弾くつもりで見ていたワケではありませんでしたから口笛で我慢してもらっていました。そんなことありましたね」ホント、そんな事があった。すごく大切で幸福な記憶の断片。片時も写真を離さなかったっていうのに忘れた。

「楽しんでくれてたか?」

「はい、とても」


 2人の間に笑みが拡がる。


「コレが歌なら、歌詞を間違えることや、歌詞を思い出さなければなかなか先に進めないですけれど口笛は

音程さえ間違わなければ安心なので自分もすごく楽でしたね」


 師匠は何かを感じ取ったのか

「ちと、話しこみすぎたの。ボチボチ修行再開するか」

「ハイッ!!!!」


 …って、テープの位置が更に遠く設定されてるじゃねーか!!!!ノルマクリアしてもないのに。

 「師匠、話しがちがうではありませんか」

ターゲットとの距離は倍以上ザッと見積もってでも3メートルといった所か。


師匠がラジカセから音楽を流す。

「お前さんが、リラックスできるようクラシックを流してやるわい」

音色に耳を傾けていると肩の力か抜けてきた。自然と口からも…


ハッ。師匠を見やる。得心いったという顔で

ほくそ笑んでいる。


(そうか…コレなら闘えるぞ!!)


その日、姿、形を留めなくなるまで目標物を

両の拳で射抜きつづけた。


 師匠との実践も踏まえ確かな手応えを掴んできた。

強い日差しと、入道雲。もうすっかり季節は夏だ。この炎天下の中の組み手は流石に堪える。風圧拳で、足元のコンクリートが所々、亀裂と隆起で様変わりしている。

「師匠〜休憩しましょう」

キンキンに冷えたジュースをクーラーボックスから取り出す。

「いや〜お前強くなったな〜ホラ!飲めよ!!」

「そりゃワシの台詞じゃわい!!コヤツめ

ま、休憩するしかあるまいて!d(*´ω`🎀)」






 






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