第2話 ~旅立ち~己が異形、解く術(すべ)を求めて

 サリュナは怯えていた。

 目の前のカルハジェルは未だ恐ろしい呻きをあげている。


 その声が響く度に、身体中に広がる違和感。

 そしてサリュナは見てしまった!


 己の体が人ならざるものに変質していく様を!!


 手足や指は歪に曲がり、爪は鋭く

 全身を体毛が覆う


 ――こんな……こんなことって!!


 声にならない叫び。


 と、カルハジェルの呪詛が止まった


 ――いや!こんな姿を見られるのは!!いやあっ!!見ないで!!!


 気づいた時には窓から飛び出していた。

 かなりの高さがあったはずだが、不思議と怖さはなく。


 危なげない着地。


 そして部屋を見上げて愕然とする。

 この高さを飛び降りて平然と着地できる身体能力。

 異形と化したのが見た目だけでない事実をまざまざと突きつけられたのだ。


 月明かりに輝く湖面は……恐ろしくて覗き込めなかった。


 もしそこに映るものを見てしまったら…心が壊れてしまう気がした。


 彼女は考えた。

 何故カルハジェルは突然豹変したのか。

 何故自分はこのような異形になってしまったのか。

 どうしたら元の姿に戻ることが出来るのか。


 答えは出なかったけれど。


 解き明かしてみせる、ことの真相を!

 取り戻してみせる!人間の姿を!


 人間の姿を失った代わりに与えられた、この身体能力ちからと少しの勇気で。


 そう決意した後ろ姿は、森の朝靄に消えた。

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