第7話 ダークマター襲来

紗也佳に遊びに誘われた日の翌日。


さて、現在進行形で花火と登校しているわけだが、なんか最近紗也佳の態度が急に柔らかくなった気がする・・・。

いやね、柔らかくなることは別に全然問題じゃない。

むしろ接しやすくなって話しやすいんだが・・・。なんか怖いよね・・・。

今日の朝だって


「楽しみにしててね!おにぃちゃん!」


とか言ってきたし。いや何を?


「かおるどしたん?なんか暗いよ?いろいろ」

「一言余計だっつの。いや、なんか最近紗也佳が色々変わってきてな・・・」

「ふーん。あっそ。早く行こー」

「って人の話ぐらい少しは聞けよ!!」


2人で昔みたいに歩いていると


「はなびおっはー」

「ナミおは!」


花火の友達かな?

黒い綺麗な髪を揺らしながら、1人の女子が近づいてくる。花火に負けず劣らずなかなか美人・・・。


「っと、はなびが横にいるってことはこの人が例の幼馴染ですな〜?ってよく見れば首席の人ではないですか」

「どーも、首席の人です」

「どーもどーも。私、はなびの親友をやらせて頂いております。南 波と申します。以後お見知り置きを」

「花火の幼馴染をやらせて頂いております。桐谷 薫と申します。以後お見知り置きを」


俺の直感が物語る。

この花火の友達。


絶対面白い人だ!!!


「ちょっと2人だけで話進めんなし」

「いやいや、ただの自己紹介だよ?」

「そうだよ〜、はなび。取って食ったりなんて考えてないから」


取って食うってどこの狩猟民族だよ。

カニバリズムだっけ?それじゃん。


「もう!いいから早く行くし!」

「へいへい」

「ほーい」


3人で仲良く歩いて登校する。

その間はめちゃくちゃどうでもいい、ほのぼのとした会話を弾ませた。







キンコンカンコーン

キンコンカンコーン


4時間目、つまり昼休み直前の授業終了のチャイムがなる。


「おーし。桐谷ー。飯食おーぜ」

「うーい」


そう言って俺を昼ごはんへと誘う男子生徒は隣の席の山田 涼やまだ りょうである。

なんか上から目線で悪いけど彼はなかなかにイケメンである。

しかもサッカー部である。

だがしかし。彼いわく


「お前が俺の横にいるから俺が霞むの!!もぉーー!!俺の青春吹き飛ばすんじゃねぇよ!!」


いや、知らんがな。

責任転嫁も甚だしい。

自分でどうにかせいっ!!


「おーし、飯だ飯ー」

「どんだけ腹減ってんだよ、山田」


俺は苦笑しながら母さん手作り弁当を食べるため、弁当箱を開ける。


いやぁ、まさかこの可能性があったとは。

ここでようやく紗也佳の朝の言葉の意味を理解した。

弁当を開けるとそこには白ご飯の上に桜でんぶで


『LOVE♡かおる』


とかいてあった。


「どうわぁーーーー!?!?」


音速並のスピードで弁当箱を再び閉める。

やべぇよ。

さすがにこれは恥ずかしくて食えねぇよ・・・。


「ん?どうした桐谷?弁当にゴキブリでも入ってたか?」

「お前、食事中になんてこと言うんだ・・・。違う、違うぞ。そんなおぞましいものは入ってない」


ゴキブリほどではないけどこれもなかなかインパクトが・・・。


「桐谷、俺たち親友だろ?隠し事は無しだぜ?」


いや、知り合って2週間も経ってないからな?

親友にしては浅すぎるからなお前。

せいぜい友達だろ。


「っと、スキありーー!」

「あ、ちょっ!お前!」


山田が机の上の愛がこもりにこもった弁当をかっさらう。


「いざ!オープンザプライス!」


値段とかねぇから!

オープンザプライスじゃねぇから!


山田が弁当を開け、その瞬間硬直する。

さながらギリシャ神話の怪物、メデューサに見られ、石化したよう。


「桐谷・・・」

「な、なんだよ」

「俺、この瞬間をもってお前の親友やめるわ」


儚すぎた友情!!!


「いや、違うからな!?違うからな!?ほんとに!」

「くそ!お前に彼女ができて、なぜ俺にはできないのか!今世紀最大の謎だよ!学校の七不思議だよ!」

「お前どんだけ彼女欲しいんだよ!?てか、違うからな!」


2人でギャーギャー騒いでいると、まぁね?

あれよね?

海水の温度も熱すぎたら台風できるよね?

すなわち、俺たちが熱く話しすぎたら台風できちゃうよね?


「ねぇ、かおる。その弁当なに?」

「ひえっ・・・」


その人物。

鬼島 花火から金色のオーラが溢れ出る。

金髪とも相まってさながらスーパー〇イヤ人。

絶対戦闘力53万超えてるだろ。

フ〇ーザとか3秒で消せるだろ。


隣を見れば山田が窓の方を見てヒューヒュー吹けてもない口笛吹いてるし。

お前まじ覚えてろよな!


「ちょっと来て」

「あ、はぁい」


そして俺は花火に連行されるようにして屋上へと連れていかれる。


「ねぇ、その弁当誰が作ったの?」

「え、えーとそれはですね・・・」


「その」

「弁当」

「誰が」

「作った」

「の?」


「の?」と同時に黒くなった瞳をこちらに向けるのはやめてください。

恐すぎて漏れそう。


「紗也佳が作ったんだと思われます、はい」

「そう。じゃあ食べて?」

「へ?い、いまから?」

「そう。早く食べて?」


花火に促され、屋上の床に座り、静かに弁当のハンバーグに箸をつける。

めちゃくちゃ見てくるよぉ。

黒い瞳でハンバーグと俺を凝視してくるよぉ。

食いにくっ!!


パクっ。


「ん。うまい。・・・うまっ!!」


冷めているはずなのにしっかりと味がついてる。

肉汁も温かい時よりかは少ないがそれでもきちんとある。

さっすが紗也佳。

あいつ、料理うまいもんなぁ。

しかし、ここまで上手くなっていたとは。

ツインテール妹侮りがたし!


「ふーん。そっ。じゃね」


そして急に花火が屋上から去っていく。

え?俺、なんかした?

あと、置いてかないで?

そして俺は1人寂しく屋上で弁当を平らげたのであった。






翌日、また昼休みの時間である。


ちなみに昨日の弁当はきちんと紗也佳にお礼をしました。


「う、うん。どういたしまして・・・」


顔を赤らめる紗也佳はめちゃくちゃ可愛かった。

やべぇ。

義理とはいえど妹に見とれてしまった。

変態兄貴じゃねぇか!

こんな女子と一緒に過ごすとか俺の精神力すげぇな!?

と、自分に感心していた変態兄貴であった。




その時。


ドドンドンドドン。

ドドンドンドドン。


そんなBGMが聞こえるがの如く、花火が俺の方に近づいてくる。

今日も変わらず山田はあさっての方向を見ながら出来もしない口笛。


「かおる、ついてきて」

「う、うん。分かった」


そしてまた昨日と同じく、屋上へ連行される。

犯罪者みたいな気持ちになってきた・・・。

きっと連行される時はこういう気持ちなんだろうな・・・。


「これ、食べて」


そう言って花火が渡してきたのは弁当箱であった。

花柄のいかにも女子が使いそうな可愛いやつである。


「これ、花火が作ったの?」

「うん。だから食べて」


大きな期待と少しの不安を胸に積もらせながら弁当箱を開ける。

俺は思っていた。

花火はきっと料理が上手なんだろうと。

でも、現実はそう甘くなかった。


(こ、これは・・・)


弁当箱を開けるとそこは


カオスッッッ!!!


混沌を具現化した世界が広がっていた。


もうぐっちゃんぐっちゃんだった。

なんの料理かも分からない、黒い物体。分からないのでこれは以後ダークマターと命名する。

というかダークマターが量産されていたから命名もクソもない。

ダークマター1、ダークマター2とそんな感じだ。


「こ、これは・・・」

「食べて?」

「はい・・・」


半ば脅迫の形でダークマター1を口元へと運ぶ。

おぞましっ!

逆にどうやったらこれ作れるんだ?

食ったら死ぬかもしれん。

そう思いながら、口へといれる。


見た目で判断してはいけないとはよく言うがこればかりはどうしようもなかった。


(にがっ!いたっ!くさっ!これは!しぬ!)


口の中までもカオスが広がった。

コスモスが見えなかった。

さすがに口が拒否反応を起こしてた。


でも、俺は幼馴染の悲しむ顔を見たくなかった。

だから、俺はひたすらダークマターを浄化させていった。


ダークマター2を食べた時は唇が紫に変わった。

ダークマター3を食べた時は吐き気がした。

ダークマター4を食べた時は頭が痛くなった。

ダークマター5を食べた時は死ぬかと思った。


そして勇者こと桐谷 薫はダークマター軍団を殲滅し終わった。


「わたしの弁当どうだった?」

「う、うん。個性的で良かったと...思われます」

「ほんと!?じゃあもっと頑張るね!明日も作ってくる!」


そ、それだけはほんとに勘弁してください。

命がいくつあっても足りない・・・。

紗也佳の弁当が恋しいよぉ!!!


その日から勇者はダークマターとの戦いに身を投じたのであった・・・。







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読んでくれてありがとうございました!

フォロワー200人突破です!あざます!

新たにヒロインをも1人登場させてみたいなぁ〜

と思っております!出すとしたら少し先です!多分!!

あと、諸事情で投稿が遅れていくと思われます。

申し訳ないです( > < )

これからも応援してくれたらうれしいでっす!












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