第3話 義妹は今日も変わらずツンデレしている
「た、ただいまぁ〜」
ヨロヨロしながら扉を開ける。
ホームルームが終わってすぐ、あの恐ろしい金髪ギャルに殺されかねないので全速力で帰ってきた。
帰ろうとした時、クラスメイトの女子たちから連絡先を教えて欲しいと頼まれたがそれどころではなかったし、なんといってもこの俺は未だにコミュ障が完璧には完治してないのでチーターに追われるガゼルの如く逃げてきた所存!
最近運動していなかったせいかなかなか息が上がってしまった。
「ぜーはぁー、ぜーはぁー」
「あ、兄貴じゃん」
1つ年下の俺の義理の妹、
「あ、あぁー。紗也佳か。おっす」
「なに?キモイんですけど?顔がいいからってこっち見ないで。妊娠する」
視線だけで妊娠するならこの世界にどれほど望まない妊娠をした女性がいるのだろうか。きっとそんな世の中なら男性全員抹殺されてるわな。
そう。なんといってもこの義理の妹は俺に対して態度がきつい。俺を見かけては何かと突っかかってくる。
『ウザイ』『キモイ』『バカ』などエトセトラ・・・。
兄の俺にはそんな妹だが、中学校ではたいそうモテているらしい。なんと、基本毎日1回は告白されてるとか何とか。
脚もスラッとしていて長いし、顔なんてモデルですか?って疑うほどに整っているのだ。でもまぁ、前に飛び出るはずの2つの山はまだそこまで大きくないのだが。
俺はそんな妹に罵られて、別に悲しくなったりは一切していない。
あれよ!変な性癖とかじゃないよ!?
個人的には別に危害とかも加えられてないし、ただの思春期かなぁと思ってたりする。
あれでしょ?思春期の女子って兄とか父親とかと仲悪くなることで有名じゃん?しかも、紗也佳に至っては義理の妹だから思うところもあるのかもしれない。
「あ、今私の部屋に友達来てるから絶対に鉢合わせたりしないでね。会ったらまじぶっころ案件」
道理で玄関に見慣れない靴が2つほどあったのか。
ていうか、どうして1日で2人の女子に殺されかけてるの俺?
不思議なことに紗也佳はやたらと俺を紗也佳の関係者、特に女性の方に会わせようとしない。
昔、紗也佳の友達が遊びに来たから挨拶でもしようと思ったら全力で妨げられた。あの時は阿修羅を連想するほどの恐ろしい顔をしていたもんだ。
「あぁ、分かった。帰ったら教えてくれ」
「は?そんなの自分で考えろし」
そんなご無体な。
はぁ。紗也佳の友達が帰るまで部屋にこもっとこう。アイラブマイルーム。俺のサンクチュアリよ。
部屋にこもって1時間程が経っただろうか。
その間俺はマンガを読んだり、課題をやったり、スマホをいじったりとぐーたらしていた。
マジ、暇時間最高。案外ニートになるのも悪くないかもしれない・・・。
そんなダメ人間直行の考えを浮かばせていたら急にトイレに行きたくなった。もう、なんかすごい勢いで行きたくなった。
さすがにこの歳で漏らすのは恥ずかしい&泣きたくなるので重い腰を上げて、ベットから起き上がる。
「トットットイレーへレッツゴー」
意味不明な歌を歌いながら扉を開ける。
なんだろ、なんか妙にテンション高いな。
しかしこの調子に乗って周りを確認しなかったことが波乱を呼び起こすことになるとは。
ガチャリ。
「でさー、お兄ちゃんがさぁ〜」
・・・・・・・・・
「「あっ」」
「な、なんで出てんの!?おにい...じゃなくて兄貴!!」
「いや!トイレですけど!?」
やっちまったよ。
1番遭遇したくなかったシチュエーションだよ。紗也佳とその友達と鉢合わせしちゃったよ。
「あ!この人が紗也佳のお兄ちゃん?どうもーー!紗也佳の友達の
「こんにちわ。紗也佳ちゃんの友達の
なんかチャラい女子と礼儀正しい女子が挨拶してくる。紗也佳に言われてるけど、ここで無視をしたらさすがに人が悪いってもんだろうな。
「紗也佳の兄の薫です。よろしくね」
人間は最初の印象が大事だと昔、コミュ障を治すために買った本に載っていたから、挨拶にプラス笑顔も追加する。
ちなみにコミュ障を治す本を持っていることが恥ずかしいということに後々気づいた俺は速攻で捨てた。まさか、あれがこんな所で役に立つとは。
おかげで印象悪い兄にはならないだろう。
「「〜〜〜ッ!」」
印象が悪くはならなかったようだが、ただ2人とも急に顔が赤くなった。熱でもあんのかな?病院行った方がいいんじゃない?
「あーー!もう!早く兄貴どっか行って!邪魔なの!」
紗也佳が2人の前に立ち塞がるようにして立つ。洋画に出てくるなんかの守護神みたい。
『ねぇ、紗也佳やばい。惚れちゃったかもしんない』
『はぁ!?何言っての!?そんなの絶対ダメだから!』
なにやら萌っていう女の子とゴニョゴニョ言ってる。楽しそうでなによりだ。紗也佳も楽しい学校生活を送れているんだな。きっと。
「2人ともこれからも紗也佳と仲良くしてやってね。いつでも遊びに来ていいから」
「は、はい!も、もちろん遊びこしゃせてもらいます!!」
萌ちゃんが噛んだ。盛大に噛んだ。
顔が赤くなっていく。
なんだ、最近の女子って可愛い子多いな。
あ、ロリコンとか変態趣味とかじゃないからね?
客観的意見よ、客観的意見。
「な、何言ってんのアンタ!?もう、いいから早くどっか行って!!」
「分かった分かったそんな押すなって。ここ階段あるから危ないぞ」
紗也佳がせめてもの抵抗としてめちゃくちゃ押してくる。おー、昔と比べたら力強くなったなぁ。
「う、うるさい!はやくどっか...あ」
「紗也佳!!」
「紗也佳ちゃん!!」
紗也佳が足を滑らせて上から落ちていく。
やばい!助けないと!!
気づいた時には考えるより体が先に動いていた。
「紗也佳!!!」
紗也佳を空中でキャッチし、俺が紗也佳の下敷きになるように軌道を変える。さながらハリウッドスターのよう。
ドサッッ!!!
「お兄ちゃん!大丈夫!?」
紗也佳がすぐに起きて俺の安全を確認してくる。
紗也佳さんや、焦っているのかお兄ちゃんって呼んでますぞ。
「あ、あぁ。大丈夫。怪我ひとつない」
「よ、よかったぁ〜」
少し涙目になりながら、紗也佳が腰を下ろす。てか、腰が抜けてるのかもしれない。
「俺のことはいいけど、お前は大丈夫か?」
「う、うん。私は大丈夫」
「そうか、良かった。紗也佳が怪我したら俺も悲しいからな」
「〜〜〜ッ!!」
ボフッ!という効果音と同時に紗也佳の頭から湯気が立ち上るように見えた。
え?なに?最近熱でも流行ってるの?みんな病院行こうよ!!
腰が抜けていると思っていた紗也佳が颯爽と立ち上がる。なんだめちゃくちゃ元気じゃんよ。
そして全力疾走で階段を登っていく。
こんな捨て台詞を吐きながら。
「お、覚えてろよなぁーーー!」
いや、それどっかの悪役が言うやつな!!!
その日の夜、紗也佳と会ったら毎回、紗也佳は顔を真っ赤にしてどっかに走っていったんだとさ。
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