第2話 わたしの大事な幼馴染
私、鬼島 花火には小さい頃からいつも一緒の幼馴染がいた。
彼の名前は桐谷 薫。
彼とは幼稚園の頃からずっと一緒だった。いつも元気に走り回っていた私と違って薫は外で遊んだりすることよりも部屋で読書をする方がすきないわゆるインドア男子だった。
それは小学生になっても変わらなかった。
ただ学校という組織の中では明るく、元気な子がいつもトップを走るものだ。薫は友達も出来ず、休み時間も1人でずっと本を読んでいた。
こう言うと最低な女に聞こえるかもしれないけど、私は薫が1人ということをうれしく思っていた。
薫が元気な男の子にイメージチェンジをするときっと薫はモテる。薫は自覚がないだろうが小学生の私でも分かるイケメンだった。
私はそれが嫌だった。
ただそれは顔を隠すほどの長い前髪が邪魔をして、周囲にバレていなかった。
要するに私は幼馴染を独り占めしたかったのだ。そのため放課後に仲のいい女子に遊びに誘われてもそれを断固として拒否し、いつも薫と遊んでいた。
ある雨の日、私と薫は1つの傘で下校していた。そんな時、木の下のダンボールから鳴き声がした。子猫が捨てられていたのだ。
私の母親は猫アレルギー持ちだ。飼えるわけがない。心の中でその猫に謝りながら、そのまま横を通り過ぎようとした時、薫が雨の降る中ダンボールへと走った。
「大丈夫?辛かったね。寒かったね。これからは僕が守るから心配しなくていいよ」
薫が寒そうにする猫を優しく抱きかかえた。猫を見つめるその目は慈愛で満ち溢れていた。
私はその姿に心打たれた。それが私が薫に好意を持っていると自覚したきっかけだ。
それからも薫と一緒に過ごしていた訳だが、私は友達よりも一歩進んだ関係になりたいと思ってしまった。今思うと、どれだけませていたのかと自分が怖くなる。
でも、私は自分から告白なんてしたくなかった。少女漫画のように男子の方から告白して欲しかった。ませ女子に加え、夢見がち乙女属性まで備えていたなんてほんとに自分を呪いたくなる。
でも、一向に告白してくれる気配がない。そして私は遂に耐えられなくなり、行動へと移してしまう。いや、移してしまったのだ。
それは2つ上の従兄弟に彼氏役をやってもらい、薫に危機感を与えるという作戦だった。でも、薫はそれでも悔しそうな表情をせず、しかもあることか祝ってきた。悔しくなった私は彼氏に会わせる約束を取り付け、今度こそ薫を悔しませてやろうと思った。
でも、それは叶わなかった。
気づけば簡単な別れの挨拶を済ませ、薫は引越しをしてしまった。その時、ひどく後悔した。
なんで、私から動かなかったのだろうって。
なんで自分から告白しなかったんだろうって。
だから私はその時決意した。
次会う時こそ、薫に「好き」って伝えてみせる。
薫にふさわしい女になってみせるって。
「いってきまーす」
玄関の扉を開けると女の子が立っていた。彼女の名前は
ちなみに名前の語呂がいいことを彼女はすごく気にしている。
「おっはー!ナミ!」
「おはよう、はなび!」
挨拶を済ませ、入学先の高校、天ノ川学園へと向かう。
私がこの高校に入学できてうれしいと思ったことが3つある。
1つ目は髪の毛を染めることが許されていることだ。私は中学生の頃から訳あって金髪に染めている。先生は成績で黙らせておいた。
2つ目はナミと同じ高校ということだ。まぁ、それは受験の時にわかっていたことだが。
そして最後の3つ目が、この高校にはあの幼馴染も入学する。これはママ情報だ。しかもなんとクラスまで一緒だった。ちなみにこれはクラス番号表情報だ。
「その、薫くん?に会えるといいね、はなび」
「うん。そのために頑張ってきたんだし!」
波は薫のことを知っている。というか教えている。
なんといっても私にいろんなことを教えてくれたのが波だからだ。
【薫惚れさせ大作戦】の最高の参謀といっても過言ではない。
そうこうしていると校舎が見えてくる。
でっかくて立派な校舎だ。
私の戦場の舞台になる場所でもある。
「ってやばいやばい!遅れるよはなび!早く行かないと!!」
「あ、まじじゃん!?いそげーー!」
気づけば入学式のスタート時間に近くなっていた。2人で教室までダッシュした。死ぬほど走った。
初日から浮くなんて嫌だったし。
それに薫を早く見つけたかったし。
教室に着くと、ちょうどみんなが体育館に移動している所だった。波と一緒に荷物を教室にさっさと置いて、私たちも体育館へと向かう。
入学式が始まってすでに1時間ほどが経過していた。
(長すぎっしょ、話・・・)
校長先生やら来賓やらがやたら長い祝辞を上げていく。ちなみに校長の頭は綺麗なバーコードだった。あれにレジのピピッてするやつ当てたら反応すんのかな?【値段判定不能】とか出てきたりして。ウケる。
私の頭皮戦闘力は53万だ!
ブフッ。自分で思ったつまらないことで笑ってしまった。
「それでは新入生代表の挨拶。第1学年首席合格者桐谷 薫さん。お願いします」
やっと来賓たちの祝辞が終わったのだろう。
今度は新入生代表の挨拶ときた。
な、ながすぎっしょ・・・。
その時だった。私の頭に雷が落ちたのは。
!?!?!?!?
今、聞きなれたというかあいつの名前が呼ばれた!?しかも首席合格!?そんなバカな!?
だってあいつは!!
「はい!」
桐谷 薫と呼ばれた爽やかイケメンが壇上に登っていく。
う、うそぉ?あの弱気なモジモジしていた男子があれ?え、うそだ。
私は信じられなかった。
桐谷 薫が祝辞を述べるがそれどころではなかった。
もし、あの人が桐谷 薫。すなわち、かおるだとしたら、昔とあまりに姿が変わりすぎている。
もとから顔は良かったがあそこまで上がるとは思えなかった。RPGで農民がいきなり聖騎士にクラスアップしたようなもんだ。
それから先のことはよく覚えていない。気づけば入学式が終わってみんなが教室に戻っていっていた。
ハッ!!
急に我に戻った。あの人が本当にかおるなのか確かめなければ。一種の使命感に支配された。
ダッシュして彼に追いつく。
よし!捕まえた!
「ね、ねぇ。アンタさ」
彼、桐谷 薫は少し困惑のような表情を浮かべた。よし、これで!!
しかし
「はなびー!いこー!」
波が声をかけてくる。
くっ!いい時だってのに!まぁいい。これから機会はいくらでもある。
今日の放課後にでも聞いてやろう。
「あ、待ってー!ちょ、後でね」
しっかりと後で会いに行くと伝えてから波へと追いつく。
「あ、そういやはなび、幼馴染くん見つけられた?」
「い、いや。うーーん。まだわかんないや」
そして、ホームルームも終わり、待ちに待った放課後!!
さぁ!桐谷 薫よ!
私の前に姿をあらわせぇい!
教室を見渡すがそれらしき人物はいない。
あれ?いない。他クラスにでも行ったのかな?
クラスメイトの女子に聞いてみた。
「あのさ、桐谷 薫くん知らない?」
「あぁー。桐谷くんならホームルーム終わってすごい勢いで帰っていったよ。あれを脱兎のごとくって言うんだねー」
な、なんですとぉーーー!?
会いに行くって伝えてたのに帰った!?
あ!まさかあいつ、私に会うの避けてさっさと帰ったなぁ!?
「ふ、ふざけんなぁーーーーー!!!!」
教室内で叫んだ。叫んでしまった。
「ちょ、はなび!ここ教室だから静かに!」
波の声が聞こえないほど興奮していた。それはもうマグマが噴火するレベル。
あ、あの野郎。
しょうがない、この方法はあまり使いたくなかったんだが、やるしかない。
これは桐谷 薫が悪いのだ。
強行手段に出てもいいだろう。
【薫尋問作戦】の決行は明日にしよう。
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次話、新ヒロイン登場です(*`・ω・*)ゞ
フォローしてくれるとうれしいです((o(。>ω<。)o))
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