第79話「これが、ダンジョンの奥──?(後編)」

「えぇ。広大──……大陸が──いえ、世界が丸々一個入っているくらいかも」

「な?!」

「ふぇ?!」


 グエンとシェイラが驚愕に口を開けると、リズもバツが悪そうに目をそらす。


「ゴメン……。アタシの見通しが甘かったわ。多分だけど、ゲートもコアも、ましてやボスなんてそう簡単に見つからないかも……」


 そういって、唇を噛んだリズが気まずそうにしている。


 だが、いつまでもそうしているわけにもいかず、リズがシェイラに言って光源魔法を用意させると、


「シェイラ。どこでもいいから数発撃ってみてくれる?」

「う、うん」


 素直に頷いたシェイラが魔法を顕現させる。


 ポッ───。


「どこに撃つ?」

「とりあえず、上から下に向かって順繰りに撃ってちょうだい」

「うん」


 シェイラは無詠唱のまま、数発をポン……ポンッ……と、暗闇に打ち込んだ。


 すると、


 パチパチパチとはじける光源魔法がどこまでも飛んでいく。


 空には果てがなく、正面にも……。

「果てがないの……?」

「まるで空だな……」


 そして、下───。


「あッ!」


 パチンッ! と、弾けた光源魔法。


 そこには地面があったらしく、光源を受けた地面が淡く発光していた。

 シェイラの魔法がチカチカと瞬いて、その大きさから距離を測る。


 おいおい……。


「下まで何メートルあるんだよ……」

「しかも、こう暗くっちゃね────あら?」


 リズが難しそうに顔を曇らせていると、地面の光源魔法が命中した箇所が、ポゥ、ポゥー……と、徐々に光を増幅させていく。


「な、なんだ?」

「シェイラ、何かした?!」


 二人の剣幕をみて、シェイラはプルプルと首を振る。


「な、なにも! なにもしてないよ────あ、み、見て!」


 シェイラに言われるまでもないが、地面にぶつかった光源魔法の光を受けて、次々に地面が発光し始める。

 それはまるで、蛍の群れが一斉に動き出したかのように、着弾箇所を中心にブワァァア! と、淡く輝きだし暗闇の空間を淡い光の海に沈めていく。


「す、すごい……」

「キレー……」


 リズとシェイラが柄にもなくポーと見とれている。

 グエンも呆気に取られていたが、女子二人ほど感動はしていなかった。それよりも──。


「リズの言ったように、やはり新型のダンジョンなのか……」


 言ってみれば、大陸型ワールドタイプとでもいうのだろうか?

 それほどに広大で、先が全く見えない。


 光の波も、どこまでもどこまでも続いていく。

 その光景は幻想的であると同時に、終わりにない恐怖すら感じられた。


「え、えぇ。まったく新しいタイプね。なるほど、どーりで世界中で魔王軍が出現するわけだわ」

 ついさきほどまで感動していた顔を引き締めるリズ。


 そして、再び難しい顔。


「この規模、このダンジョン───。アタシなりに立てた、恐らくの仮説・・・・・"だけど、……聞く?」





「おう」

「うん」

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