第78話「これが、ダンジョンというもの(後編)」
…………客??
そう言うが早いか、リズは腰を上げざまにクナイを引き抜き投擲。
「シッ!」
はるか先の暗がりまでカッ飛んでいったかと思うと、
『───ブヒィィイイイイイ!!』
闇の奥から絶叫が、ついで────カッ!! と、光が溢れて闇の奥を照らし出す。
「うぉ?! 閃光の符術を使うなら一言言ってくれよ!」
「目が、目がぁぁー」
一瞬にして視界を焼かれたグエンとシェイラが、目を押さえてバタバタと暴れる
明々と照らしだされたダンジョンの通路。
巨大な通路の奥にはぎっしりと魔物の群れがいた。
「悠長なこと言ってんじゃないわよ。さ、第二波のおでましよ──!」
そういうと、スラリと短刀を引き抜くリズ。
そして、一気に駆け抜けるッ!
「グエンは中央! シェイラは後方を警戒しなさい──メイン通路だけじゃないわ、側面の通路からも迂回してくるわよ! 油断しちゃダメよ」
「おう」
「は、はーい!」
目をこする二人をしり目にリズは駆け抜け、ギラギラと輝く符術付きのクナイを目標として跳躍。
そのまま体を傾けると、壁に足をつけてタタタタタッ! と斜め下に駆け降りるようにしてグエンに道を譲る。
「いけッ、グエン砲!」
「グエン砲じゃねぇッつの!!」
大体、光速は使えねぇっつってんだろ!!
そう愚痴りつつもグエンは走る。
敏捷9999と、音速のままに!
そして、あっという間にリズを追い抜くと、背中に担っていたグングニルとトリアイナを引き抜く!
「まずは──────直撃ぃぃ!!」
バチバチバチバチバチィィイ!
物資の限られるダンジョン内でこいつほど頼りになるものはない。
なにせグングニルは、わずかな魔力を通すだけで最上級クラスの電撃を放てるのだ。
「ぶっとべやぁぁあ!」
───ピシャァァァアアアアアアン!!
眩い光がクナイの刺さった付近に直撃する。
その瞬間、ダンジョン内がすべて───明かりのもとにさらされる。
そこに浮かび上がった光景!
思わずグエンは茫然とする。
「な、なんちゅう数だよ!!」
魔王軍の全力だ! と言わんばかりに、巨大通路を埋め尽くす魔物の群れ!!
群れ! 群れ! 群れ!
オークオークオークに時々ゴブリン!
そして、そいつらの巨大種が!!
『『『グルォォォオオオオオオオオオ!!』』』
一斉に咆哮する!
そこに、ドカーーーン!! とグングニルの電撃が直撃して数十体の魔物が焼け焦がした。
たが、それを食らったというのに、まったく数が減った気がしない。
(どんだけ無茶苦茶な数だよ!)
「はぁっぁああ!」
そこにリズが壁を伝って駆け下りていき、走り抜きざまに数体の首を刎ねる。
だが、集団に飛び込むことなく、
「ちょっと、何よこの数?!」
「俺が知るか!」
リズの符術で浮かび上がった時も大群だと思ったが、まさかこれほどとは──!
電撃魔法を使って全貌を見ていなければ無謀にもこの通路で戦い続けていたかもしれない。
「チッ! ここは退くしかないわね──シェイラ!」
「は、はーい!」
リズがバックステップとバク転を交互に繰り出し後方へと飛び去って行く。
グエンに声をかけないのは────。
「先に行くなよ!」
シュンッ! と、敏捷9999の速度で追いすがるグエンのことを知っているからだろう。
「アンタのほうが早いんだから、わけないでしょ! それよりも、」
「あぁ、……シェイラ。こっちこい!」
ワタワタとしているシェイラをヒョイっと、小脇に抱えたグエンは、メイン通路の脇にある多数の横穴のうちの一つに狙いを定めると走り出す。
「グエン!」
「わかってる!」
トリアイナを背中に戻すと、グングニルを構えて通路に一撃!
『『グギャアアアア』』
バチンッ! と通路が弾けて横道に隠れていたモンスターが黒焦げになる。
やはり側道の中で機会を窺っていたか───。
「いけるぞ!」
「りょーかい!」
グエンがわざと速度を落とすとリズが短刀を構えたまま、低い姿勢で側道の中に飛び込む。
そのまま素早く前後を確認すると───。
「クリアっ!!────けど、敵だらけよ!」
「こっちよりはましだ、ろ! っと」
シェイラの頭が側道の壁に当たらない様に抱え込むと、そのまま体を丸くして飛び込む。
内部はまるでありの巣穴のような円形の通路だった。
「リズ?!」
「こっちよ!」
既に周囲のモンスターを屠ったリズが返り血を拭いながら息をついていた。
次はどうする──────?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます