第78話「これが、ダンジョンというもの(前編)」

 未踏破ダンジョン。


 これはその名の通り、誰も踏破したことのないダンジョンのことだ。

 そして、今グエン達のいるダンジョンは、初めて発見されたダンジョンなわけで、言うまでもなく未踏破だ。


 だが、それ以上にダンジョンにも種類がある。

 まず、大きく分けて「生きているダンジョン」と「死んでいるダンジョン」だ。


 これはその名の通り、ダンジョンが生きているということ。

 もっとも、生きている──といっても、生き物のように呼吸をして、歩き出すわけではない。

 だが、まるで生命活動のように鳴動し、時には形を変え免疫細胞のようにモンスターを徘徊させるので、

 俗称として「生きている」と称される。


 そして、生きているダンジョンというのは、誰もクリアしておらず絶えず変化を続けているダンジョンのことを指す。


 一概に「ダンジョン」とひとくくりにするのは難しいが、

 生きているダンジョンにも種類があり、

 なかには、構造を変化させるダンジョンや、内部の自然環境すら変化させるダンジョンもある。


 さらに、多くの生きているダンジョンに共通しているのが、モンスターの生息数だ。


 一般に「死んでいるダンジョン」とは、冒険者や英雄によってクリアされ、破壊またはダンジョンに住むボスを倒されてしまったダンジョンのことであり、モンスターの生息数は極端に少なくなる。


 それでも、モンスターの数がまったくの「0」になることはほぼないと言われているが、

 死んでいるダンジョンというのは、基本的に比較的難易度が低くなるところが多く、新人の育成やたまにドロップするモンスターやアイテム目当てに、冒険者を派遣するギルドが管理していることが通常だ。


 だが、その範疇にないのが生きているダンジョン。


 つまり、モンスターの数と環境の変化である。

 それは、どこかにあるといわれるダンジョンコアや、ダンジョンの主たるボスが君臨しているためともいわれ、その影響下ではモンスターの数も桁違い。


 なかでも厄介なダンジョンは、捕食型と言われる生きているダンジョンだ。

 こいつは、入ったが最後──特定の条件を達成しないと脱出ができないという冒険者泣かせの厄介なタイプであった。



「つまり、ここは生きているダンジョンで、捕食型の通路タイプってことか?」



 リズの分析に注釈を加えるグエン。

 その答えを聞いて肩をすくめるリズ。

 言葉ほどに危機感はないようだ。


「さぁ、どうかしら。捕食型なのは間違いないけど、内部がただの通路タイプか自然洞窟タイプなのかどうか──」


 わからないわね──と。


 リズのいうタイプの違い。

 それは、ダンジョンの内部環境でタイプわけをされている。


 一般に、

 まるで外界と同じように太陽や川まであるダンジョンはフィールドタイプ。

 迷路のような構造は通路タイプ。

 そして、遺跡や白のような人口物を模したものは屋内タイプ。


 また特殊な例として自然洞窟や廃坑などがダンジョン下したものもある。


 そして、ここはそのどれに当てはまるというのだろうか?

 ちなみに出現するモンスターにはあまり関係がないが、フィールドタイプのほうが大型種が出現することが多い。


「あ、あの……!」

 珍しくシェイラから口を開く。

 小さな手を一生懸命上に伸ばし「はい! はい!」と猛烈アピール。


「だ、ダンジョンは複合型をとることもあるです。ここもまだ入り口付近なので、奥に進まないとわからないです」


 シェイラが久しぶりに饒舌に話しているが、学園で習った知識を披露できることに生き生きとしているようだ。


「あ゛?! んなこと言われなくても知っとるわ!」

 相変わらずシェイラにアタリの強いグエンの頭をぺチンと叩いてリズが先を促す。

「いずれにしても、ここでぼんやりしていると時間も物資も浪費するだけね──先を急ぎましょう」

「叩くなよ……。ったく、そうだなー」


 しかし、闇雲に動いてもいいことはない。


「ならば──」


 グエンはリズまっすぐも見て言う。




「──当面の目標は?」

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