第77話「これが、欠点?!」

 光速スキルが使えねぇ!


 グエンのその言葉を聞いたリズが口をあんぐりとあける。

「う、うっそ……!?」

「嘘じゃねぇ! 使って使えないこともないけどな……」


 使ったが最後、音速ならまだしも、光速のスピードは知覚の範囲を超えている。

 『光速突撃』にしても、世界一周くらいしてようやく元の位置に戻れるほどだ。


 それをダンジョンでつかえばどうなるか──……。


「あ、アンタ……光速使えなきゃ、ただのオッサンじゃん!」

 た、だだのオッサンて……。

「失っ礼な! 音速でも十分だっつのッ!」


 誰がただのオッサンやねん!


「バッカ! ニャロウ・カンソーを思い出してみなさいよ! 音速でも歯が立たなさそうだから『光』になったんでしょ?!」

 決めつけるなよ……。

「いや、ニャロウ・カンソーだって、音速で倒せたかもしれねぇ、今となっちゃわからねぇけどな」


 実際にぶちかましてみなければわからないが、ニャロウ・カンソーのとびぬけたステータスなら確かに音速の攻撃を耐えきった可能性もある。

 いや、それ以上に──。


「もっと深刻なのは……」

「え?」


 くそ、ダンジョンに潜る前から気づけよ俺!


「ここより狭い通路だと俺は戦えない!」

「な?!」


 リズがさらに口を開ける。

 だが、隠していたところで仕方がない。


 ギルドのような建物ならともかく、ダンジョンはまずい。


 『敏捷特化』と『音速』『光速』はダンジョンとの相性が最悪だった。

 とくにこうした通路型の狭いダンジョンはグエンにとっての鬼門と言える。


「く……引き返しましょう!」

 リズの判断は早い。

 偵察としてもひとまず十分だろうと思ったのだろう。


 なにより、グエンが戦えない以上戦力は半分以下に下がる。


 しかし、

「──ちょっと遅かったみたいだな」

「はぁ?」


 リズが「何を言ってるんだこいつ」といった顔をしたとき、


「み、見て! い、入り口が──!?」


 シェイラが泣きそうな顔で叫んだ先を見ると、なんということか────……ダンジョンの入り口が閉ざされている。


「く! ここはクリア前提のダンジョンだったの? いえ、違うわね……。ボスがみてるのね」


 すー……と、視線を走査させるリズ。


 そのどこかにボスの視線を探そうというのだが土台無理だろう。

 だが、これで判明した。


 このダンジョンはやはり未踏破。

 そして、生きているダンジョンだ。


「面倒なことになったわね──」

 ため息をつくリズ。

 シェイラも不安そうだ。




「幸い物資はかなり余裕があるけど……。未踏破ダンジョンだからな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る