第67話「さてと、ケリをつけるぞ」


「何やってんだよ……」おう、ゴラ。



 ──パァン!!



 何かがオークメイジの腕を打つ。


 何か?

 何かだって??


 …………そんなものは決まっている。


「ナ……」


 それ・・を茫然と見るオークメイジ。


 太い腕が何か鋭利なもので切り裂かれ、シェイラごとぼとりと地面に落ちる。

 途端に軽くなった腕をみて、オークメイジが叫ぶ!!




「ナン、ジャコリャーーーーーー!!」




 今頃になって、ブシュウウ!! と、ドス黒い血が溢れたとき、オークメイジはようやく気付いた。


 その少女が、小さな体で庇い背後に守っていたもの──……。


 何やらステータス画面を起動させている、ひとりの庇われていた男にようやく気づいた。

 そして、その男が構えるもう一本の槍にも──。


「ぐ、グングニルに、トリアイナ──……! ま、マサカ、オ前タチがニャロウ・カンソーを?!」


 ──ずん!!


 そう言い切る前に、グエンが一歩大きく踏み出した。


「おうごらぁ……。何やってんだよッって、……聞ーーーぃてんだよッ!!」


 言い切るや否やグエンの姿がぶれて見える。

 シュンッ! と空気を切りながらオークメイジの懐に潜り込むと────「おらぁぁあ」と、奴の身体が音速の拳をつき立てた。


 ドズンっ!!


 その瞬間、オークメイジの腹がボコォォオとへっこみ、逆に背中側がグニョーーーと、膨らむ。


「ブフ──グォォォオ………………ゴォオオッオッオ」




 ぶぅぅぅ……ん。



名 前:グエン・タック

職 業:斥候

称 号:光

(条件:敏捷9999を突破し、さらに速度を求める)


恩 恵:光速を得る。光速は光の速度、まさに光そのもの

(光)アナタは光の速度を越えました。

 ※敏捷ステータス×30800000

 ※光速時の対物理防御無限

 ※光速時は、攻撃力=1/2×筋力×敏捷の2乗


体 力: 757(UP!)

筋 力:  14

防御力:  20

魔 力: 757(UP!)

敏 捷:9999

抵抗力:  12


残ステータスポイント「+0」(DOWN!)


スキル:スロット1「韋駄天」、

    スロット2「飛脚」

    スロット3「健脚」

    スロット4「ド根性」

    スロット5「音速突撃ソニックチャージ

    スロット6「音速衝撃波ソニックブーム」」

    スロット7「光速移動ファストラン

    スロット8「光速突撃ライトニングチャージ

    スロット9「未設定」


「か、カハッ……」


 突き刺さる、音速衝撃波を乗せたグエンのパンチ。

 オークメイジの目がグルんと白目をむきかける。


 そのまま、音速で距離をとると、残心。


「ゴホォォォオオ…………ブヒ」

 ドズゥゥン……と、倒れ伏したオークメイジ。

 口からブクブクと泡を吹いている。


「トドメだ──」


 そして、空いた手にはトリアイナ。

 その穂先には腕を切り落としたときについた鮮血が──。



「ぐ、グエン……」



 脂汗を流すシェイラ。

 しかし、彼女には目もくれず──……。


「コイツは俺の獲物だ……お前のじゃねぇ。俺のだ。俺がどうするか・・・・・・・決める──」


「ブヒッ……ヨセ! が……!」


 ゴキッと、頭に足をかけ──手にしたトリアイナをゆらりと構えると、


「くたばれ、豚野郎」

「ヤメ────」


 ブンッ!! と、音速衝撃波とともに、振るう一撃。

 遅れてパァァン!! と空気の壁が破れて、オークメイジの首が舞う……。


「ブ、ブヒぃぃっ……」


 生首がごろりと転がり、最後の吐息とともにオークメイジが沈む。

 そして、グエンがユラリと体を起こし、シェイラを見た。


 逆光で顔の表情がよく見えない。

 ……光の加減で、やたら片目だけがぎらぎらと────。


「よぉ、シェイラ──」


「グエ…………」


 あぁ、殺されると、シェイラが覚悟した時。


 ──ズドンッッッ!


「ひぃぃぃい!!」


 彼女の股先にズドンと突き刺さるトリアイナ。

 その勢いにシャイラが悲鳴を上げるも、見上げたグエンの顔は意外にも静かな表情だった。


「────……周辺警戒、ご苦労。──魔物の迎撃もな。やればできるじゃねぇか」

 コクコクコク……。

 シェイラは無言で頷く。


「さっきので許したわけじゃねぇ……。だけど、俺だって戦況くらいよめるさ」

 ──だから、

「いくつかある貸しを一つ解消してやる。わかったら、立て────」


 そういってグエンはシェイラに手を差し伸べた。


 激痛で今にも倒れてしまいたいのをシェイラはグッと呑み込み、

 一つ頷くと、無事な方の手をグエンの手を掴む。


 うん……。

「わ、かった──……」


 行く。

 行くよ……。


 行くから!!



 ──今度は逃げないからッッ!!



 ギュッと握りしめたその手。

 大きくて、雑用ばかりしていた逞しい手のひら──…………。


「行くぞ。リズの元まで────」




「うんッ!」

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