第66話「さてと、準備は整ったぜ……!(後編)」

「グングニルッッッッッ! ダトォォォォオオ!!」


 オークメイジの顔が驚愕に歪む!

 そして、シェイラの持つ槍に奴の視線がくぎ付けとなった。


 それを狙っていたシェイラは会心の演技が決まったと口角を上げる。

 万策尽きたと見せかけて────……!


「──食らえッッッ!! 僕の・・雷ぃぃぃいい!!」


 凶悪な電撃を纏ったグングニルが吠えるッ!


 使い方は至極簡単ッ。

 人間なら、誰にでもある微量の魔力を通すだけで、サンダーロード級の魔法が放てる、伝説の槍だ!!


 それが発動する!

 一瞬にして魔力が駆け巡り穂先から迸る!!

 そいつが、バチィィイ!! と電撃を奔らせ、オークメイジを貫いたっ!


「カァ! アガガガガガ…………!」


 バリバリバリと雷がオークメイジに直撃し──……。


「──これで、終わりだぁぁああ!……

      「……と、思ッタカ? 小娘ェ」……──え?」


 え??


 シェイラの言葉に被せたのはオークメイジ。


 そいつが、ニヤリと笑っていやがる……。

 余裕すら感じさせるオークメイジは、手にした杖を地面に差していた────……何のために?!



「……アンナ強力ナ魔法・・・・・・・・を見タ後ダ。何の対策もシテナイト思ッタカ?」


 ──馬鹿メっ!



「そ、それは──」


 …………それはぁぁ!!


 アンチ電撃魔法、

「…………ひ、電撃避け避雷針──?!」



 バチィン!!



 次の瞬間、強力なグングニルの強力な一撃がオークメイジの杖に吸い込まれていく。

 

 バチチチチチチチチ……!


 そして、地面に沿って流れて拡散し…………「くっ!」


「オット!」

「まだまだ──」


 シェイラは慌てて二撃目を放とうとしたが、


「──ソウハサセンっ! ブヒヒンッ」

 

 びゅん!! と風を切る音がしたかと思うと、


 ──ガッ!!


「ひッ?!」

 巨体から想像もつかぬ俊敏さでオークメイジが肉薄し、一瞬にしてシェイラの腕をつかみ上げる。


 そして、


「声が出セテ、体が無事ナラソレデイイ──」

「や、やめ──」


 パキッ────…………。




「かっ──────…………ぁぁあああああああッッ!」





 シェイラが、口を限界まで上げて悲鳴を上げる。

 いや、それは悲鳴になっていない。


 バキバキッ! と、乾いた枝を折るような音ともに、彼女の口からは声なき声が……。


「あっぐ……」


 わななきつつシェイラが腕を見れば、グングニルを掴んだそれが、あり得ない方向に。

 そして、恐る恐る傷口を見て──……。


 突き破った皮膚から何か白いものが────……。

「いやッ!」


 小さく悲鳴を漏らせばもう終わりだ。

 今さらながら激痛が──!


 痛い……。

 痛い……!!


 いた────……。



「いやああああああああああああああああああああ!!」



 次に瞬間、全身を貫く激痛にシェイラは叫んだ。

 ブワリと噴き出す脂汗ッ!


 涙がとめどく溢れ、止まらない!!


 だが、

「安心シロ──」


 そういうが早いか、シェイラの細い足に手をかけるオークメイジ。


 や、

「やめ────……」


「担イデイッテヤル──」


 そういうが早いか、シェイラの細い足に手をかけるオークメイジ。


 だから、

「……四肢は捥イデイクゾ」

「ひぃっ!」


 ムンズと、太い腕が容赦なくシェイラの細い足を掴むと、


 や、

「やめ────……」


 パッ……………………………。


 ミリリリと、シェイラの肌をオークメイジが突き破らんとしたその時──。



「おう、待てや、ごら。──テメェ、俺の獲物・・・・に何やってんだよ……」

「ナニっ?!」


 オークメイジの死角。

 シェイラの影になって見えていなかったのか、そこには片膝をついてステータスを操作していたグエンがいた。


 そして、

 ユラリと立ち上がると、


「キ、貴様イツカラソコニ──?!」



「────何やってんだっつてんだよ、ゴラぁぁぁあっ」



 ステータス画面を中空に浮かせた男がのっそりと立ち上がる。


 ぶぅぅ……ん。



「グエンッッ!!」

 感極まったシェイラが叫ぶ。

 だが、グエンはさらりと無視しつつ、

「こっちは、とっくに終わったっつの──……!!」



 ズンッ……!!



 体力233⇒757

 魔力236⇒757



 そいつグエンは、ステータス画面をゆっくりとしまう。


 そして、ユラリと起き上がった男──グエン・タックは!!

 周囲を見回し、そして、うっすらとシェイラたちを睨む──……。



「ぐ……」

 グエン────?


「グ──」

 シェイラの言葉が終わらないうちに……。


「何べんも言わせんじゃねぇッ!」


 そして、

 今こそ、ゆら~りと構えて見せると、ゆっくりと腰を落とし、拳を溜め込む──。



「なにをやってんだぁぁぁあああッッ!」


 グエンの咆哮ッ!

 その次の瞬間ッ。


 ──パァァン!!


 と、





 音を超えた衝撃波がオークメイジの腕を打った。

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