第66話「さてと、準備は整ったぜ……!(前編)」

 ────サンダーロード特上級電撃魔法!!




 バチチチチチチチチチチ─────………!!



「行けッ! 僕の雷!!」

 中空に浮かんだ魔法陣が放電するッ!!


 そして、幾条もの雷を生み出すと魔物の群れに突き刺さった!!



 ピシャーーーーーーーーーーーーーン!!



「「「「「ゴァァアアアアアアアア!!」」」」」


 鼻先で炸裂した電撃魔法に、何十という魔物が焼き焦がされていく。

 しかし、シェイラはまだ魔力を緩めない。


 一撃発動のそれを継続し、魔法の波として薙ぎ払うッッ!



「唸れッ!! いかづちッッ!」


 すぅ────……。



「──薙ぎ払えッッッッッ!」



「「「「「──ろォォォオオオオアアアアア!!」」」」」


 ズドォォォォォオン!!



 ぶしゅぅぅ…………!


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 大爆発が起きて、街道上の魔物の群れをシェイラが焼き尽くした。

 濛々と発生する爆炎。


 さすがにリズを巻き込むほどの威力ではなかったとはいえ、目前に迫っていた魔物はすべて消し炭にするほどの魔法だ。


「こ、これで──全部……?」


 そこでシェイラも力尽きる。

 ガクリと膝をつき、肩で息を……。


 やった。

(──やったよ、グエン!!)


「はぁ、はぁ、やっ──…………なっ?!」



 うぎぎぎぎぎぎぎぎ……!



 しかし、その爆炎のベールを突き破る様に、魔物の群れがさらに──……さらに!!


「「「「ガァァァァァォォォオオオオオオオオ!!」」」」


「──ち、畜生ッッぅ!!」


 可愛らしい声で罵るシェイラ。

 慌てて術式を組み上げると、先ほどよりも短時間で魔法を構成ッ。



「さ、サンダーロード!!」



 バシャーーーーーーーーン!!



 強力な雷が魔物の群れに突き刺さり爆炎を抜けたオークやゴブリンを吹き飛ばす。

 だが、それだけだ。


 一撃は強力だが、持続時間は極めて過少!

 幾匹の魔物を焼き滅ぼしたとて……。


 ズンズンズンズンズン!!


「そ、そんな!!」


 魔物の群れはすべてを飲み込まんとして、突き進む。


「くぅ……。だ、ダメ!」


 ぐ、グエンに……。グエンに言われたんだもんッ。



「『お前も迎撃しろッ!』……って。『いい加減根性見せろッッ』て!」



 言われたんだもん!

 言われたんだもんッッ!!


「──言われたんだもんッ!!!」


 だから!!


「だから────」


 もう、

「──僕は、逃げないッッッ!」


 気休めと知りつつも、シェイラはマナポーションを煽り喉元を濡らす。


「ぷはッ!…………来いッ!」


 カランッ……。


 ポーションの殻を投げ捨て、素早く魔法術式をくみ上げるシェイラ。 

 その動きは迅速で、淀みないッ!


「はぁぁぁぁあ…………!!」


 ──パリパリ……パリリッ!


 シェイラは最も素早く構成できる魔法──サンダーボルトを立て続けに爆炎の向こうに解き放つべく、魔力練り上げる。


 範囲魔法は無理でも、「連射ならできるッ」と!


 すぅ……。

「サンダーーーーーーーーボルト!!」


 ズババッババ! と青白い光を放った魔法が次々に魔物を焼き尽くしていく。


 しかし、

「──小癪ナッ!」


 ずんっッ!!


 その時、爆炎のベールを突き破って巨大な影が!

 小汚い人の皮で編んだローブを纏ったオーク。


 そいつが!


 バシンバシンッ! バリィィィン!!


「な、なにコイツ!! 僕の魔法をッ?!」


 何者かが戦場に闖入し、シェイラの魔法を弾く。


 ──パシン、パリン!


 いや、霧散させた!!

「そんな……?!」

 慌てたシェイラが何発ものサンダーボルトを打ち込むがことごとくを弾かれる。

 よく見れば巨大なオークの前にうっすらと魔法の膜が……。


 こ、これはッ!

 高等魔法の──……。

「──マジックキャンセラー?! うそ……魔物が──きゃあ!!」


 ドドドドン!! と、シェイラの前に、多数の魔法の弾が着弾。

 威力の弱い「魔法弾ルーンバレット」であったが密度が桁違いだ。


「フン……。光の魔法を使ッテイルトコロヲミルニ、サッキの大魔法・・・はオ前カ」

 小手調べと言わんばかりの魔力弾。

 オークメイジはシェイラの魔法に目を付けたらしい。


「……そ、そうだよ! 僕の魔法だ!」


 その言葉に、オークメイジがギロリと恐ろしい視線を向ける。


「小娘がァァッァア! ヨクモ我ガ精鋭を道ゴト焼キ潰シテクレタナ! 貴重なドラゴンマデモォォオ」


「え? ど、ドラ────……?」


 「あ、コイツ勘違いしてる……」と、シェイラは気づいた。

 電撃魔法を放ったのは確かにシェイラだが、魔物を群れごと一掃したのはグエンだ。


 ──だが、魔物に電撃魔法も『光速突撃』も区別などつかなかったのだろう。


 そして、


「殺シテヤリタイ所ダガ、我ガ王が貴様を所望ダ! 生カシテ連レ帰ルゾ。ソノ後・・・のコトハ知ランガナァァアア。グハハハハハハ」


 凶悪に笑うオーク。

「ひっ……!」

 シェイラとて、オークの凶暴性は知っている。

 だから、一瞬足がすくみそうになる──。


 誘拐された婦女子がどんな目に合うかを思えば──……。

「……で、」

 オークメイジの纏う人皮にあきらかに女性のそれも混じっていることにも気づき──。

 剥がされた面影が悲鳴を上げているようにも──……。


「できるものなら────やってみなよッ!」


 はぁぁぁぁぁぁああ!!


 パリパリパリリリリリ──……と、サンダーボルトを連続発射!


 もちろん効かない。


「無駄ダ、無駄ダ! 非力ナ人間の魔法ナド、効クモノカッ!」

「でしょうね────……」


 そして、効かないことは百も承知!

 だけど、


「……これなら・・・・どうかな?」


 そういって、シェイラが構えたもの──……。

 人間の魔法が利かないなら、


 人間以外の魔力を頼ればいい!!


 そう。

 これは────!!


「──非力な人間じゃないよ? これは神様からの贈りものぉぉぉぉおお!」


 グエンが持っていたレアリティSクラスの槍!!

 それを勝手に拝借ぅぅうう!!


「……ソ、ソレハ!!」


 ぐ、


 グングニルッッッッッ!

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